SonarSound Tokyo: The Japanese acts

日本人ビートメーカーがエレクトロニカのフェスで勝負に挑む

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SonarSound Tokyo: The Japanese acts

今週末に新木場・Studio Coastでの開催が迫ったSonarSound Tokyo。海外のアクトも楽しみだが、タイムアウト東京は現在特に注目が集まる日本人プロデューサー、ビートメーカー5人に話を聞いた。



Sauce81

(2008年度レッドブル・ミュージック・アカデミー参加者)



―音楽的なバックグラウンドを教えて下さい。ロックのバンドをやられていたとか…?

Nobuyuki Suzuki:幼少時代をアメリカで過ごしたので英語は自然と身に付けました。そのせいもあって、アメリカとかイギリスの音楽(主に英詩の)を聴き始めたんです。それで12歳の頃日本に戻ってきて、ギターを手に入れてオルタナ/パンクのバンドを始めました。それと並行してファンク、ソウル、スカ/レゲエ、アシッドジャズも聴き込んでいたので、The ClashとかRage Against The Machineとかコーネリアスを掛け合わせたようなバンドをやりたかったんですよね。18歳の時に大学進学のため千葉に引っ越したんですけど、その頃からヒップホップ、ジャズ、エレクトロニカ、エクスペリメンタルとかワールドミュージックを聴くようになって、機材を使ってビートを作り始めたんです。大学を卒業して数年後にゴスペルのコーラスグループに参加したのですが、そこで音楽のルーツを深く掘り下げる事が出来ましたね。

―初めて深く共感した音楽は何だったか覚えていらっしゃいますか?

Nobuyuki Suzuki:初めて夢中になった音楽はやっぱり音楽チャートに入ってるような日本のポップミュージックでした。でも、むしろその中のシンセとかサンプラーとかシーケンサーに興味があったんだと思います。ギターを始めたての頃は60,70年代のロックに入れ込んでたんですけど、クリーム(エリック・クラプトン)とかレッドツェッペリン(ジミー・ページ)のギターリフに魅了されてましたね。

―レッドブル・ミュージック・アカデミーに参加されてから数年が経ちましたが、もし参加されていなかったら今何をされていると思いますか?

Nobuyuki Suzuki:音楽すらやっていないと思います。もしやっていたとしても大した事やってないでしょうし、今のようなモチベーションはないと思いますね。

―もし誰かに今お持ちのトラックの中から一曲だけ聴かせるとしたらどれを選ばれますか?そしてその理由は?

Nobuyuki Suzuki:パソコンの中に入ってる最新のものを選びますね。新しいトラックを作る時は常に新しい事に挑戦するよう心がけているんです。それが今現在の自分ですからね。もう少し手近なものだったら、2010年にリリースしたコンピ、Cosmopolyphonicに入ってる'Spaceshi*t!'か、最近手がけたニュージーランドのJulien Dyneのリミックスでしょうね。

―Cosmopolyphonic Radioを始められたきっかけは?

Nobuyuki Suzuki:MySpaceとレッドブル・ミュージック・アカデミーですね。MySpaceで色々なプロデューサーと繋がってかなり影響を受けました。レッドブル・ミュージック・アカデミーでもいい仲間がたくさんできました。初心者にもフレンドリーなネットラジオやポッドキャストからも刺激を受けました。英語ベースのソーシャルメディアを使いこなしてる日本人のプロデューサーはそんなにいないので、じゃあ英語で日本人のプロデューサーを海外に紹介して、日本語で海外のプロデューサーを日本に紹介できるプラットフォームがあったらいいなと思って始めたんです。

―シーン内でかなり人望が厚いと聞きました。それについていかがですか?

Nobuyuki Suzuki:まず第一に、音楽とは気持ちをシェアし合う事だと思うんです。だから、ポッドキャストとかパーティーなんかでこれからのプロデューサーのつくったものをシェアする事で何か彼らの手助けをして、それと同時に新しいリスナーを増やせたらって願っているんです。アーティストやミュージシャンやプロデューサーはリスナーとファンがいて初めて成功するんです。でも、そこに辿り着くにはやっぱりまずは人の興味を惹かなければいけないんですよね。2009年に僕がCosmopolyphonicを始めたとき、日本ではネットから派生した新しい音楽に対しての認識がまだ浅かったので、まずはそこから着手しなければいけなかったんです。言ってみればプロモーションのようなものですけど、僕にとってみればサポートだし、新しい土壌を作る感覚でした。まさにKRS-Oneも言っていた'Edutainment'(Education + Entertainment)ですね。それはいいとして…そうですね、僕自身も僕がサポートしてきた人たちと同じ位成功したいですね、むしろもっと成功したいです。だからと言ってただ単に有名になりたい訳ではないんです。ただ自分の名前が世に知られるようになれば、自分の発する言葉が遠くまで行き届くから、結果的に自分の信じている音楽をサポートする事になるんです。

―日本人のアーティストが海外で成功するにあたっての壁は何だと思います?やはり言葉の壁なのでしょうか?

Nobuyuki Suzuki:そうですね、言葉の壁はかなり大きいと思います。他国間の距離も。言葉の壁は精神的にも日本と海外との距離を広げますね。外国人の少ない島国で育つとやっぱり他の文化と触れ合う機会がないですよね。だから外国人との交流に対してとても消極的だし、言葉に自信がないから話しかけるのが恥ずかしいって言うのもあると思うんですよ。英語が話せなかったとしても日本人のアーティストはその壁を越えて外に出て行くべきだと思うんです。特に最近では英語さえ出来れば、ネットの力を利用して簡単に海外との繋がりが持てるし、日本のサイトで得るよりももっと多くの情報が手に入るじゃないですか。

―現在の東京のシーンにおいていいところとはなんでしょう?

Nobuyuki Suzuki:やっと時代に追いついてきた事じゃないですかね。2009年以前はライブとか、フェスとか雑誌で見るラインナップって5〜10年位ほとんど変わらなかったと思うんです。あとは音楽サイトをみんな見るようになったことですかね。

―では反対に東京のシーンにおいてダメなところはなんでしょう?

Nobuyuki Suzuki:みんななかなか外に出たがらないんですよね。理由はそれぞれあるとは思うんですけど…例えば入場料とかチケットが高かったり、YouTubeで動画を観るだけで満足してしまうとか、仕事で疲れてそれどころじゃなかったりとか。あとは、結構みんな保守的なんですよね。もう一つ、最近かなり深刻なのが大阪とか他の地域でもですけど、風営法の施行によってクラブに対するガサ入れとか取り締まりがかなり厳しくなっている事。本当にバカらしいと思います。日本では夜中以降踊っちゃいけないってこと、海外に伝わってますかね?時代錯誤もいいところですよ。

―今年のSonarSoundで要チェックなのは?

Nobuyuki Suzuki:もうJesse Boykins IIIに限りますね。日曜のSonarDomeで僕のセットのすぐ後にやるんです。多分ほとんどSonarDome漬けでしょうね。あとは大阪のSeiho、札幌のJealousguy、あとはもちろんレッドブル・ミュージック・アカデミーファミリーのDorian ConceptとAfrica Hitechをチェックしたいですね。


4月21日(土)、22日(日)に開催されるSonarSound Tokyo2012の詳しい情報はこちら

soundcloud.com/sauce81 | cosmopolyphonic.com
Twitter: @sauce81



インタビュー ジェイムズ・ハッドフィールド
編集・翻訳 さいとうしょうこ
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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