2012年10月19日 (金) 掲載
60年前の映画なのにまったく色褪せることもない人間の有り様が克明に表現されています。主人公が夜のブランコに一人揺られている場面では普遍的な人間の感情が描かれていて、何度も見直したくなります。
自身の作品ではありますが、大きなスクリーンで見れば見るほど魅力が増す映画です。風が渡ってゆく描写や雨の降り始めのにおい、多くは語らない登場人物の繊細な感情が スケール感のある自然の風景の中に溶け込んでいます。
実際にあった事件をモチーフに限られた時間と空間を見事に描ききった作品です。狂気ともいえる主人公の心の移り変わりをきちんと描くことで、観る者に主人公への感情移入が始まります。
鬱屈した青春時代の若者が犯していく罪がリアルに描かれていて、見終わってからの余韻が長く続く映画です。本当の罪は限られた犯人に限らず、「社会」という得体の知れない魔物によって、犯されていく居心地の悪さが残ります。
子供から大人まで楽しめる日本のアニメの代表作。大人はこども時代に感じていて既に忘れてしまっている感覚を呼び起こされ、懐かしさで心がいっぱいになります。そして、色あせないその時代の純真さを共有する事ができます。
河瀨直美
映画作家。1997年、初の劇映画『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞。その後、2007年に『殯の森』で同映画祭にてグランプリを受賞。また、2009年にはカンヌ国際映画祭に貢献した監督に贈られる「黄金の馬車賞」を日本人として初受賞している。現在は、地元奈良で開催される「なら国際映画祭」のエグゼクティブディレクターを務め、愛する奈良の街から文化と芸術を発信している。最新の情報としては、2012年9月に最新作の『朱花の月』がモロッコで開催されていた『サレ国際女性映画祭』のコンペティション部門にて最優秀グランプリを受賞した。最新作『朱花の月』DVDが11月2日よりレンタル開始。
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