2014年10月23日 (木) 掲載
『サブマリン』でデビューを果たしたリチャード・アイオアディ監督による、ロシアの文豪ドストエフスキーの『分身(二重人格)』の映画化。ソビエト崩壊時代の病院を思わせる、レトロだが未来的な官僚機関で働いているサイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)の前に、自分と瓜二つのジェームズ(同じくアイゼンバーグ) が現れる。気は優しいが、要領の悪いサイモンとは真逆のジェームズの登場により、サイモンは自分の人生、存在を奪い去られていきそうになるのだが……。
テリー・ギリアム監督の映画『未来世紀ブラジル』では、フランツ・カフカ、ジョージ・オーウェル、オーソン・ウェルズやデビッド・リンチさえ列挙できるほど、彼らの作品のオマージュを行なっていた。アイオアディも多くの監督や脚本家を尊敬しているため、今作もインスパイアを受けた部分を感じられ、こういった要素は作品をより魅力的なものにしている。また、注目すべきは、登場人物の孤独、疎外感、内的危機状態に関して大きく切り込んでいるということだ。 アイオアディは、物事の明暗を巧みに演出し、脆さや絶望をいきいきとした雰囲気で作り出すことに成功している。そして、この演出がアイゼンバーグや一流の脇役たち (ジェームズ・フォックス、サリー・ホーキンス、パディ・コンシダインなど) の、想像力に富んだ洗練された演技を引き出しているのだ。
11月8日(土)より、シネマライズほか全国公開 監督・脚本:リチャード・アイオアディ 共同脚本:アヴィ・コリン『ミスター・ロンリー』 製作総指揮:マイケル・ケイン 原作:フョードル・ドストエフスキー 出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、ノア・テイラー、ヤスミン・ペイジほか 配給・宣伝: エスパース・サロウ © Channel Four Television Corporation, The British Film Institute, Alcove Double Limited 2013
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