映画『EDEN/エデン』レビュー

90年代のフレンチハウスシーンの内情とダフトパンクの誕生を観る

©2014 CG CINEMA – FRANCE 2 CINEMA – BLUE FILM PROD – YUNDAL
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『EDEN/エデン』タイムアウトレビュー

ダンスミュージックを映画にして残すのはなぜ困難なのだろうか。ダンスミュージック自体は最大の恩恵を受けている一方で、映画サイト『IMDb』にはスマートフォンでとりあえず情報を調べる人たちが溢れている。ミア・ハンセン=ラヴ監督が手がけた本作『EDEN/エデン』は、ダンスミュージックへとつながる足掛かりを確実に掴んでいるが、この作品は監督の兄であり、共同脚本を手がけたスヴェン・ハンセン=ラヴ(彼のDJとしてのキャリアに、本作は大まかに基づいている)と、このインディー映画に3,000ドルで音楽を提供したダフト・パンクというアンドロイドの利他主義によってもたらされている。

本作は、90年代の「フレンチ タッチ」シーンを総括することも、あるいは、「取り巻きを作る」という幻想を実現した天才DJについて描くことも意図しないことで、過去に多数の作品が失敗してきた分野において成功を収めている。その代わりに、興行主気取りの小物DJであるポール(フェリックス・ド・ジヴリ)が人情味溢れるキャラクターとして描かれており、彼の周りには実在するアーティストたちが集まっている。究極的に言えば、本作はセクシーでありながら事実に沿ったフィクションによって装飾された、持続的な性格描写だ。1人の男の物語を長焦点レンズで撮影したスナップ写真によって構成される、急成長したムーブメントを描いた大型の壁画なのだ。

サウンドトラックに楽曲提供しているダフト・パンクによる高揚感ある音楽が、この作品を生き生きと輝かせている(特にVeridis Quoが効果的に使用されている)。ミア・ハンセン=ラヴ監督は、ポールが自分のライフスタイルに対して不変の姿勢を崩さずに生きていく姿を賢明に描いている。自分の最大の敵は自分であるような、パーティー三昧を続ける愚か者にすることなく、日常について詩を書くことに集中する生活を選択させているのだ。彼は、女性、ドラッグ、都会、仕事のミーティングを経験したが、それぞれの出来事は誰にとっても同様に大きな可能性を秘めているものだ。ドニ・ルノワールによる儚いカメラワークが、一瞬一瞬や新しい登場人物を刹那的に映し出しており、今作の雰囲気を一層演出している。あるシーンでポールが自分の音楽について「強い高揚感と深い憂鬱の間にある」と表現していたが、それは映画『EDEN/エデン』自体について表現するための適切な描写でもあるだろう。

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『EDEN/エデン』

2015年9月5日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督・脚本:ミア・ハンセン=ラヴ
共同脚本:スヴェン・ハンセン=ラヴ
撮影:ドニ・ルノワール
製作:シャルル・ジリベール
出演:フェリックス・ド・ジヴリ、ポーリーヌ・エチエンヌ、ヴァンサン・マケーニュほか
©2014 CG CINEMA – FRANCE 2 CINEMA – BLUE FILM PROD – YUNDAL

『EDEN/エデン』公式サイトはこちら

翻訳 小山瑠美
原文 Christopher Tarantino
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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