映画『ワイルド・スタイル』レビュー

NYブロンクスの80年代ヒップホップシーンを覗く

(C)New York Beat Films LLC
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『ワイルド・スタイル』タイムアウトレビュー

ペリー・ヘンゼル監督の映画『ハーダー・ゼイ・カム』のように、今作『ワイルド・スタイル』は、インディー映画の持つ表面的な特徴を備えている。堅い演技、ぞんざいなカメラワーク、荒いサウンドなどの要素が、映画の芯に秘められた薄汚れた魅力を良い意味で覆い隠している。実際のストリートアーティスト「ブロンクスのバンクシー」こと、リー・キュノネス演じる、ゾロが抱える社会問題にまつわる物語を軸に、カメラは彼を追ってサウスブロンクス中を駆けまわり、地元のカラーにどっぷりと染まる。巨大ブームボックスから流れるコールド・クラッシュ・ブラザーズと、ブレイクダンス用のダンボールのウェッジさえあれば楽しめたその時代の空気感をとらえ、バスケットコートでの乱闘からヒップホップストリートシアター、深夜の車庫への侵入、大規模なライブシーンというクライマックスへと場面を切り替えていく。1980年代前半のノスタルジーと社会人類学の要素をミックスすることで、本作は初期のニューヨークヒップホップシーンに満ちていたオプティミズムと活気を成功裏にとらえ、映画やTVに映し出される、殺伐として荒れ果てた悪の巣窟といったブロンクスのイメージが、大幅に間違ったものであることを示唆している。

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『ワイルド・スタイル』

2015年3月1日(金)渋谷シネマライズほか、全国順次公開
監督、製作、脚本:チャーリー・エーハン 
音楽:ファブ・ファイブ・フレディ(フレッド・ブラズウェイト)、クリス・スタイン
撮影:クライブ・デヴィッドソン
出演:リー・ジョージ・キュノネス、ファブ・ファイブ・フレディ(フレッド・ブラズウェイト)、サンドラ・ピンク・ファーバラ、パティ・アスター、グランドマスター・フラッシュ、ビジー・ビー、コールド・クラッシュ・ブラザーズ、ラメルジー、ロック・ステディ・クルーほか
提供:パルコ
配給:アップリンク
(C)New York Beat Films LLC

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テキスト デイヴィッド・ジェンキンス
翻訳 平塚 真里
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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