映画『あの日のように抱きしめて』レビュー

夫婦の愛をサスペンスフルに描いた衝撃作。

Ⓒ SCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014
Ⓒ SCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014
Ⓒ SCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014

『あの日のように抱きしめて』タイムアウトレビュー

映画『あの日のように抱きしめて』は、第2次世界大戦下で展開される風変わりな心理劇だが、見逃せない秀逸な作品だ。ケイト・ウィンスレット(ハリウッドでのリメイクへの起用に最適だろう)に対するドイツからの非常に優れた回答とも言え、ニーナ・ホスの演技が観客を引き付ける。彼女は、終戦間際の強制収容所からナチスに銃撃された顔をミイラのように包帯で巻きながら生還するユダヤ人のネリーを演じている。

ネリーは大規模な顔の再建手術を受け、ベルリンに戻る。家族は非業の死を遂げていたが、夫のジョニー(ロナルト・ツェアフェルトが、信用できない雰囲気の影がある男を演じている)だけは生存していた。彼は変貌したネリーに気付かないが、「亡くなった」妻に似ていると気付き、妻になりすまして遺産を山分けする計画を持ち掛ける。

「ジョニーが自分をナチスに売り渡したのではないか」という疑念を抱きながら、自分の筆跡を改めて学び、友人たちの顔を写真で覚える。なぜ彼女はこの計画に従ったのだろうか。気分が悪くなるが、彼女は夫をまだ愛していたのかもしれない。これらのストーリーは、無理に関係付けられたように響くかもしれないが、成立していることはもちろん、フィルムノワールのように複雑な感情を描き出すサスペンス映画を生み出すことに成功している。足を引きずりながら歩行し、死にゆく女性が行進するときの恐怖に怯える表情を湛えるネリーを演じたニーナ・ホスの演技は驚くほどに素晴らしい。

原文へ


『あの日のように抱きしめて』

2015年8月15日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国公開
監督・脚本:クリスティアン・ペッツォルト
出演:ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト、ニーナ・クンツェンドルフほか
協力:東京ドイツ文化センター
配給:アルバトロス・フィルム
Ⓒ SCHRAMM FILM / BR / WDR / ARTE 2014

『あの日のように抱きしめて』公式サイトはこちら

原文 カッス・クラーク
翻訳 小山瑠美
※掲載されている情報は公開当時のものです。

この記事へのつぶやき

コメント

Copyright © 2014 Time Out Tokyo