2015年07月02日 (木) 掲載
ジョス・ウェドン監督によるシリーズ第1作『アベンジャーズ』では、異質の要素を集結させることで、マーベル映画の第1段階に大々的なフィナーレをもたらした作品だ。今回の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、観客を引き付けながらも、決して革新的とは言えない物語が描かれており、2018年公開予定になっている2部構成の大作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に向けての基盤が築かれている。
本作では、不思議な石、神格化された褐色肌の人物、超能力による会話など、マクガフィンが多用されているかもしれないが、核となるのは、傲慢な望みとテクノロジーが暴走を招くというシンプルで使い古された筋書きなのである。トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)とブルース・バナー(マーク・ラファロ)が、結果を考慮せずに、世界初の完璧な人工知能の合同開発を進める。そして、ウルトロン(声の出演はジェームズ・スペイダー)が、人類を地球から抹消する計画を目論むロボットの軍隊を結成し、気高いアベンジャーズと対決するまでに、当然ながら長い時間は要さなかった。
ジョス・ウェドン監督が最初のシーンで、過度に物事を切り取り、詰め込んでいる印象を受ける。次々と爆発を伴うアクションシーンが連続し、アイデアが未完成、かつキャラクターのモチベーションが曖昧なままなのである。クイックシルバー(アーロン・テイラー=ジョンソン)や、困惑するほど多才なスカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)など、新しいスーパーヒーローたちが登場して、コミックファンは興奮するかもしれない。一方で、キャラクターの飽和状態を助長し、ソー(クリス・ヘムズワース)や、キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)など人気キャラクターを脇に追いやってしまっている。
それでも本作は、ジョス・ウェドン監督の映画らしく、哀愁や、迫力溢れるアクションシーン、そして観客が期待する切れ味あるジョーク(ソーのハンマーについての定番ギャグだけでも鑑賞料金にほぼ匹敵する)が満載だ。しかし、最高の作品を追求するマーベルの視点が加わることにより、脅迫的な要素が感じられる。それは観客を惑わし、ジョス・ウェドンのようなインディペンデントな映画監督を激しく抑圧しているのではないだろうか。
2015年7月4日(土)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開 監督・脚本:ジョス・ウェドン 出演:ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロほか 配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン ©Marvel 2015
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』公式サイトはこちら
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