『M』 Kiyonori Hasegawa
2010年12月27日 (月) 掲載
週に1、2本はジャンルを問わず、舞台を観に行くという七尾藍佳が、これぞと思う演目を紹介してきたステージ&伝統芸能セクション。年間のアクセスが多かった記事10本を改めて紹介したい。さらに、七尾自身が印象に残っているというインタビューも、『エディターズ・ピック』として、再掲する。
第1位 たった一度の復活、小林十市『M』
7年のブランクを経て、“踊る”というのである。それもベジャールが東京バレエ団のために振付けた三島由紀夫の生涯と世界観を題材にして作られ、小林自身も1993年の初演時に出演している『M(エム)』を踊る。小林本人が、「今の僕がそのまま書かれていると思います」と語る記事。ダンサーの絶望、孤独、不安を率直に語る小林の言葉に、胸打たれる。
第2位 イギリスと世界が愛したバレリーナ
クラシック・バレエの頂点として世界に君臨する『英国ロイヤル・バレエ団』初の日本人プリンシパルとして活躍してきた吉田都へのインタビュー。テクニックと身体能力を維持しながら、年齢とともに芸術性と表現力を深めていった吉田が、なぜキャリアの頂点で退団することを自ら決めたのか。彼女が貫く美学にぜひ触れてほしい。
第3位 硬派アイドル『アルターボーイズ』
『アルターボーイズ』の翻訳を担当した北丸雄二へのインタビューは、ゲイであることをカミングアウトし、ジェンダーコンシャスな文学作品を日本に紹介し続けてきた彼の、“マイノリティ”に対する哲学がよくわかる。北丸が目指す“優しい社会”には、共感する。
日比谷のシアタークリエで開催されたミュージカル『RENT』のプロデューサー、小嶋麻倫子へのインタビュー。「良い物語、生きていてよかったな、と思えるような作品をやりたい」と語る小林が目指すシアタークリエの新しい舞台に注目してほしい。
第5位 特殊効果のいらないSF、落語
落語を扱った人気映画『しゃべれどもしゃべれども』の監修を担当し、その古典落語の世界観を大切にするスタイルが評価され、数々の賞を受賞してきた古今亭菊志んへのインタビュー。落語は江戸時代から、どう受け継がれてきたのか。落語とは何なのか。落語初心者にオススメ。
第6位 “脅威”のダンサー森山開次の世界
新しいものと古いものの間を自在に飛び回って行くような、誰にも真似のできない独自のダンス表現を持つ森山開次。21歳から踊りを始めた森山が、どのようにして自身の表現を極めてきたのかが語られている。
第7位 新生『マシューボーン白鳥の湖』
男性が“白鳥”を踊る、という演出で、バレエ界のみならず、 ミュージカルの本場、アメリカのブロードウェイをもあっと言わせた作品で、ダンサーとしても活躍し、アソシエイト・ディレクターつとめるスコット・アンブラーへのインタビュー。物語と真摯に向き合う姿勢に、プロの探求心が見える。
第8位 観客演劇『パブリック・ドメイン』
公開されるとともに、ツイッター上で250回以上リツイートされ、話題となった記事。出演者はおらず、観客が物語に組みこまれていく“100%参加型演劇”を仕掛けるロジェ・ベルナットが、パフォーマンスを通じて発信したいメッセージを語る。
第9位 コンドルズ、世界が絶賛したワケ
結成当初は、「ニューヨークタイムズ紙でも絶賛」がギャグとして使われていたが、今ではそれが現実となったダンスカンパニー『コンドルズ』のプロデューサー兼出演者である勝山康晴へのインタビュー。「閉塞感がそこらじゅうに跳梁跋扈する日常の中で、物事をネガティブに考えるのは、水が低きに流れるがごとく一番簡単なことだ」ほか、印象的な言葉が散りばめられている。
第10位 ジャーナリスティックな“講談”
雑誌編集者から講談師に転身した神田陽司。パレスチナ問題や、現代日本社会における経済犯罪など、“ホット”でジャーナリスティックな講談がどのようにして生まれたのか。“言葉の持つ力”にかける神田の思いが伝わってくるインタビューだ。
日本舞踊のこれからを担う若手、尾上青楓の舞台は、日本舞踊のしなやかなイメージを180度変える力強さがある。技法としては、伝統芸能としての日本舞踊ではあるものの、何か新しい“ダンス”を見ているような気持ちにさせられるのだ。芸に向き合う姿を、ぜひたくさんの人に知ってほしい。
空腹を満たすために食べる、味わうために食べる、というものではなく、人が忘れかけていた欲望や好奇心を引き出す食べ物を提供する諏訪綾子。彼女が作り出すものは、決して美味しいものばかりではなく、“料理”とは呼ばれない。食を扱うエキシビションとパフォーマンス『ゲリラレストラン』には、ぜひ足を運んでほしい。
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