2011年01月07日 (金) 掲載
歌舞伎という伝統芸能にとっては、ひとつの聖地でもある浅草の地で上演される新春公演。お正月気分を引き続き味わいながら、浅草寺にお参りしつつの観劇がお勧め。 おめでたい出しものが並び、今をときめく若手の人気歌舞伎俳優が競演する。市川亀治郎は若いながらも江戸庶民の雰囲気をかもし出すのが上手く、『独楽(こま)』では独楽売萬作を演じ、江戸の物売りの風俗を生き生きと軽妙に表現する。
世界のトップカンパニーのひとつベルリン国立バレエ団の日本公演で、特に注目したいのが芸術監督ウラジーミル・マラーホフが、自らも踊る一夜限りのスペシャル公演、『マラーホフ・ガラ』だ。バレエダンサーとしてのマラーホフをもっと観たいと感じているファンにはまたとない機会。ベジャール振付作品の『これが死か』でマラーホフは孤独な男の苦しみを表現する。
近年、彼女を描いた映画などでふたたびブームとなっている悲劇の歌姫、エディット・ピアフの人生が、とうとうここ日本でミュージカルとして味わえる。その艶やかな容姿と歌唱力で日本ミュージカル界のトップスターの一人である安蘭けいが、常にスキャンダルとアクシデントにつきまとわれたエディット・ピアフの波乱万丈な人生を演じる。演出は『東京タワー』、『大停電の夜に』などを手がけた映画監督の源孝志が担当することも注目だ。
精神科医から劇作家へという異色のキャリアを持つタニノクロウが、チェーホフが生涯をかけて挑みながら未完に終わった博士論文をモチーフに、チェーホフが異常なまでに関心を抱いていた魔術などの超自然的な現象、いわばスピリチュアルで幻視的な世界観を探るという冒険的な試み。観る者の心にひそむ見えないものへの欲求を刺激してくれるかもしれない。
かなり泣ける、思い切り恋を体感して泣きたい方にお勧めの舞台だ。1870年代のロシアで、高い塀に囲まれて籠の中の鳥のように過ごしていた女性たち。その塀をぶち破り、外の新しい時代へと羽ばたくために必要な“自由”の代償の大きさに観客は息 を呑み、涙を流す。アンバランスを抱えながら、矛盾する感情と価値観の間に板ばさみとなり右往左往するアンナ・カレーニナの姿に、21世紀の日本に生きる 女性たちが共感できる要素は多い。
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