2011年03月29日 (火) 掲載
中山麻聖は現在23才、舞台、ドラマ、映画にと幅広く活躍している若手の俳優だ。182センチという長身で、颯爽とした中山に会うと、おそらく誰もが“礼儀正しい青年”という印象を受けるだろう。それはおそらく、両親共に役者で、幼い頃から親の仕事現場に行き、礼儀作法を吸収してきたからだと思われる。彼の父は三田村邦彦で、母は中山麻里。2004年公開の映画『機関車先生』でデビューし、以来ミュージカル『テニスの王子様』、『シャリトーベルサイユ』、ドラマでは『ごくせん3』、NHK大河ドラマ『篤姫』に出演してきた。最近では2010年10月公開の映画『桜田門外ノ変』、フジテレビONE・TWO・NEXT放送のドラマ『SUMIRE LABO スミレ刑事の花咲く事件簿 Episode 0』に出演し、5月には『スミレ刑事』の舞台に出演する。まずは中山麻聖に俳優の道を歩むことになったきっかけを聞いた。
「中学2年生の頃、母の知人のプロデューサーが映画を製作する時に、剣道ができる中学生を探していて、ちょうど僕が小学校6年の頃から剣道を習っていたので、どうだろうか、という話になって。で、母から“もしやる気があるならプロデューサーに紹介するけど、生半可な気持ちならやめたほうがいいよ”って言われました。せっかくの機会だと思ったからやりたいと思い、プロデューサーとお話をして、オーディションを受けて、受かって。そこから役者の道が始まりました。『機関車先生』っていう坂口憲次さん主演の作品でした」
“きちんとした青年”という印象を与える中山麻聖。小さい頃から役者の現場をのぞいてきたため、やはり両親と周囲の大人から大きな影響を受けているようだ。
「この業界に入るなら礼儀作法は気をつけろとは言われましたが、あとは習慣だと思います。親の後ろについて歩くことが多かったので、周りは大人ばっかりでした。大人同士のやりとりをみて、大人の言動を真似してました。マネージャーさんが自分の親にコーヒーを持っていくのを見て、子供ながらに誰かにコーヒーを持っていって、ありがとう、って言われるのが嬉しくなったり。そういうのは身にしみていると思います。門前の小僧ですね。大人の人に囲まれているのが、ひとつの落ち着く場所でした。今でも父親の舞台を観ると、ドラマと舞台の発声の違いなども、勉強になります。ただ父親としてしか見れない部分もあるんですよ(笑)。でも仕事についてはよく相談します、発声のポイントなどを教えてくれます」
このように聞くと、役者の両親の元に生まれ、ごく自然に本人も役者になったのだろうと思わせるが、実際はその逆だったという。
「もともと役者は一番なりたくない職業だったんです。親が苦労している背中しか見てないんで。生活リズムが不規則で、夜は家にいないのが当たり前だったし。小学生の時は両親ともに復帰していたので、2人の兄に面倒みてもらってました。一番ショックだったのは運動会とかに来てもらえなかったこと。皆さんが見てる華やかな部分は見ないで、逆に台本覚えたり役作りして苦労するところを見ているから、何でこんなに苦労する仕事なんだろうって思ってたんで、一番やりたくなかった。でも、小学校で演劇会があるのが、毎年楽しみだったので、自分の中で種みたいなものはあったのかと思います。結構妄想や想像をふくらませるのが好きな方なので、自分じゃない人になることに憧れていました。ずっと子供の頃からなりたい職業というのがあまりなくって。で、中学3年の頃、本格的にどうしようと思って、悩んでいた時に話が来たので、高校も仕事と学業が両立できるところに入って、どっぷり進んでいきました」
そしていま彼は、元宝塚トップスターの水夏希主演のプロジェクト『SUMIRE LABO スミレ刑事の花咲く事件簿』に刑事役として出演している。小説と、CSドラマ、そして舞台へと展開するという一大プロジェクトだ。5月2日から7日にかけて東京の新国立劇場で公演されるこの作品について聞いた。
「普通の舞台と違うのは、僕らキャストが舞台より先にドラマをとっているので、ある程度自分の中に個々のキャラクターや関係性を確立できているところです。ドラマで共演していて、キャストはひとつの家族のようになかよしになっているので、それを舞台で活かせたらな、と思っています。キーワードは『宝塚』。水夏希さん演じる伊原すみれもマニッシュな刑事で、僕が演じる光矢射斗は大の宝塚ファンだったり。もしかしたらところどころに宝塚の作品のセリフが出てきたりするかもしれないので、これはこの作品のこの部分かも、と言う風に見る楽しみがあるかもしれませんね。小説、ドラマ、舞台、とつながっているんですが、それぞれのメディアの特徴を活かしていると思います」
順風満帆な役者人生を進んでいるように見える中山麻聖は、より表現力のある俳優になれるように努力をしている。彼は、これからどんな役者になりたいのだろうか?
「今、役者をやっていて楽しいです。空いている時間は、事務所においてある、過去に事務所の先輩が出演した作品の台本を読んだり、映画やドラマをなるべく観たり、レッスンや稽古事を入れてます。いまも殺陣を習っています。もの凄く陰気な、根暗な役をやりたいですね。なにか突出したところがある、平均ではない役。SFで言えば人間ではなくて人造人間だったりとか。今回、自分がやりたいな、と思ったのは、刑事という初めて挑む役柄なので、刑事について勉強しました。新しいことに、今まで自分の周りに無かった、経験値に無い役を、せっかく役者をやっているからにはやってみたいです」
ずっと一番なりたくない仕事だったという“役者”。学校のイベントなどに両親が来られずに、寂しい思いをした。プライベートなことが報道されたりと、多感な思春期の頃に、両親が有名であることで傷つくことも多かった。それでも中山麻聖は、大人たちの現場を子供ながらにのぞいて、わくわくドキドキしていた。「想像力をふくらませるのが好きなタイプ」という彼の特徴は、きっとそんな現場で培われてきたのだろう。それは“俳優”にとってはとても重要な素質だ。きっとこれからの中山麻聖は、本人が語るように“自分の経験値”を超え“突出”した役に、ひとつひとつ丁寧に向き合いながら、大きく成功していってくれるだろう。
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