映画『博士と彼女のセオリー』レビュー

車椅子の天才物理学者スティーブン・ホーキング博士の半生とラブストーリー

(C)UNIVERSAL PICTURES
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『博士と彼女のセオリー』タイムアウトレビュー

世界にその名を轟かせる宇宙物理学者スティーブン・ホーキング (エディ・レッドメイン)の自伝的なこの映画は、感傷的になることを匠みに避けているところが一番の見所と言える。学生の頃に発症した筋肉機能が奪われていく病気に対して、暗いユーモアを感じとることが多かったが、今作ではアイロニーが通底している。車椅子を使い、発語が不自由な科学者として知られるホーキングが、『ドクター・フー』(イギリスの長寿SFドラマ)のダーレクのように、リビングルームを元気に駆け回る人物として描かれる。

さらに重要なのは、科学に絡んでくるシーンは、ブライアン・コックス調にわかりやすく説明してくれるということだ。始まりの頃のシーンで、親身になって世話を焼く教授が、ケンブリッジ大学の学生であったスティーブンを、その分野でも中心的な研究室に紹介するのだが、その静かなシーンに、とても心を打たれた。この映画には、洒落た視覚的メタファーがちりばめられていて、コーヒーカップの中の渦巻きは暗黒と光物質のシンボルになっている。また、スティーブンが将来の妻ジェーン (フェリシティー・ジョーンズ)と一緒に踊るシーンでは、電飾がキラキラ輝いて宇宙の生成のようであった。

今作はジェーンとスティーブンの物語であり(脚本は大部分がジェーン・ホーキングの2作目の回想記をベースとしている)、家庭内の不和や結果的な離婚などについて赤裸々に語られることはないが、宗教を巡ってのおどけた口論や野心を保留しなければならなくなる厳しい現実など、表面下の痛々しい緊張が充分に描かれている。2人の俳優の演技は素晴らしく、レッドメインは肉体的な演技の面でまだ探求の余地があるが、ジョーンズは自己の求めるものを忘れられない強い女性を激しく演じきっていた。

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『博士と彼女のセオリー』

2015年3月13日(金)TOHOシネマズ シャンテほか 全国ロードショー

監督:ジェームズ・マーシュ
原作:ジェーン・ホーキング著『Travelling to Infinity: My Life with Stephen』
主演:エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コックス、エミリー・ワトソン、サイモン・マクバーニー
配給:東宝東和
(c)UNIVERSAL PICTURES 

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テキスト ジョシュア・ロスコフ
翻訳 平塚 真里
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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