2015年02月25日 (水) 掲載
主人公カール・キャスパー (映画『アイアンマン』の監督ジョン・ファヴロー、今作では監督、脚本、主演をしている) は、マイアミ飲食業界の成功者と呼ばれ、ロサンゼルスの高級レストランを取りしきる総料理長として働いていた。しかし、雇われ支配人である上司 (ダスティン・ホフマン)のやり方に不満を抱えており、徐々に料理への情熱を失ってしまい、大衆ウケを狙った料理ばかりを作るようになっていた。そんなある日、著名な料理評論家(オリヴァー・プラット)に厳しい言葉を投げつけられ、カールがそこで対抗した悔し紛れの一言が、SNSを通じて世間に拡散してしまいレストランを去ることとなる。
元妻のイネズ(ソフィア・ベルガラ)になだめられたカールは、ネット上での悪評から距離を置くために、長い間会っていなかった息子、パーシー(エムジェイ・アンソニー)を連れて、マイアミへと旅立つ。自らの故郷に帰ったことをきっかけに、高級店のシェフが着る純白のコック服を捨て去り、キューバ料理のフードトラックを始めるという、方向転換を決意するのであった。そして、家庭や、調理場での過去に決着を付けるため、フードトラックで旅へ出ることに。
今作を、個人の成長を主題にしたインディーズ映画として考えると、監督ジョン・ファヴローのキャリアが非常に分かりやすい形で浮かび上がってくる。批評家から高評価を得た1996年の映画『スウィンガーズ』の脚本、出演をしたファヴローは、それ以降、『アイアンマン』シリーズの製作で忙しくしていた。また、今作の主人公カールが直面したような、酷評を受けたこともある (映画『カウボーイ & エイリアン』を見てみると良い。いや、見ない方が良いかもしれない)。今作によってファヴローは、自分が本当に撮りたいものを撮り、彼自身のルーツへと回帰を果たしたのだ。ノンストップで続くキッチンでの騒ぎは、アクションムービー並みであり、素晴らしい流れで展開する。また、高カロリーな料理のいかにも食欲をそそる映像は、カーチェイスのような気前の良さで繰り出されるのだ。
ファヴローが飲食業界を描くその巧みさのみに注目してしまうと、とりとめのない第2幕や、ベタベタ甘々の第3幕を見過ごしてしまうことになる。フードトラックブームに火をつけた、Kogiの創業者ロイ・チョイを現場のコンサルタントとして迎え、ファヴローは、カールと彼の部下たち (ジョン・レグイザモとボビー・キャナベール)との下世話な友情や、ニューオーリンズやオースティンといった地方色豊かな食のメッカ、またソーシャルメディアでの評判がレストランの命運を左右するような現状など、完璧に描き出している。家族向けの甘過ぎる部分もあるが、この一皿、非常に食べごたえがあるのは、間違いない。
2015年2月28日(土)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
製作・監督・脚本・主演:ジョン・ファヴロー 出演:ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニーJr.、スカーレット・ヨハンソン、ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、エムジェイ・アンソニーほか 配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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