映画『ニンフォマニアックVol.1/Vol.2』レビュー

世界を挑発し続ける鬼才ラース・フォン・トリアーが女性のセクシャリティに挑む

(C)2013 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31 APS, ZENTROPA INTERNATIONAL KÖLN, SLOT MACHINE, ZENTROPA INTERNATIONAL FRANCE, CAVIAR, ZENBELGIE, ARTE FRANCE CINÉMA
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『ニンフォマニアックVol.1/Vol.2』タイムアウトレビュー

デンマーク出身のラース・フォン・トリアーが監督した今作は、貪欲なまでに快楽を追い求めた1人の女の人生を描いている。主人公ジョー (ステイシー・マーティン、後にシャルロット・ゲンズブール) が、セリグマン (ステラン・スカルスガルド)に「私が性に目覚めたのは2歳の時だった」と、数えきれないほどの男たちとのセックスの経験を語りだす。この第1部では、ジョーの10代から20代までの、ゲームのように奔放なセックスが描かれている。しかし、完結編となる第2部では、暗い影を帯び中年になった主人公が、いかにしてあらゆる性的快感を失い、マゾヒズム、脅威、暴力に悲しい喜びを見出すに至ったのかを詳細に語っていく。そして、いつの間にかにセックスが自らに課した罰のようになっていたのである。ジョーは、夜、眠っている子供を置き去りに、SMプレイの主人 (ジェイミー・ベル) や、見知らぬ他人とのセックスの危険なスリルに身を任せるのであった。

過去の作品『イディオッツ』、『ドッグヴィル』を超える反抗的な過激さがあり、『メランコリア』、『アンチクライスト』よりも整ったストーリーが展開していた。テーマの上にテーマを重ねてゆく独特の手法を使い、時間軸を飛び越え、挿話を挟み物語は広がっていく。今作の特徴は、自嘲や聞き手のセリグマンのキャラクターによって、今までの作品の要素としてある、不快なまでの暗さを免れている。 ラース・フォン・トリアーの映画は、社会的なリアリズムや、厳密な時代や場所を求めて見るものではないと言えるだろう。剥き出しの正直さ、挑発、矛盾、想像力の飛躍を楽しむべきなのだ。また、女優陣の大胆な身を挺した演技は本当に素晴らしかった。新人女優のマーティン、ベテランのゲンズブール、両者の演技力が、この映画をしっかりと地に足の着いたものにしていた。

そして、2011年のカンヌ映画祭で「私はナチ」発言でスキャンダルを巻き起こしたラース・フォン・トリアーが、いくらかおとなしくなったのではないだろうか?と思わされる作品だった。実際に行動を起こさない小児性愛者が登場するのは勲章ものだし、ゲンズブールが勃起した二人のアフリカ系移民に挟まれているシーンを見れば、その答えは明らかだ。この作品に対する編集の権限をラース・フォン・トリアーは持っていなかったのかもしれないが。あからさまでためらいはなく、遊び心にあふれた、『ニンフォマニアック』は、彼以外の誰にも撮ることはできなかったであろう。

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『ニンフォマニアックVol.1/Vol.2』

10月11日(土)より、Vol.1、11月1日(土)よりVol.2 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷ほか全国順次ロードショー
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:シャルロット・ゲンズブール、ステラン・スカルスガルド、ステイシー・マーティン、シャイア・ラブーフ、クリスチャン・スレイター、ユマ・サーマン、ソフィ・ケネディ・クラーク、コニー・ニールセンほか
配給:ブロードメディア・スタジオ
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テキスト デイヴ・カルホン
翻訳 平塚 真里
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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