映画『FRANK -フランク-』レビュー

被り物を脱がない奇妙な男の物語

© 2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute
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『FRANK -フランク-』タイムアウトレビュー

映画『FRANK -フランク-』はアイルランド出身のレニー・エイブラハムソン監督による、ダークなコメディ映画である。 2010年に謎を隠したまま死を遂げたイギリスの音楽コメディアン、実在の人物クリス・シーヴェイ(フランク・サイドボトム)をモデルに、主人公フランクをマイケル・ファスベンダーが終始被り物をつけて演じている。今作を共同執筆したジョン・ロンソンとピーター・ストロウガンはフランクの被り物を芸術的な自由さと社会に適合できない者の象徴へと変えた。劇中、車に乗っていようがシャワーを浴びていようが、フランクは常にマスクを被っていて、本当に恐ろしかった。

主人公フランクは、ジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスをも震え上がらせるようなオルタナティブミュージックバンドSoronprfbs(ソロフォルブス)のフロントマン。風変わりで、癖のあるメンバーばかりが揃ってしまったバンドだ。今作で、マギー・ギレンホールはバンドを仕切るテルミン奏者であり、フランクの理解者として登場する。そして、失敗ばかりのUKツアーの最中、ミュージシャンになることを夢見ているが才能のないジョン(ドーナル・グリーソン)が一悶着ありながらもバンドに加入する。ジョンは不快でまぬけなキャラクターとして登場するが、明らかに監督は彼の味方だということが伝わってくる。

挑戦的で個性に溢れたフランクは、インディーシーンの一部として見過ごされてしまうには惜しい存在だった。バンドが人里離れた森の中での数か月に及ぶレコーディングセッションに臨む時、監督は、音楽を創作する過程における衝突(といっても可笑しいものもあるのだが)を通して登場人物たちの真の姿を暴いていく。そんな中、ジョンがひそかにネット上にあげた音楽が反響を呼び、彼らはテキサスで開かれるサウス・バイ・サウスウェストフェスティバル(SXSW)へ出演することとなる。しかし、報道陣の目の前で人気を得たいというジョンの願望と、それとは異なるフランクの不器用さによりバンドは崩壊してしまうのであった。

映画の大部分で痛々しいほどにフランクの内面が明らかになっていき、被り物が取れるシーンには、心が震え、儚さを感じた。そして、ある意味で、カルト的なドキュメンタリー映画である、『悪魔とダニエル・ジョンストン』を思い起こさせた。あなたが、この作品を受け入れた時、過ちも何もかも覆い隠してしまうかのように、フランクに被り物を頭から被せられてしまうだろう。しかし、それは素晴らしいことなのだ。

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『FRANK -フランク-』

10月4日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
監督:レニー・アブラハムソン
出演:マイケル・ファスベンダー、ドーナル・グリーソン、マギー・ギレンホール、スクート・マクネイリー ほか
配給:アース・スター エンターテイメント
配給協力:アルシネテラン
© 2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute

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テキスト ジョシュア・ロスコフ
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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