映画『ビフォア・ミッドナイト』レビュー

『ビフォア・サンセット』から10年、運命的な恋のその後を描いた話題作

映画『ビフォア・ミッドナイト』レビュー

『ビフォア・ミッドナイト』タイムアウトレビュー

リチャード・リンクレイター監督の恋愛映画『恋人までの距離(ディスタンス)』、『ビフォア・サンセット』の続編で、イーサン・ホークとジュリー・デルピーが、ジェシーとセリーヌ役で3度目の共演をする。今回だけは、2人の恋はくっついたり離れたりの繰り返しではない。あのアメリカ人作家とフランス人環境保護主義者は、10年近く前のパリでの再会以来、ずっと一緒にいたのだ。子ども儲け(見てのお楽しみにこの話には触れないでおく)、陽気な初老の作家(これを演じるのは伝説の映像作家、ウォルター・レサリーだから驚き)のギリシャのゲストハウスで、休暇を過ごすところから話は展開する。

前作では、数年を経て再会を果たした2人のときめき溢れる会話が主体であったが、本作のストーリーのように9年も共に暮らし、幸せにしろ不満が募っているにしろ、何をそんなにひっきりなしに喋ることがあるのだろうか。少しは落ち着いて黙ってみるのも面白いのではないかと思うが、そこはこの映画、というか2人のキャラクターだからしょうがない。

が、問題はやはりそこなのだ。ジェシーとセリーヌは、子どもを置いて一晩ホテルで過ごそうと車で長いことドライブに出掛けるのだが、その間もノンストップで喋り続ける。前妻との間にできた子どものことだとか、互いを思いやるセックスライフについてだとか、ヒップのサイズが大きくなっているだとか。まるでそれらが2人の人生にとって大きな悩みであるかのように、午後の時間いっぱいかけて議論の連続である。2人の演技には、今作もすべてアドリブのようなエネルギーとセンスがみなぎっているが、リンクレイター監督の本シリーズにあるリアリズムには馴染まない、コレジャナイ感のようなものを感じてしまうのも事実だ。

『ビフォア・ミッドナイト』は、リンクレイター監督がそのストーリーの風味をひと味変えた、非常に興味深い最終章となった。その日が彼らの人生の新しい始まりになるいう描き方ではなく、感情的になるのを正当化したり、とめどない会話をしたりといったことに終始している。幸い、ホークとデルピーは相変わらず魅力的で、バカバカしいやりとりも気に触ることなく親しみを感じさせる。この一風変わったシリーズが、不完全ながらも観客やキャストと共に歳を重ねていくという感覚を与えるという点でもまた、その出来栄えに華を添えているのだろう。

原文へ(Time Out London)


『ビフォア・ミッドナイト』(原題:Before Midnight)

監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー
公式サイト:beforemidnight-jp.com
2014年1月18日(土)、Bunkamuraル・シネマヒューマントラストシネマ有楽町新宿バルト9ほか全国ロードショー
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テキスト デイヴ・カルホン
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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