映画『キューティー&ボクサー』レビュー

ニューヨーク在住40年、芸術家夫婦を追ったドキュメンタリー

映画『キューティー&ボクサー』レビュー

『キューティー&ボクサー』タイムアウトレビュー

乃り子がアートを学びにニューヨークへやって来たのは、1960年代の19歳の時のこと。そこで出会った大酒飲みのロックスターでアーティスト、41歳の篠原有司男(うしお)と恋に落ちて結婚。それから40年。カップルの赤裸々な姿を綴ったドキュメンタリー作品が、観る者を彼らのイカれたニューヨークにあるアパートへと誘う。有司男が「芸術家」でいる時間よりも「ロックスター」でいる時間の方が長いせいで、2人は無一文だった。現在80歳となった有司男は、アートシーンに再びその姿を見せているようだが、おそらく健康を損なって酒をやめたのだろう。大きなキャンバスにボクシング・グローブを使って絵具で描く「ボクシング・ペインティング」は、変わらずに彼の代名詞である。

胸を打つ映画であり、いまだ共に暮らしているのが信じがたい、興味深いカップルの姿を垣間見ることができる。長い年月を経てもなお、彼女は誠実な学生で、料理人で、清掃員で雑用係でもある。「平凡な人間は天才のサポートをするものだ」と有司男は言う。彼女は憤りをアートへと向けて『Cutie and Bullie』という、鬱陶しいほど気取ったシリーズを製作しており、無邪気で半分ポルノ的なマンガのキャラクターを使って、自分たちの関係を描いている。ところどころ見ていてのが辛くなるのだが、乃り子に流し台で洗われている猫ほどではないだろう。

原文へ(Time Out London)


『キューティー&ボクサー』(原題:Cutie and the Boxer)

監督:ザッカリー・ハインザーリング
出演:篠原有司男、篠原乃り子
公式サイト:www.cutieandboxer.com/
2013年12月21日(土)、シネマライズほか全国ロードショー
©2013 EX LION TAMER, INC. All rights reserved.


テキスト カッス・クラーク
※掲載されている情報は公開当時のものです。

この記事へのつぶやき

コメント

Copyright © 2014 Time Out Tokyo