『ブンミおじさんの森』 (c)A Kick the Machine Films
2011年02月09日 (水) 掲載
タイ映画で初めてカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞。審査委員長のティム・バートンが「美しく不思議な夢を観ているようだ」と絶賛した本作は、新しいアジア映画の息吹を感じさせてくれる。病気で死を間近にして、ひっそりと暮らすブンミ。そんな彼の前に、すでに亡くなった妻と行方不明になった息子が思わぬ姿で現れる……。監督のアピチャッポン・ウィーラセタクンは現代アートの世界でも活躍する新鋭。子供の頃に影響を受けた怪奇マンガやメロドラマのイメージを引用しながら、独創的なイマジネーションと暖かなユーモアで人間の生と死を描きだしていく。
公開日:2011年3月5日(土)
映画館:シネマライズ
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
ウェブ:uncle-boonmee.com/
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー監督の新作は、世界中で賛否両論を巻き起こした問題作だ。セックスの最中に子供が事故死してしまったことで、精神を病んでしまった妻。セラピストの夫は妻を治療しようと妻を連れて山小屋に籠もるが、そこで恐ろしい運命が待ち受けていた。監督が鬱病に悩まされながら撮ったというだけあって、人間の手が生えた木や喋る狐など、映画全編に異様なイメージが満ちている。迫真の演技で衝撃的なシーンの数々を演じたシャルロット・ゲンズブールはカンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞した。
公開日:2011年2月26日(土)
映画館:新宿武蔵野館、シアターN渋谷
監督:ラース・フォン・トリアー
キャスト:シャルロット・ゲンズブールほか
ウェブ:www.antichrist.jp/
過激な取材と文体でジャーナリズムの新しいスタイル=〈ゴンゾー・スタイル〉を生み出した問題児、ハンター・S・トンプソンの波乱に満ちた生涯を追ったドキュメンタリー。ヘルズ・エンジェルスに潜入取材をして袋叩きにあい、大統領選では虫の好かないニクソンをペンで袋叩きにする。銃とドラッグを愛し、世間を挑発し続けたトンプソンは、まさにアメリカ的アウトローの典型だ。かつてトンプソンの代表作を映画化した『ラスベガスをやっつけろ』でトンプソン役を演じたジョニー・デップは、今回は朗読を担当して彼のアイドルにリスペクトを捧げている。
公開日:2月19日(土)
映画館:シアターN渋谷、シネマート新宿ほか
監督:アレックス・ギブニー
キャスト:ジョニー・デップ(ナレーション)
ウェブ:gonzo-eiga.com/
イラク映画の鬼才、アッバス・キアロスタミが初めて本格的な恋愛映画に挑戦。これが一筋縄ではいかない物語で、舞台となるのはイタリアのトスカーナ地方にある小さな村。そこに講演にやって来たイギリスの作家は、ギャラリーを経営する女主人に連れられてドライブへ。立ち寄ったカフェで夫婦に間違えられた2人は、そのまま“夫婦ゲーム”を続けるが……。嘘のなかに思わず顔を出す男女のホンネや、少しずつ変わっていく2人の関係など、その語り口はまさに魔術的だ。ヒロインを演じたジュリエット・ビノシュは本作でカンヌ国際映画祭主演女優賞に輝いた。
公開日:2011年2月19日(土)
映画館:ユーロスペース
監督:アッパス・キアロスタミ
キャスト:ジュリエット・ビノシュほか
ウェブ:www.toscana-gansaku.com/
4世紀のエジプトに存在した“知識の宝庫”、アレクサンドリア図書館。そこにひとりの女性天文学者、ヒュパティアがいた。恋よりも学問を愛したヒュパティアは、宇宙の秘密を解き明かすことに情熱を燃やす。しかし、科学を否定するキリスト教徒たちが暴徒化して図書館を襲い、ヒュパティアは宗教紛争と権力争いの渦中に巻き込まれることに。制作費50億円を投じて完成された本作は、ほとんどCGを使わずにアレクサンドリアの町を再現。リアルな描写のスペクタクルな人間ドラマは、いまの世界情勢の痛烈なメッセージも込められている。
公開日:2011年3月5日(土)
映画館:丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー
監督:アレハンドロ・アメナーバル
キャスト:レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザックほか
ウェブ:alexandria.gaga.ne.jp/
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