東京国際映画祭の気になる上映作品25

今年のTIFFを楽しむための25のレビュー

東京国際映画祭の気になる上映作品25

キツツキと雨 (c)2011 Kitsutsuki to Ame Film Partners

第24回東京国際映画祭六本木ヒルズをメイン会場として開催中だ。世界中から厳選された約130もの作品が上映されており、質の高さに厳しいとされている「東京サクラグランプリ」を選出するコンペティション部門や、インディペンデント映画を海外へと発信する役割を担っている「日本映画・ある視点」など部門ごとに魅力的で様々な作品が集まった。タイムアウト東京ではその中から注目の25作品をピックアップ。芸術の秋にふさわしいお気に入りの作品がきっと見つかるはず。

コンペティション
アルバート・ノッブス
監督:ロドリゴ・ガルシア  
出演:グレン・クローズ、ミア・ワシコウスカ、アーロン・ジョンソン
グレン・クローズが30年前にオフ・ブロードウェイで主演した作品であるジョージ・ムーア原作の『アルバート・ノッブス』。いつの日か映画化したいと思い続けてきたというこの作品では、性差別の厳しかった19世紀のダブリンで執事として働く女性としてグレンがスクリーンに登場する。様々な評価が飛び交っている作品ではあるが、間違いなく今回のTIFFのコンペティション部門で最注目の作品だろう。


natural TIFF supported by TOYOTA
光と影の間にあるもの
監督/脚本/編集:ベルナルド・アレヤノ
出演:フランシスコ・クルス、ガビノ・ロドリゲス、カルメン・ベアト
ベルナルド・アレヤノのデビュー作である本作品は、自閉症のフランシスコが兄弟たちの家を転々と渡り、疎まれた存在なのだと信じて森の中で生きることを選ぶ物語。本年度の様々な映画祭で高く評価されている作品。


特別招待作品-3D上映
ケイヴ・オブ・フォゴットゥン・ドリームス(原題)
監督/脚本/ナレーション:ヴェルナー・ヘルツォーク
最古の壁画が残された南仏・ショーヴェ洞窟。鬼才ヘルツォーク(『フィツカラルド』他)による3Dドキュメンタリーである本作は、すでにサイトへのアクセス数で注目度が分かるほど。間違いなく息を飲むほど美しく圧倒される作品。


WORLD CINEMA
チキンとプラム
監督/脚本/原案:マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
出演:マチュー・アルマリック、エドゥアール・ベール、マリア・デ・メディロス
楽器を壊され、絶望した音楽家を描いた自身のマンガ作品を映画化。オスカー賞にノミネートされた前作『ペルセポリス』に勝るとも劣らない大人のファンタジーに仕上がっている。ヴェネチア映画祭コンペ部門正式出品作品。


特別招待作品
ステキな金縛り
監督/脚本:三谷幸喜
出演:深津絵里、西田敏行、中井貴一他
永遠のエンターテイナー、三谷幸喜による新作コメディーは、超自然的な法廷サスペンス。構想10年以上、監督は長年温め続け一番実現させたかった物語だという。阿部寛、浅野忠信そして深津絵里というユニークで印象的なキャスティングも秀逸。


特別招待作品
ハードロマンチッカー
監督:グ・スーヨン
出演:松田翔太、永山絢斗、中村獅童 他
銀幕のスター松田翔太が演じるのは、グ スーヨン監督の半自伝的小説「偶然にも最悪な少年」を終わりなき暴力の連鎖の物語として描いた、渾身の問題作。


natural TIFF supported by TOYOTA
失われた大地
監督:ミハル・ボガニム
出演:オルガ・キュリレンコ、イリヤ・イオシフォフ、アンジェイ・ヒラ
日本が福島の原発事故から立ち直ろうと懸命に努力しているなか、ミハル・ボガニム監督が描き上げたのは、チェルノブイリの街を描いた壮大なドラマ。緑豊かで平和だった街が変わりゆく、目を背けたくなるほどに圧倒的な説得力のある映像美。


特別招待作品
ハラがコレなんで
監督:石井裕也
出演:仲里依紗、中村蒼、石橋凌 他
『川の底からこんにちは』で高く評価されている石井裕也のほろ苦系新作コメディー。『時をかける少女』の仲里依紗演じる妊婦の光子は、幼少期を過ごした時代遅れの長屋に戻ってみると…。


特別招待作品
1911
総監督:ジャッキー・チェン
監督:チャン・リー
出演:ジャッキー・チェン、リ-・ビンビン、ウィンストン・チャオ 他
ジャッキー・チェンの記念すべき映画出演100本目となる本作は、中華民国建国のきっかけとなった武昌蜂起(1911年10月10日に中国の武昌で起きた兵士たちの反乱)から100年を記念して製作された歴史大作。


日本映画・ある視点
返事はいらない
監督:廣原 暁
出演:佐藤貴広、太田順子、桝木亜子、他
昨年のバンクーバー国際映画祭でドラゴンズ&タイガー・ヤングシネマ・アワードを受賞した才気溢れる若手(25歳!)監督、廣原暁。TIFFでの上映は世界プレミア、貴重な機会となる。


特別招待作品
Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち
監督/脚本/プロデューサー:ヴィム・ヴェンダース
出演:ピナ・バウシュ、ヴッパタール舞踊団
個性的で印象深いドラマ作品を多く生み出してきた奇才ヴィム・ヴェンダースが新たに虜になったテーマは、ドイツの天才舞踊家で振付家のピナ・バウシュ。本作は彼女の軌跡を3Dで描いたダンスドキュメンタリー。


natural TIFF supported by TOYOTA
プロジェクト・ニム
監督:ジェームズ・マーシュ
『マン・オン・ワイヤー』でアカデミー賞を受賞したジェームズ・マーシュ監督が選んだテーマは、1970年代に実際に行われた”チンパンジーの子供を人間と同じように育てる”という実験とその末路を追ったドキュメンタリー。人間ではなくチンパンジーが物語の中心である。


アジアの風-多国籍オムニバス
香港四重奏+香港四重奏II
Quattro Hong Kong + Quattro Hong Kong 2
監督:羅卓瑤(クララ・ロー)、陳果(フルーツ・チャン)、邱禮濤(ハーマン・ヤウ)、麥曦茵(ヘイワード・マック)他 「香港」をテーマに作り上げた全4話からなるオムニバス。「Ⅰ」では、陳果(フルーツ・チャン)など、今香港で勢いのある監督達が名を連ねる。また「Ⅱ」は、2010年度カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞したアピチャッポン・ウィーラセタクン監督をはじめとし錚々たる監督が集結。


アジアの風-中東パノラマ
飼育
監督:リティー・パニュ
出演:シリル・ゲイ、チェム・チュープ、ソム・チューム 他
大江健三郎の芥川賞受賞作「飼育」がカンボジアという場所を舞台の物語に翻案され、ドキュメンタリー界の巨匠リティー・パニュが劇映画化。TIFFでの本上映がワールドプレミアとなる。


香川京子特集上映「香川京子と巨匠たち」
近松物語
監督:溝口健二
出演:長谷川一夫、香川京子、進藤英太郎、南田洋子 他
日本の名映画女優、香川京子は、小津安二郎から溝口健二、黒澤明まで日本映画界の巨匠たちと仕事をしてきた。本年度の東京国際映画祭の目玉として、1954年の出演作『近松物語』をニュープリントとして復刻上映。現代に蘇った、悲しい恋の物語。


WORLD CINEMA
サブマリン
監督:リチャード・アヨエイド
出演:クレイグ・ロバーツ、ヤスミン・ペイジ、サリー・ホーキンス 他
イギリスのテレビ番組『The IT Crowd』でおなじみのリチャード・アヨエイドが監督デビューを飾ったちょっぴりダークな青春映画は、爽やかさと想像力溢れるセンスの良さで世界中から高い評価を受けている。


アジアの風-中東パノラマ
TATSUMI
監督/プロデューサー:エリック・クー
出演:別所哲也、辰巳ヨシヒロ
シンガポール人監督エリック・クーが、日本の”劇画”漫画家、辰巳ヨシヒロの自伝的な諸作を元にアニメ化した作品。辰巳ヨシヒロ著『劇画漂流』は、20世紀の漫画史における偉大なる業績であることが証明されたような、そんな気持ちにさせられる作品。


日本映画・ある視点
トーキョードリフター
監督:松江哲明
出演:前野健太
『ライブテープ』で2009年の東京国際映画祭で”日本映画・ある視点賞”を受賞した松江哲明。本作品では、フォークシンガーの前野健太を追いかける生なドキュメンタリー作品。東日本大震災後のネオンが消えた吉祥寺の街を舞台に降りしきる雨の夜をミュージシャン・前野健太が歌い、叫び、さすらう。


コンペティション
トリシュナ
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:フリーダ・ピント、リズ・アーメッド
イギリスの文豪トマス・ハーディの名作『テス』を、マイケル・ウィンターボトム監督が大胆にインドのラジャスターンに舞台を移して映画化したこの作品は、比較的高評価を集めているようだ。『スラムドッグ$ミリオネア』のフリーダ・ピントが悲劇のヒロインを演じている。


WORLD CINEMA
ティラノサウルス
監督:パディ・コンシダイン
出演:ピーター・ミュラン、オリヴィア・コールマン、エディー・マーサン
イギリスの俳優パディ・コンシダインによる初の長編映画監督映画である本作品は、早速今年のサンダンス映画祭ワールド・シネマ監督賞(ドラマティック部門)を受賞するほど。仲間の俳優ピーター・ミュランを迎えたこの映画、怒りをコントロールできず、自己崩壊寸前の男の生々しいドラマが描かれている。


natural TIFF supported by TOYOTA
もしもぼくらが木を失ったら
監督:マーシャル・カリー
9/11の事件が起きる前から、過激な環境保護団体ELF(Earth Liberation Front)は、アメリカで”最も危険なエコテロリスト”として常に注目を集めている。
オスカー賞ノミネート監督マーシャル・カリーは、活動家ダニエル・G・マッゴーワンに焦点を当て撮り続けた本ドキュメンタリーを通して伝えようとしたのは、環境問題の光と影を美しい映像を通して伝えようとしているようだ。


コンペティション
ガザを飛ぶブタ
監督/脚本:シルヴァン・エスティバル
主演:サッソン・ガーベイ、バヤ・ベラ、ミリアム・テカイア
不浄な生き物と言われる”ブタ”の始末に困り果てた漁師の姿を通して、イスラエルとパレスチナの関係性を皮肉たっぷりの視線でコメディタッチで描き出した作品。主演は『迷子の警察音楽隊』が印象的なイスラエルの大物俳優サッソン・ガーベイ


コンペティション
キツツキと雨
監督/脚本:沖田修一
出演:役所広司、小栗旬、高良健吾
『南極料理人』の沖田修一監督が作った新作は、小栗旬が演じる若い映画監督と役所広司演じる木こりが出会い、ともに成長していくという様をコミカルに描いた作品。


アジアの風-アジア中東パノラマ
悲しき獣
監督/脚本:ナ・ホンジン
出演:ハ・ジョンウ、キム・ユンソク、チョ・ソンハ
『チェイサー』のナ・ホンジン監督が描く凶暴で息を飲むクライム・サスペンス。


アジアの風-アジア中東パノラマ
あの頃、君を追いかけた
監督:ギデンズ
出演:コー・チェントン、ミシェル・チェン、ハオ・シャオウェン
人気作家、ギデンズの甘く切ない青春ロマンティックコメディを描いた小説をもとに作られた本作は台北映画祭2011観客賞を受賞するなど、この夏の台湾で絶賛されている。


※掲載されている情報は公開当時のものです。

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