インタビュー:アラン・マッギー

クリエイション設立者が語る

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インタビュー:アラン・マッギー

アラン・マッギーなしにオアシスはありえない。この単純な方程式に対してどう感じるかは、あなた次第だ。けれど、彼がいなければ、ジーザス&メリーチェインも、プライマル・スクリームもいなかったと考えると、だんだん分かってくるはず。アランが、インディーズアーティスト達の産みの苦しみを共に味わい、誕生に立ち会い、そしておそらく怒りながらへその緒を噛みちぎっていたことが。

アーティストがこぞって契約したがった熱狂的な英国インディペンデントレーベル、クリエイション・レコーズ。その設立者としてアランはブリット・ポップシーンに先行し、そしてシーンの中心となり、10年間あまり、若者文化に多大な影響を与え続けた。オアシスのギャラガー兄弟と最長契約を結んだ男として、おそらく彼は記憶されることになるだろうが、1990年代半ばに経験したドラッグによる衰弱は、そのオアシスの成功をも脇から見守る形となった。

ダニー・オコナー監督のドキュメンタリー映画『アップサイド・ダウン:クリエイションレコーズ・ストーリー』(2010)が、SUMMER SONIC(サマーソニック)にて日本プレミアを迎える。それに合わせ、アランはSONICMANIA(ソニックマニア)でDJ出演する予定だ。その前に、タイムアウト東京では、渦中の彼にインタビューする機会を得た。彼の強いグラスゴー訛りは有名で、聞き取るのに苦労した。

この8月に『アップサイド・ダウン』の日本初公開を予定していると聞きましたが、アラン自身、これまで日本という国と何か関わりはありましたか?

マッギー:マイケル・ジャクソンに初めて会ったのが、東京ドームだった。クリエイションのソニーとの契約をが終わったばかりの頃だ。マイケルは、僕が何を言ってるのか全く分かっていなかったよ。

ドキュメンタリーでは、成功を収めたビジネスシーンではあまり用いられないような“熱狂的”と”狂った”を意味する言葉が頻繁に使われています。クリエイション・レコーズでは、誰かが、何をしてたかすべて把握していましたか。それとも感覚的にこなしていたのでしょうか。

マッギー:すばらしい曲かどうか、聴けばすぐに分かった。ビジネス上のことは、その場その場でなんとかつないだよ。経験と言える経験は誰にもなかったから、バンドのために全力を尽くしていただけだね。

『アップサイド・ダウン』が作られたきっかけは何ですか。映画が制作されるという話を聞いたとき時、驚きましたか。

マッギー:2004年にダニーに頼まれた時は断ったけど、再度2005年の時はOKしたんだ。その5年後に、ダニーが作り終えたというわけさ。とても気に入ってる。振り返ると、自分がしていることにはいつも欠点があると気づいてしまうわけだから、これは最大の褒め言葉だよ。

80年代初めと90年代半ばでは、クリエイション・レコーズは同じレーベルとは思えないほど違ってみえます。80年代初めは熱心で勢いにのっていた。90年代半ばは、膨れ上がったエルビスのようだった、幸せな時期はどちらでしたか。

マッギー:初めの頃はもっと楽しかったけど、後になればなったでお金が入ってきたから、どちらも好きだったよ。

ダメージを受けていた頃のドラッグ使用量はどのくらいでしたか。

マッギー:さあね。実は1993年は記憶にないんだ。オアシスと契約したことを除いてね。人にはよくあることだよ。成功したら狂っていく。自分は自分さ。しょうがない。

オアシスのメンバーといっしょにいながら、どのように脱ドラッグに取り組んだのですか。

マッギー:僕がドラッグをやめようとしていることについて、オアシスは特にこだわらなかったよ。昔から付き合いのあるプライマルといる時の方が、もっと大変だった。僕がドラッグを克服した後は、彼らはきっと妙な感じがしていたんじゃないかな。そんな彼らも今ではすっかりきれいになっているから、僕らはいい関係を保っているよ。

リアム・ギャラガーが言ったことで一番心に残る言葉は何ですか。

マッギー:一度、「僕らはオアシスで、あなたはクリエイション。だからこれはなるべくしてなったことなんだ」と言われたことがある。それについて考えたとき、思慮深い言葉だと思った。“すべては前もって定められている”だね。

サマーソニックでビーディー・アイを見に行きますか。

マッギー:もちろん!大好きだからね。世間は、リアムとバンドに批判的だけど、とてもよくできたアルバムだったから僕は見に行くよ。

イギリス首相官邸へ行った時、ミック・ハックナルの面倒を見るように頼まれたと発言したことがありますね。ミック・ハックナルはトラブルメーカーですか。政治の世界では、彼は信用されてないのですか?

マッギー:彼はアホだよ。歌は本当に上手いけど、人として大ばか者だ。

2011年にクリエイション・レコーズを始めることを想像できますか。今の音楽業界は、アラン・マッギーのようなキャラクターを受け入れることができると思いますか。

マッギー:できないだろうね。音楽業界にとって、僕は本物の変わり種。たぶん、これまでもそうだったんだろうけど、50才の今も、現代の音楽業界にとって、僕が特異すぎることは分かるよ。

今どき一体全体誰が、音楽で利益をあげられるのでしょう?

マッギー:プライマルのように大きなコンサートでもしない限り難しいだろう。CDで稼ぐなんて考えられない。

今思い返してみて、最も失敗したバンドはどれでしたか。

マッギー:何に対しても後悔はない。人生とは前へ進むことで、後ろ向きになることじゃない。

ドキュメンタリー映画になっていない、クリエイションの型破りな話を教えて下さい。

マッギー:正直に言うと、無数にあるよ。だけど公になったら僕が殺されてしまう話もあるから、ごめん、この質問は…パス。

世界の終りまであと10分しかありません。どんな曲をかけますか。

マッギー:ビートルズの『ヘイ・ジュード』か『アクロス・ザ・ユニバース』になるだろう。心からビートルズが好きなんだ。きっとこれからもずっと。


アラン・マッギーは8月12日(金)のSONICMANIA(ソニックマニア)でDJの予定。映画『アップサイド・ダウン』は、8月13日(土)の夜、SUMMER SONIC(サマーソニック)で公開される。

Interview by ジョン・ウィルクス
翻訳 ウィルクス 恵美
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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