インタビュー:三池崇史

『十三人の刺客』のDVD発売を控える日本映画界のレジェンドが語る

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インタビュー:三池崇史

Takashi Miike on the set of '13 Assassins'. Photo courtesy of Magnet Release

三池崇史は1991年から1年に3作品のペースで映画を撮り続けている、世界でも数少ない多作の映画監督だ。同監督の名は、1999年のホラー映画『オーディション』の衝撃と、暴力的な漫画を原作にした『殺し屋1』で一気に世界へと知れわたった。だが三池は、特定のジャンルや観客に縛り付けられることを好まない。最新作の時代劇『十三人の刺客』は名誉ある2010年ベネチア映画祭でワールドプレミア上映を行った。次作『切腹』はカンヌ国際映画祭に正式出品されることが決定している。

『十三人の刺客』は1963年の工藤栄一監督の同タイトル作のリメイクです。最初に観たときのことを覚えていますか?

三池 : 映画が公開された当時はまだ3歳だったので観なかったんですが、時代劇ファンの中ではいまだに人気がある作品。リメイクを撮ることが決定したとき、初めてオリジナルを観ました。当時の日本映画界のエネルギーと力が随所に感じられて感動した。それと同時に、こうした映画を撮ることが難しくなったという現状には悲しくなりましたね。僕の撮影が始まった時、スタントの馬はいなかったし、13人の刺客役のうち半数以上は刀さえ握ったことがなかったから。

ご自身を侍物語の専門家だと思いますか?

三池:そうは思わない。世界の映画監督に比べれば、鑑賞映画数は少ない方でしょう。金曜の夜にビール片手に映画を観るのは好きでも、仕事のために映画や、何かの参考に?そういうのはないですね。

日本の古い映画製作手法についてですが、黒澤明監督についてはどう思われますか。

三池:映画自体を古い手法で撮影して、現代的なCGIを使ったり派手な編集をしないことを大切にしています。余計な恋愛ロマンスも使いません!黒澤映画のリメイクは過去に何度も作られていますが、若い観客の心を掴む脚色は全て失敗している。『十三人の刺客』を楽しんだ若者は多かったが、彼らは普段より集中して観なければならなかったと思うよ。

『十三人の刺客』はアジア映画のチャンピオンでもある、英国人のプロデューサー、ジェレミー・トーマスとのコラボとも言えますね。

三池:ジェレミーがこの映画にとってどれだけ重要な役割だったか、言い尽くせない。彼と、最初に会ったのが、2007年に『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』を出品したベネチア国際映画祭。「あなたの映画を全て観てはいないけれど、今まで観たものはどれも最高だった。ここに、僕が所有権を持つ本がある。これで映画を撮ってみないか?」と持ちかけてきてくれたんだ。これには参ったね。なんて格好いい男なんだ!脚本や編集にも随分協力してくれたし、良きプロデューサーとして、製作を妨害する人々から守ってくれた。

勢力的に作品を発表し続けていますね。撮影と同時進行で、常に次の作品にとりかかっているのですか?

三池:次作について考え始めるのは、撮り終わってからのポスプロ作業中です。撮影中には他の作品のことを考えない。よくどのくらい撮影に時間をかけるか聞かれるけど、たいていの作品は撮影期間は2週間程度。たくさんの作品を撮るつもりはないけど、それが僕のペースだね。『十三人の刺客』以降、子供向け忍者学校を題材にしたアクション映画の『忍たま乱太郎』と、『十三人の刺客』と同様の時代劇映画『切腹』の2作品を撮っているよ。



Interview by デイヴィッド・ジェンキンス
翻訳 佐藤環
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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