(C)David Spindel
2011年08月05日 (金) 掲載
夏休みが本格化する東京の映画館で、ドキュメンタリー映画の新作が目立っている。アーティストの人生、教育や政治の現場、ささやかな日常を切り取ったもの…。ジェットコースターの様なハリウッドものやホラー映画に身を預けるのも悪くはないが、せわしない毎日だからこそ、たまの休みはじっくりと映画と向き合いたいという人が増えているのかもしれない。そんな、“終わった後に誰かと語り合いたくなる”ドキュメンタリー映画をご紹介。
ジョン・レノンの永遠のパートナー、オノ・ヨーコ監修による、一人の男“ジョン・レノン”の人生を完全収録した決定版。ビートルズを休止し、ヨーコと出会って加速するジョンの人生の幕開けとして映像は語り始められる。イギリスで熱狂的なファンからの人気に疲れた彼は、当時ウォーホルやヨーコたちが住む、芸術の中心だった1970年代のNYに安住の地を見出す。アイドルのアイコン“ビートルズ”だった彼が、ベトナム戦争、ニクソン政権、FBIなどに抵抗するフリーダムの象徴へ、そしてヨーコとの別離による自分探しの時代、そして見つけた家族との優しい時代をどの様に迎え、受け入れていくのか。これまで観ることの出来なかったジョン・レノンがそこにはある。
「逃亡者になるのってロマンを感じる」(オノ・ヨーコ)
「テレビや音楽の媒体を支配するのは、若者を動かすのに必要」(ジョン・レノン)
そんな若き日の2人の言葉はどんな政治家の言葉よりも心に響き、こんな時代に生まれたかったと思わせてくれる。映画館を出た後、あなたは誰の顔を思い出すだろうか。
『ジョン・レノン,ニューヨーク』
8月13日、東京都写真美術館ホールほか全国順次公開
(C) 2010 Two Lefts Don't Make A Right Productions, Dakota Group, Ltd. and WNET.ORG
1992年、リオデジャネイロで開催された地球サミットで、12歳の少女が環境破壊を訴えるスピーチ(www.youtube.com/watch?v=XjlUyVnDGIA)を行った「どうやってなおすのかわからないものを、壊し続けるのはやめてください」。それから20年。少女だったセヴァン・スズキは間もなく母になろうとし、今も未来の子供たちのために発言を続けている。そしてセヴァンの住むカナダから、日本、フランスと、世界中で地球との関わり方を考え続けている人たちの姿にカメラは向けられる。
セヴァンが住むカナダのハイダグワイ島では、空の王であるワシがワタリガラスに先を譲る光景を見ることが出来るという。その2つを部族の象徴とするハイダ族の父を持つセヴァンは、自然界の本能的なバランスを生まれながらにして身につけているのだろう。
世界の食料事情をドキュメントした『未来の食卓』の、ジャン=ポール・ジョー監督による日本公開2作目。日本やフランスの原発問題に真っ正面 から取り組む人々の姿も映し出され、3.11の悲劇を経験した私達にとって、この映画の重さは明らかに変わってしまった。環境問題に対して高い意識を持つ欧米諸国を、人ごとの様に見ていられるぬるい時期は、日本はもうとっくに過ぎている。スクリーンに映し出される美しい景色とは対照的に、その脆さを危惧する人々の言葉が心に刺さる。夏休みの間に、大切な人と話し合ってほしい1本。
『セヴァンの地球のなおし方』
東京都写真美術館、渋谷アップリンクほか全国順次公開
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