インタビュー:JJ・エイブラムス

『SUPER8 / スーパーエイト』監督が、映画の秘密やスピルバーグの魅力、アマチュア映画づくりについて語る

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インタビュー:J・J・エイブラムス

1970年代後半、安っぽいカメラで映画を撮りながら、小さな町を走り回る少年グループがいた。突然、貨物列車が事故を起こし、乗っていた“何か”(エイリアン?科学実験の失敗?ドラマ『ロスト』の白熊?)が夜の闇に逃げ出した。J・J・エイブラムスが監督した『SUPER8 / スーパーエイト』の予告篇で明らかにされるのは以上だ。しかも、この秘密主義の夏の大型作品については、他にはほとんど知らされていない。制作サイドは必要最低限の情報しか流さないように細心の注意を払っている。タイムアウトスタッフは、少しでも何か探れないかとエイブラムスに電話インタビューを試みた。

重要な部分のネタバレをしない程度に、『SUPER8/スーパーエイト』について何か教えてくれますか。

J・J・エイブラムス:(用心しながら)どんなことが知りたいんだい?

この作品は70年代後半から80年代初頭のスティーブン・スピルバーグ作品と比較されるようなSFアクション映画だということでいいですか?

J・J・エイブラムス:ああ、確実にSF映画の要素はあるよ。子ども達と空想的なモノとの出会いを描く映画を作るときに、スピルバーグが脚本や監督、プロデューサーとして手がけた作品を思い起こさせないことは無理だと思う。彼の作品とこの映画との間には、共通のDNAが多数存在しているよ。僕は、以前からモンスター映画を作りたいと思っていた。そしてその時、子ども達の成長物語を計画していて、その2つのアイデアが融合しはじめたというわけさ。それがこの映画ができた本当のきっかけだよ。映画を作ってみたいと思う思春期前の少年達が、庭に集まって粗雑な8ミリ映画を作っているという、少々変わっていて、オタク的な設定にしたのは、僕だ。…僕もそんな感じだったんだ!(笑)

あなたもそんな少年の1人だったのですか?

J・J・エイブラムス:そうだよ!実は、マット・リーヴス(『クローバーフィールド / HAKAISHA』監督)やブライアン・バーク(『LOST』製作総指揮)に出会ったのも、スーパー8映画祭だったんだ。子どもの頃、僕たちは全く同じような映画づくりの経験があったんだ。分かるだろう?「その木の後ろからジャンプしろ!」っていう程度の時に、友達にもっと真剣にやってもらおうと必死になったりしてさ。(笑)当時、野心は限界を超えていたよ。ほとんどの子ども達が外でスポーツに興じている頃、僕はカメラで馬鹿なミニ作品をいくつも作っていた。

そういった家にあったカメラは、たくさんの人に“初めての映画づくり”を経験させていたのですね。

J・J・エイブラムス:そのとおり!初めてカメラを扱うことよりも、限られた環境でどうやって問題を解決するかを学んでいくことの方が大事だったね。「どうやったら、本物の宇宙船の墜落のように見えるか?ストップモーション機能がないなら、どうやってこの怪物を動かそう?」そうやって、夏休みを次から次とアマチュア映画作りに捧げた頃に得た“低予算・低技術の問題解決能力”は、僕が携わったどの映画にも活用されていることに気づくよ。特に今作ではね。出演する少年達を通して、僕の人生の“その時代”に戻ったこと。これが、今回の映画作りでの最大の面白さだった。たぶんスティーブンも同じように感じたと思うよ。

スピルバーグが作品の中で魅せ続けた“驚くこと”への回帰を、この映画の予告編は提案しています。ここ5~10年のヒット映画に、その点が欠けていると感じていますか。

J・J・エイブラムス:いくつかの映画ではその点はしっかりと捉えられていると思う。『インセプション』の最大の魅力は、その作られた空想の舞台を観ることではなくて、エレン・ペイジ演じるキャラクターがどのようにその世界に反応しているかを観ることだ。彼女は心から圧倒されている!平凡な人々に非日常的なことが起きる映画を作ることはまだ可能だと思うし、いくつかの映画はそれを見事に見せてくれていると思う。映画は今でも、信じがたいことも美しくスリルがあることのように映し出せると主張したいね。

ことあるごとに、インターネット上に映画の詳細が載せられてしまう時代、どのようにしてこのプロジェクトを非公開で通してきましたか。映画を見に行く大事な理由が、ストーリーへの関心だった日々をなつかしく思いますか。

J・J・エイブラムス:僕にとって、予告編の大きな楽しみは、何の映画が作られたのか近日公開予告を映画館で見るまで知り得なかったところで、実際の映画を観るまでその内容へあれこれ思いを巡らせることにあった。今は「ああ、そうだ、それはネットのメイキング写真のページに出てた。テレビの特集で見たから、ああなるって知ってた」となる。映画について多くの情報にさらされ、観る前に“観てしまっている”というような状態になっている。作品についての“静寂”を貫く方法は、制作時は映画について何も公開しないことだ。制作過程を、ことあるごとにツイートしないこと。台本は、自分と必要最低限の人間にしか見せないこと。実にシンプルで単純なことだよ。非公開にしておけば、映画について語られた時、人は身を乗り出すように興味を持つだろう。すでにありあまる情報であふれている場合、人は引いてしまうんだ。公開前に、映画への興味を減らす必要はないよ。

誰も知らない映画を売ることは、よりプレッシャーがありますか。もしくは、『スタートレック』のような映画と比べるとプレッシャーも少ないですか。

J・J・エイブラムス:『スタートレック』や『ミッション:インポッシブル』のような映画の方がプレッシャーが少し強いけど、ブランドがあっても、知られてない作品でも、根本的なプレッシャーは同じだ。それはつまりこういうことだよ。「ああ、どうか、しくじらないように!」(笑)。だけど、タイトルから何も想起するものがない場合は、人々を劇場に呼び込むのは少し難しくなる。「スーパー8?ヒーローものの映画?」本当に、タイトルは無意味さ。それが8ミリフィルムのことを指していると分かっていたとしてもね。すばらしい俳優達が演じているが、有名人ではないし、役やストーリーも前からあるものは全く使っていない。ここには、単なる連想から興味を起こさせるようなものは何もない。

とりあえず、あなたの名前がありますね。それに今は実績もある。

J・J・エイブラムス:ああ、だがそれは違う。僕の名前が、真に呼び物だとは言えないよ。スティーブンの名前なら断然そうだろう。スティーブン・スピルバーグが関わってるからとか、どんな理由でもいいから、みんながこの映画を見に行く理由を見つけてくれるよう祈っているよ。他に監督した2本の映画では、トム・クルーズや『スタートレック』といった人々が劇場に足を運ぶ理由となる大きな名前があったから幸運だった。今回のは少し大変。スーパー8と聞いて、モーテルの映画だろうと思う人がきっと大勢いるだろうね(笑)。

最後の質問です。47という数字は、あなたの作品の中でよく出てきますね。今回もきっと…?

J・J・エイブラムス:ああ、そうそう!47をどこかに入れたと思うよ…ちょっと待って。(台本をめくる音)あった、今回の映画にも出てくることは確かだ。どこで出るか一瞬忘れていたんだけど、最後のエンドロールの前までには必ず出てくるはずだ。

実際に何かを確証してくれましたね!

J・J・エイブラムス:だけど、誰にも言わないだろう?(笑)


SUPER8 / スーパーエイト』6月24日から公開中

By デヴィッド・フィアー
翻訳 ウィルクス 恵美
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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