この夏、観るべき映画 5

『エッセンシャル・キリング』『未来を生きる君たちへ』『ちいさな哲学者たち』ほか

この夏、観るべき映画 5

エッセンシャル・キリング

『エッセンシャル・キリング』


かつてジャン=リュック・ゴダールに「君と僕こそ世界一の映画監督だ」と絶賛されたポーランド映画の鬼才、イエジー・スコリモフスキー。昨年日本公開された17年振りの復活作『アンナと過ごした四日間』が絶賛されるなか、早くも新作が登場。今回主役を演じるのはヴィンセント・ギャロ。アフガニスタンでアメリカ軍に捕まったゲリラ兵が、東欧の収容所に運ばれていく途中に脱走して雪山を逃亡するという物語だ。ギャロは酷寒の雪山を裸足で走りまわり、アリを食べ、過酷なサヴァイヴァルを体当たりで演じて、ヴェネチア国際映画祭で主演男優賞を受賞した。

公開:7月30日(土)
劇場:渋谷シアター・イメージフォーラム ほか全国順次公開
出演:ヴィンセント・ギャロ、エマニュエル・セニエ、ザック・コーエン
監督・製作・脚本:イエジー・スコリモフスキ
ウェブ:www.eiganokuni.com/EK/
ツイッター:twitter.com/EKskolimowski


『未来を生きる君たちへ』

(C)Zentropa Entertainments16


デンマークの郊外の街で、ひどいイジメにあっている少年エリアスと、アフリカでボランティアの医師として働くエリアスの父親アントン。まったく違う世界で暮らす二人が、それぞれに直面する深刻な問題。理不尽な暴力に対して人はどんな風に立ち向かえばいいのか……?そんな大きなテーマを、家族という小さな社会を通じて力強く描き出したのは、デンマーク映画界を代表するスサンネ・ビア監督。二つの物語を巧みに絡めたストーリーテリングと緊張感に満ちた演出が高い評価を受けた本作は、アカデミー賞とゴールデングローブ賞の外国映画賞を受賞した。

公開:8月13日(土)
劇場:TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館、シネマライズ ほか全国ロードショー
出演:ミカエル・パーシュブラント、トリーネ・ディアホルム、ウルリッヒ・トムセン
監督:スサンネ・ビア
ウェブ:www.mirai-ikiru.jp/


『人生ここにあり!』

(c) 2008 RIZZOLI FILM


1978年以来、国内から精神病院が撤廃されたイタリア。普通の生活を送ることが治療に良いと判断されたからだが、そんななか、患者たちだけで始めた会社があった。本作はそんな驚きの事実をドラマ化した物語。無気力な日々を送っていた患者たちは、労働組合から派遣されたネッロに薦められて建築現場で力仕事に挑戦。すると、統合失調症のジョージとルカが思わぬ才能を発揮する。お金、恋愛、セックス……様々な問題にぶつかりながら患者たちが自立していく様子が、イタリア映画らしい温かなコメディに仕上げられている。ふだん社会から隠されがちな患者たちを堂々と主人公に据えた本作は、本国で大ヒットを記録した。

公開:7月23日(土)
劇場:シネスイッチ銀座 ほか全国順次ロードショー
出演:クラウディオ・ビジオ、アニータ・カプリオーリ、ジュゼッペ・バッティストン、ジョルジョ・コランジューリ
監督:ジュリオ・マンフレドニア
ウェブ:jinsei-koko.com/


『Peace』

(c)2010 Laboratory X, Inc.


下調べもせず、脚本も描かない。ただひたすら対象を見つけ続ける“観察映画”という独自の手法で、ドキュメンタリー映画に新しい可能性を見出した想田和弘監督の最新作。監督の奥さんの実家に住み着いた野良猫た ち、障害者や高齢者を車で送り迎えする福祉事業をやっている義父と義母、彼らがボランティア同然で面倒を見ている91歳の独居老人、それぞれの日常を静かに見つめた映像からは、寄り添って生きることの難しさや大切さ、そして平和の意味がしみじみと伝わってくる。メッセージを受け取るのではなく、観客それぞれに感じて考えるドキュメンタリー。

公開:7月16日(土)
劇場:シアター・イメージフォーラム ほか全国順次公開
監督・製作・撮影・編集:想田和弘
ウェブ:peace-movie.com/


『ちいさな哲学者たち』

(c) Ciel de Paris productions 2010


2006年、フランスの幼稚園で、世界で初めての試みが行われた。それは3歳の幼稚園児に哲学を教えるというもの。子供たちは輪になって、先生の問いかける様々なテーマに小さな頭をフル稼働して考える。本作は、そんなユニークな授業の様子を追いかけたドキュメンタリー。例えば「愛ってなあに?」と訊かれたら、あなたはどんな風に答えるだろう。ある子供は「おなかがくすぐったくなる」らしい。「魂ってなあに?」と訊かれて「目に見えなくて青いもの」と答える子供もいる。子供たちの自由な発想や、大人たちを見つめる観察力の鋭さに驚かされながら、考えることの大切さや楽しさに気付かせてくれる作品だ。

公開:7月9日(土)
劇場:新宿武蔵野館 ほか、全国ロードショー
出演:パスカリーヌ・ドリアニ先生、幼稚園の園児たち
監督:ジャン=ピエール・ポッツィ、ピエール・バルジエ
ウェブ:tetsugaku-movie.com/

テキスト 村尾泰郎
※掲載されている情報は公開当時のものです。

この記事へのつぶやき

コメント

Copyright © 2014 Time Out Tokyo