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2011年07月19日 (火) 掲載
台風よりいち早く、最も危険な映画がオランダから東京に上陸した。ドイツ郊外の山奥に迷い込んだ若者たちが、マッドサイエンティストのヨーゼフ博士によって"あるもの"へと人体改造されてしまう…。そんな最狂の悪夢にも関わらず、映画自体はある美学の筋が通っているような印象を受ける。サバービアへの畏怖が醸す「山で道に迷った若者がマッドサイエンティストの餌食になる」というあるひとつの映画の方程式が、衝撃を与えつつも観客を最後まで導いているのかもしれない。また細部の美術に、博士が異常に執着する「連結美」が徹底されているところもポイントのひとつ。美しく長く連なった構造のアトリエ、くねくねとのぼる螺旋式階段、ムカデの脚の様な長いテーブル、ムカデの節の様になめらかに自動開閉するプールの蓋…。そして「ムカデ人間」の存在が、この館を完成させる最後のピースとして誕生する。そんな『ムカデ人間』の頭部分に選ばれたのは、北村昭博扮する関西弁のヤクザ、カツローだった。
高知県に生まれた北村は、高校卒業後に渡米し、ビバリーヒルズ・プレイハウスで演劇と監督術を5年間武者修行を経験した。その後インディーズを含めた数々の映画に携わり、現在はハリウッドで活躍する、数少ない日本人俳優の一人。最近では『HEROES ファイナルシーズン』でタダシ役としても出演している。今作では「ムカデ人間」たちの結合部分に穿かされた白いパンツが、北村の体を通すとまるで日本人の象徴でもある「ふんどし」のようでとても美しく、悲惨な状況を一瞬忘れさせてくれたのが印象的だった。オランダ人のトム・シックス監督が北村を選んだ理由も、もしかしたらそんなところにあったのかもしれない。そんな北村が「日本人」としての心身をフルに使って世界に挑む現場について語ってくれた。
ハリウッドやヨーロッパなど欧米で活動するとき、日本人という身体的・精神的特徴はどのように働くと思いますか。
北村:『ムカデ人間』においては、僕と後ろの女の子たちの体の大きさがそこまで違わないということが重要でした。四つん這いになった時に、あまりにサイズが違い過ぎていると辛いですからね。僕は日本人であるということに誇りを持っているので、海外の作品に出るときは、 いつも日本人としての個性を出そうと思っています。それが世界で勝負する武器になりますから。
高知、ロス、オランダと比べて、震災後である今の東京の街はどんな印象でしたか。
北村:僕的には1年前に東京へ来たときと、そこまで変わらないような印象を受けました。僕は渋谷にいつも滞在しているのですが、渋谷はまだ明るかったですね。
関西弁を使った意図について教えてください。
北村:僕は関西弁を恐怖に対する虚勢のために使いました。僕のキャラクターは実は高知出身で、大阪に出て来てヤクザになったのですがその道で成功することができずに、ドイツに飛ばされたという設定なのです。だから、彼の中でも、虚勢を張る時に関西弁を使うことが多かったのです。でも、実はあのベッドの上のシーンで、弱気になった時に、高知弁を使っているところがあるのですよ。博士が絵で説明する手術のプランに対して、「何言いゆうがなや。そんなこと許されると思っちゅうがかや?」ってところです。そこが、彼の素であり弱さが出ていた場面です。監督は関西弁については、あまり理解をしていなかったと思います(笑)。でも、関西弁を使うことでキャラに味が出て来るので、それは監督もわかっていたと思いますよ。
北村さんが思う、ホラー映画で欠かせない法則とは何だと思いますか。
北村:僕はホラー映画で欠かせない要素として、観客に「ええ?マジかよ!?うわー!」と思わせる何かが必要なのではないかと思います。それがないホラー映画は、面白くないですよね。何らかの衝撃を受けたいですもの。
北村さん自身、あえて言うと「●●フェチ」でしょうか。
北村:僕はけっこうMなので、女王様的な態度をされると、足にひざまずきます(笑)。
製作秘話、撮影中に印象的だったことをお聞かせください。
北村:食事にお米が出た時に僕があまりに嬉しがったのでそれから毎日お米を出してくれたのには感動しました。プロデューサーの心配りです。ある意味、僕の熱演はあの米のおかげですね!あと、オランダ人がフライドポテトにマヨネーズをぶっかけて食べるのには、ビックリしましたね。
今後のご予定について教えてください。
北村:スゴイ作品で日本映画デビューをするので、楽しみにしていてください!
監督・脚本:トム・シックス
出演:ディーター・ラーザー / 北村昭博 / アシュリー・C・ウィリアムス / アシュリン・イェニー
2009 / オランダ・イギリス合作 / 英語 / 90分 / カラー / HD / ステレオ / R-15
公式HP:http://mukade-ningen.com
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