2010年12月01日 (水) 掲載
2009年のカンヌ国際映画祭はとても豪華な顔ぶれだった。ケン・ローチ、ラース・フォン・トリアー、クエンティン・タランティーノ、ペドロ・アルモドバル、ジェーン・カンピオン、アン・リーなど、歴代パルムドール受賞監督を含む名監督の新作が並んだ。その並みいる巨匠たちの新作を抑え、見事最高賞に輝いたのは、ミヒャエル・ハケネ監督の『白いリボン』。これまで高い評価を受けながらも、人間の心に潜む闇の部分をえぐり出す作風で意見が二分されてきたハネケ監督だが、監督初となる今回のモノクロ作品は、圧倒的な映像美に世界の映画祭が沸いた注目の1本だ。
舞台は第一次世界大戦前の北ドイツにある小さな村。大地主の男爵を中心に奇妙な事件が続く。はじまりはドクターの落馬事故で、誰かが仕掛けた針金に馬の足がひっかかったのが原因だった。続いて、小作人の妻の転落死、男爵家の火事、荒らされたキャベツ畑、障害児の失踪。誰の仕業なのか、村人皆が不信感を募らせる。やがて連なる“罰”の儀式。何かが少しずつ、村の空気を変えていく。
犯人は誰なのか。この映画では謎解きは重要ではない。教会や学校のもとでプロテスタントの教えを忠実に守りながら静かに暮らす村人たちが、教育や躾として子どもたちを鞭で打ち、“純真無垢の証”として白いリボンを巻く。その一方で、村で起きた事件に疑心暗鬼になり、悪意や嘘、暴力にまみれた大人たちの姿を見て、子どもたちは無口になっていく。やがて来るナチスドイツの時代を作ったのは、この時代の子どもたちだ。今作でハネケ監督は“厳格な教育”の中のいったい何が、人間の意志を放棄させてしまうのか。そして憎しみを生むのか。人間がイデオロギーに従うのはなぜか。そんなメッセージを美しい映像に散りばめている。
公開:2010年12月4日(土)
監督:ミヒャエル・ハネケ
キャスト:クリスティアン・フリーデル、レオニー・ベネシュ、ウルリッヒ・トゥクール、フィオン・ムーテルト、ミヒャエル・クランツ、ブルクハルト・クラウスナーほか
公式サイト:www.shiroi-ribon.com/
完璧なはずの結婚に問題がひとつ。夫の職業がスパイだということ。ジェンは失恋の傷を癒すためバカンスに出る。そこでパーフェクトな男性スペンサーと出会い、2人は恋に落ちる。美しいリゾート地で夢のような毎日を過ごし、2人はそのままゴールイン。しかし、優しい夫との甘い新婚生活は一変する。スペンサーは元CIAの凄腕スパイだった。彼の命を狙う敵を相手にジェンも銃を手に戦うはめに。ラブストーリーの名手、『キューティ・ブロンド』のロバート・ルケティックが、新ラブコメの女王、キャサリン・ハイグルとアシュトン・カッチャーを迎えて贈る、クリスマスにぴったりなデートムービー。
日本公開:2010年12月3日(金)
監督:ロバート・ルケティック
キャスト:キャサリン・ハイグル、アシュトン・カッチャーほか
公式サイト:kisskill.gaga.ne.jp/
2034年、世界中の人々はある“ゲーム”に熱狂していた。それは「脳を操られた囚人による究極のバトル」。天才クリエーターが開発したオンラインゲームでは、脳細胞手術を受けた生身の人間がプレイヤーに遠隔操作され、今日も激しい戦闘を繰り広げている。無実の罪で投獄されている主人公のケーブルは「30回勝てば釈放」という条件にあと1回と迫り、世界中から注目を集めていた。ケーブルのプレイヤーはなんと17歳の高校生。だが、愛する妻と娘に再会するため、“ゲーム”の世界から自分ひとりの力で抜け出し、最後の戦いに挑んでゆく。『300』『オペラ座の怪人』のジェラルド・バトラーが肉体を鍛え直し、気持ちいいほどマシンガンをぶっ放す新感覚のサバイバルアクション映画。
日本公開:2010年12月3日(金)
監督:ネヴェルダイン&テイラー
キャスト:ジェラルド・バトラーほか
公式サイト:gamer-movie.tv/
アルコール病棟での壮絶な入院生活をユーモラスに描いた、鴨志田穣の自伝的小説の映画化。戦場カメラマンの塚原安行と人気漫画家の園田由紀の2人は結婚し、子どもにも恵まれたが、安行のアルコール依存症が原因で離婚していた。繰り返す吐血、入院、そして暴力。どうしても断酒できず、自身も家族も疲れ果てていた。とうとうアルコール病棟に入院。そこで出会った個性的な入院患者たちとの生活や、医者との会話は不思議な安堵感を与えてくれた。家族の支えもあり、体力も心も次第に回復してゆくが、安行の体はもうひとつの大きな病気をかかえていた。どん底の中で、家族という心の居場所をみつけ、希望を見いだしていく感動作。
公開:2010年12月4日(土)
監督・脚本・編集:東陽一
キャスト:浅野忠信、永作博美、市川実日子、利重剛、藤岡洋介、森くれあ、高田聖子、柊瑠美、北見敏之、螢雪次郎、光石研、香山美子ほか
公式サイト:yoisame.jp/
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