映画へ行こう10/1、2公開作品

2009年のヴェネチア国際映画祭を皮切りに、世界中の映画祭で熱狂を巻き起こした映画『シングルマン』。映画初監督にもかかわらず、ここまで高く評価されたのには、監督の人並み外れた感性の塊が映画全編に映し出されているからだ。その新人監督は、老舗でありながらも勢いを失いつつあったグッチ、イヴ・サンローランのクリエイティブディレクターを歴任、見事再生に成功し、そして自身の名前を冠したブランドを立ち上げた、ファッション界のカリスマ、トム・フォードだ。

主人公ジョージを演じるのはコリン・ファース。16年間共に暮らしたパートナーが交通事故で亡くなってから8ヶ月が経ち、日に日に深くなる孤独感、悲しみにさいなまれ、ジョージは自らの手で人生を終わらせようと決意する。ところが、今日が最後だと思うと、少しずつ世の中の見方も変わってくるものだ。大学の講義は熱が入り、うんざりしていた隣家の少女との会話には、自然と笑みがわく。そして、遺書を片手にかつての恋人チャーリーを尋ねると、相変わらず身勝手な彼女に振り回されながらも慰められた。過去に生きてきたジョージの瞳に、小さな光が見えてくる。

映画は冒頭のシーンからスタイリッシュな映像が続き、瞬きするのを忘れるほどだ。出演者の衣装からはじまり、部屋のファニチャーひとつとってもスタイリッシュ。ひとコマごとに、そこに映し出される色味や影のバランスさえも計算しているかのようだ。ファッションデザイナーが作る映画ゆえにそういった部分にばかり目がいってしまいがちだが、スローモーションで事故の映像とほかの友人たちの笑顔をコラージュするあたりなどは、主人公の喪失感がより強く感じられる素晴らしい演出だ。

さらに、主人公ジョージを演じたコリン・ファース、かつての恋人チャーリーを演じたジュリアン・ムーア、このハリウッドを代表する2人のスターが、セリフでは表現できない孤独や不安からの慟哭、そして静かに訪れる幸福までを見事に演じきっている。現代を生きる者たちが抱える孤独や喪失感。物資では決して埋めることができない虚しさ。それを乗り越えるためのひとつのヒントを与えてくれる作品だ。

シングルマン

公開：2010年10月2日（土）
監督・脚本・製作：トム・フォード
キャスト：コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、マシュー・グード、ニコラス・ホルト、ジョン・コルタジョレナほか
配給：ギャガ
ウェブ：singleman.gaga.ne.jp/

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大奥

男だけを襲う謎の疫病がまん延する江戸、徳川時代が舞台。ひとりの女将軍に3000人の美しき男たちが仕える女人禁制の男の園、という斬新な設定の時代劇だ。美しき男の園となった大奥に渦巻く、野望、悲哀、嫉妬、策略、そして愛。第13回手塚治虫文化賞を受賞したよしながふみの人気コミックをもとに『木更津キャッツアイ』×『雨あがる』の製作チームが放つ誰もみたことのない歴史絵巻。

公開：2010年10月1日（金）
監督：金子文紀
キャスト：二宮和也、柴咲コウ、堀北真希、大倉忠義、中村蒼、玉木宏（特別出演）、倍賞美津子、竹脇無我、和久井映見、阿部サダヲ、佐々木蔵之介ほか
配給：松竹　アスミック・エース
ウェブ：ohoku.jp/

ガフールの伝説

フクロウの世界を舞台に冒険と戦いを描いたキャスリン・ラスキーのファンタジー小説『ガフールの勇者たち』を、『300（スリーハンドレッド）』『ウォッチメン』のザック・スナイダー監督が映画化。アニメーション映画は初の挑戦となる。世界征服をたくらむ悪の組織から王国を救おうとする若きフクロウたちの戦いを壮大なスケールで描く。3Dで観るフクロウたちの質感、大空を自由に飛ぶシーンなどは幻想的で圧巻。

日本公開：2010年10月1日（金）
監督：ザック・スナイダー
キャスト：ジム・スタージェス、ライアン・クワンテン、アビー・コーニッシュ、ヘレン・ミレン、ヒューゴ・ウィーヴィング、ジェフリー・ラッシュ、サム・ニールほか
配給：ワーナー・ブラザース映画
ウェブ：www.gahoole.jp/

スープ・オペラ

阿川佐和子の同名小説をもとにした、35歳の女性がひょんなことから2人の男と共同生活を始めることになるファンタジックな人間ドラマ。主人公のルイを演じるのは、『ノン子36歳（家事手伝い）』など、近年難しい役どころに挑戦している坂井真紀。怪しげな初老の画家トニーを藤竜也、いつも笑顔の雑誌編集者見習い、康介を西島隆弘が演じる。映画の中に登場するたくさんの料理も見どころのひとつ。

公開：2010年10月2日（土）
監督：瀧本智行
キャスト坂井真紀、西島隆弘、藤竜也、加賀まりこ、平泉成、荻原聖人、鈴木砂羽、田山涼成ほか
配給：プレノンアッシュ
ウェブ：www.soup-opera.jp/