映画『トム・アット・ザ・ファーム』レビュー

積み重なる嘘と暴力、そして愛。

© 2013 - 8290849 Canada INC. (une filiale de MIFILIFIMS Inc.) MK2 FILMS / ARTE France Cinéma
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『トム・アット・ザ・ファーム』タイムアウトレビュー

現在25歳のフランス系カナダ人映画監督グザヴィエ・ドランは、映画『マイ・マザー』、『胸騒ぎの恋人』、『わたしはロランス』といった作品により、国際的にレズビアン、ゲイ映画界での地位を築いた。これらの作品は、スタイリッシュに、アイデンティティや欲望、情熱的に生きる事の重要さを伝えていた。ミシェル・マルク・ブシャールの戯曲をベースにした 今作『トム・アット・ザ・ファーム』 は、今までの作品とは異なる印象を持った。

コピーライターとして働く主人公トム(グザヴィエ・ドラン)は、亡くなった恋人ギョームの葬儀に出るため、カナダのケベック州の片田舎の農場へ向かう。保守的で閉鎖感のあるこの村で育ったトムのパートナーは、家族にはもちろんゲイであることを伝えていなかった。その家族というのが一筋縄でいかず、兄のフランシス (ピエール=イヴ・カルディナル)は、不機嫌でふさぎがちな気取り屋で、母親のアガット (リズ・ロワ)は冷淡さとはかなさの間で揺れている。この孤立した農場でトムの滞在が長引く中、なぜ恋人がこの村から出ていったのかが暴かれ、トムが暴力とエロスに捉えられていく様を、ヒッチコック調のサスペンスのようにじわじわと描き出していく。

緊張感に溢れ、気味が悪く、セクシーで、目が離せない映画だ。ドランが焦点を当てたのは、相手や自分自身に対する、愛の限界を試そうとする人々なのだ。

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『トム・アット・ザ・ファーム』

2014年10月25日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開
監督・脚本・編集・衣装:グザヴィエ・ドラン
原作・脚本:ミシェル・マルク・ブシャール
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演:グザヴィエ・ドラン、ピエール=イヴ・カルディナル、リズ・ロワ、エヴリーヌ・ブロシュほか
配給・宣伝:アップリンク 特別協力:ケベック州政府在日事務所 後援:カナダ大使館
© 2013 - 8290849 Canada INC. (une filiale de MIFILIFIMS Inc.) MK2 FILMS / ARTE France Cinéma

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翻訳 平塚 真里
テキスト ベン・ウォルターズ
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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