映画『ヒステリア』レビュー

ヴィクトリア朝時代の実話に基づく、女性のための大人のおもちゃ誕生秘話

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映画『ヒステリア』レビュー

© 2010 Hysteria Films Limited, Arte France Cinema and By Alternative Pictures S.A.R.L.

『ヒステリア』タイムアウトレビュー



「マーチャント・アイボリー(ハワーズ・エンドや、日の名残を手掛けたプロダクション)がリチャード・カーティス(ブリジット・ジョーンズの日記をはじめとするラブコメを多く手掛ける脚本家)に出会ったような映画ね」。ヴィクトリア朝時代のロンドンで偶然発明されたという電動バイブレーターについて取り上げたこの映画について、監督のターニャ・ウェクスラーはそう表現した。

この作品は、セックスにまつわるトピックに英国式ティータイムのフレーバーを混ぜたような、ドタバタ仕立ての映画だ。察するところ、ヒュー・グラントをキャスティングできなかったようだが、彼に代わってヒュー・ダンシー(ブラック・ホーク・ダウン)が、主役の若き医師モーティマー・グランヴィルを演じている。ダンシー演ずるグランヴィルが、女性のもっともデリケートな部分をマッサージするという“特別な”医療を手がけるジョナサン・プライス医師のもとで働くという筋書きだ。念のため言っておくと、このマッサージは快楽のためのものではなく、当時のロンドンに蔓延していた女性のヒステリー症状(もちろん現代でも蔓延しているけれど!)を治療するためのマッサージのこと。

物語はグランヴィルがマッサージのしすぎによって腱鞘炎を患うまでは順調に進んでゆくのだが、患者を満足させられなくなった途端に壁にぶち当たる。その打開策として、現代のバイブレーターのひな形とも言える電動式の最新機械装置を取り入れたビジネスを立ち上げるのだが……。

本作品は、あらゆることが適度にゆるく、事実に基づきながらも面白おかしく描かれていると言えるだろう。この茶番劇を上手に見せているのは、2人の素晴らしい俳優の演技によるところが大きい。マギー・ギレンホールはちょっとエキセントリックな婦人参政論者として実に光り輝いているし、ルパート・エベレットはこの映画の中でベストな台詞を吐く。グランヴィルが腱鞘炎について愚痴をこぼした時、彼は「わたしが思うに、フランス人は(手ではなく)彼らの舌でもって多くの成功を手に入れたのだな」とぼやくのだ。



『ヒステリア』(Hysteria)

監督: ターニャ・ウェクスラー
キャスト:マギー・ギレンホール、ヒュー・ダンシー、ルパート・エベレット
オフィシャルサイト:http://hysteria.ayapro.ne.jp


2013年4月20日(土)ロードショー。なお、『ヒューマントラストシネマ渋谷』では、映画に登場するようなアンティークバイブと、2013年3月3日に満を持して発売された女性向けセルフケアグッズ「iroha」の展示が行われる。

By カッス・クラーク
翻訳 山田友理子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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