2014年05月08日 (木) 掲載
BABYMETAL(ベビーメタル)の勢いが止まらないー平均年齢15歳の日本のアイドルユニットに、今、世界が大きな関心が寄せていることをご存知だろうか。その人気は名実たるものになりつつあり、今夏、フランス、ドイツ、イギリスを周るヨーロッパツアーが決定。ワンマン公演以外にも、イギリスで開催されるロックフェスティバル『Sonisphere Festival UK』に出演する。メタリカやプロディジーをはじめ、スレイヤー、ドリーム・シアターなどヘビーな面々がラインアップされている同フェスティバル。当初、BABYMETALはセカンドステージでのパフォーマンスが予定されていたが、その反響の大きさを受け、メインステージへの出演に昇格した。ちなみに、15歳の少女達が当日のステージを共にするのは、メタルの帝王・アイアン・メイデンである。
2010年に「アイドルとメタルの融合」をコンセプトに結成されたBABYMETAL。そのスタートは、大手芸能プロダクション、アミューズがプロデュースする成長期限定アイドルグループ、さくら学院の重音部、すなわち一クラブ活動として発足されたユニットであった。メタル的なアプローチが採られた高速・重音の楽曲(COALTAR OF THE DEEPERSのNARASAKIや、THE MAD CAPSUEL MARKETSの上田剛士なども楽曲を提供している)を、アイドル界ではトップクラスと言われる歌唱力を持つSU-METALこと中元すず香が、伸びのあるヴォーカルで少女性溢れる歌詞に乗せて歌い上げる。その脇に降臨した天使のごとく「サイドダンス」を繰り広げているのがMOAMETALとYUIMETAL。現在中学3年生の2人は、菊池最愛と水野由結の名前でさくら学院のメンバーとしても活動している。「(中元と比較して)ただ踊ってるだけじゃん」という意見を度々耳にするが、この2人の存在が、ユニットの持つ絶妙なコントラストを引き上げ、独特で強力なキャラクターを生みだしていることは明確である。事実、彼女達のライブパフォーマンスを目にすれば納得だ。Perfumeも担当する振付師、MIKIKOによる複雑かつアクロバティックな振付けのダンスを、約1時間強ぶっ通しで踊り続ける体力(BABYMETALのライブにはMCがない)、常に笑顔を絶やさない気力は並大抵のものではない。
2011年のインディーズデビュー曲『ド・キ・ド・キ☆モーニング』がYouTubeにアップされるやいなや、日本文化に敏感な外国人達が反応。この時からすでに、ポストされる多くが海外からのコメントであったことも記憶に残る。翌2012年にはサマーソニックを始めとする音楽フェスティバルや海外のアニメ見本市に参加するなど、他のアイドルとは異なる独自のフィールドで活動の幅を広げてきた。2013年、中元すず香の実生活での中学卒業=さくら学院卒業にあたりファンの間ではベビメタ解散説が流れたが、それを一蹴するように活動継続が発表、同年はメタルフェス『LOUD PARK』に出演した。知名度が高まると共にいよいよ熱心な音楽信者達による賛否両論が勃発。2014年2月にYoutubeに投稿された『ギミチョコ!!』のMVのコメント欄にも「Cool!」と「Shit」の両極端な意見が、わずか2ヶ月程度で2万件に近い書き込みがある。同月に発売されたファーストアルバムは、日本人アーティストとして海外では驚異的な売り上げを見せており、全米ビルボード総合チャートで187位を獲得。イギリスのハードロック専門誌『Kerrang!』は、興味深い事にTwitter上でBABYMETAL公式アカウントからコンタクトを試みたようで、その数週間後には「BABYMETAL WHO? WHAT? WHY?」という見出しで、表紙の一部に掲載するなどして紹介。TIMEやThe Guardianなど世界的な有力メディアが、日本のポップアーティストを大々的に取り上げる記事を目にすることは、そう滅多にあることではないだろう。
近年、日本のアーティストではDIR EN GREYなどが欧州のロックフェスの常連であったが、日本の女性アイドルが、先に挙げたようなロックレジェンド達とその名を連ねるという事は全くの異例である。ユニットが持つ、オリジナリティの勝利と言えるだろう。実際、BABYMETALのライブを見る限り、パフォーマンス力に加えて本人達の肝の座ったプロ根性は相当なものと感じ取れる。ブーイングとビール瓶が飛び交う辛辣な海外ロックフェス。日本のアイドルの飛躍にエールを送りたい。
BABYMETAL WORLD TOUR 2014
■7月1日(火)フランス・パリ 会場:La Cigale
■7月3日(木)ドイツ・ケルン 会場:Live Music Hall
■7月5日(土)イギリス・ネブワース 会場:Sonisphere Festival, Appolo Stage
■7月7日(月)イギリス・ロンドン 会場:Electric Ballroom
■9月14日(日)日本・千葉 会場:幕張メッセ イベントホール
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