2014年04月25日 (金) 掲載
今日、この国のポップアイドルを少しでも知る者であれば、大所帯で歌い踊るグループアイドルこそがそれと思うだろう。1970年初頭から台頭した日本の女性アイドル文化は、80年代には松田聖子を筆頭に、後世に名を残す「国民的」と呼ばれる人気を獲得した少女達の存在により一旦ピークを迎えたが、当時、活躍したアイドルは皆、ひとりでパフォーマンスを行うソロのスタイルがほとんどだった。そして、アイドル文化の流れも一巡した2014年春、武藤彩未はこのジャンルでスターダムを駆け上がろうとしている。
17歳にして芸歴10年目。元競馬騎手で、今は調教師で父が働く厩舎で、馬に囲まれながら成長する。「最初は写真を撮られるのが嫌いなくらいで、芸能界に憧れがあったわけではないんです。その時はまだ、小さかったので単純だったんですね。祖母からカタログモデルに応募したから出てみないか、って言われて。でも実際、やってみると楽しくて。その頃は、自分が歌手になるなんて、夢にも思わなかったですね」。
しかしその後、CMやドラマにも出演し、11歳の時から約1年間、最初のアイドルグループ、可憐Girl’sのメンバーとして活動した。その翌年に、女優や歌手、モデルなどを目指す小中学生のメンバーからなる、さくら学院(BABYMETALのSU-METALも在籍していた)に加入。「成長期の中でどれだけのことを吸収できるかがテーマで、メンバーと歌って踊って、毎日頑張っていました。アイドルとして活動していくうちに歌う事がすごく好きになっていって。歌を愛することを学んだのはこの頃です」。
そして、自身の中学卒業と共にグループからも15歳で「卒業」。そこからはソロアイドルとして、たったひとりでステージに立つ日に向け、レッスンを積み重ねる2年の日々を送る「今までは、メンバーと助け合ってひとつのものを完成させていたんですけど、これからは本当にひとり。歌も歌唱力が必要とされるし、踊りや振り付けもひとりでやらなきゃいけないって、一からレッスンに挑みました。正直、本当に大変でした。だからそのハードルを越えて、昨年初めてステージに立ったときは感動。ファンのみなさんが『お帰り!』って声を合わせて言ってくれて、感動しました。緊張はしなかったです。その時も、楽しみの方が大きかったですね」。グループとソロでは、ステージ上でどのような変化があるのだろうか。「やっぱり、観に来てくれている方の視線がすべて、私に向けられるところですかね。今まではグループでやっていて、メンバーそれぞれに目がいっていたかもしれないんですけど、今は私だけを見てくれるので、そういう意味ではハッピーです!」。
音楽、ヴィジュアル、ファッションと、武藤の周りには、角界で活躍する日本のトップクリエイターが、武藤の持つポテンシャルを最大限に引き出すべく集まっている。親ほど年の離れた大人達との仕事に、武藤はどうモチベーションを保つのか。「負けたくないって思うようになりました。ミュージシャンの方だったら、その方のレコーディング風景を見させていただいたりするんですけど、本当に楽器に対する思いが強くて、それに感動して。私だったら、その楽器が自分の声だから、その声を皆さんの楽器に負けないようにどうしたらいいだろうって考えたんです。そこで負けず嫌いの気持ちが出ちゃったみたい(笑)」。
身長149センチ。愛らしい容姿ながらも、しっかりとした受け答え。正に、アイドルを象徴するかのような武藤が描くアイドル像とは、一体どんなものなのだろうか「人々に元気を与えられるような存在、かな。あと、歌って踊って可愛いという以外に、憧れられる存在っていうものを大事に思っています。だからこれから、アイドルとして、本物のアーティストとして憧れられる存在になりたい」。
最後に、仕事以外の趣味について尋ねてみたところ、「ひとりでぷらぷらするのが好きなんですよ。休みがあれば、一人旅とか遠出したい。ひとりで電車に乗って、よく鎌倉とか行きます」。ソロでの活動は、休日にも及ぶようだ。
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