アカデミー賞2011 予測と分析

『英国王のスピーチ』が最多12部門、『ソーシャル・ネットワーク』は8部門にノミネート

アカデミー賞2011 予測と分析

2011年アカデミー賞のノミネート作品発表が、ロサンゼルスで行われた。とろんとした目つきで若干緊張しているようにも見えたモニーク(昨年の主演女優賞受賞)らが、ノミネートを読み上げた。

先に発表されたゴールデングローブ賞のように、予想通りの、とはいえ、注目を集めた作品がひしめくリストとなった。イギリス人の期待の星、『英国王のスピーチ』は“王”にふさわしく、作品賞、コリン・ファースの主演男優賞、脚本賞、助演男優賞、助演女優賞や、おそらく取る事は出来ない監督賞まで含む多くのメインカテゴリーに顔を出した。

『英国王のスピーチ』のライバルとなるのが『ソーシャルネットワーク』だ。ゴールデングローブ賞で大きな賞を数多く受賞する結果となったが、アカデミーでもいくつかのカテゴリーで受賞するだろう。作品賞、監督賞や多くの技術寄りのカテゴリーの他、主演男優賞でもノミネートされたが、これに関しては『英国王のスピーチ』のコリン・ファースに勝つ事は出来ないと思われる。

助演賞で注目が集まるのは、『ザ・ファイター』。アカデミー会員も好きであろう、昔よくあったような復活モノで、エキサイティングな物語だ。助演女優賞のダブルノミネートの他、助演男優賞、監督賞、作品賞にノミネートされた。

ゴールデングローブと歩調を合わせるかのように、我々タイムアウトロンドンチームの個人的な注目作品が、メインカテゴリーにノミネートされた。昨年、じわじわ人気になったインディーズ映画『Winter’s Bone』は、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞でノミネートされた。また、素晴らしい演技だったミッシェル・ウィリアムは、『ブルーバレンタイン』で主演女優賞にノミネートされた。

そして、すこし驚いたのが、我々が注目していた『ブラック・スワン』が、確実だったであろうナタリーポートマンの主演女優賞へのノミネートに加え、作品賞、監督賞にもノミネートされたことだ。ダーレン・アロノフスキー監督の作品が変わっていることを踏まえると、期待以上といえる。コーエン兄弟の作品『トゥルー・グリット』が目立ったのもうれしい限りだ。作品賞、監督賞、撮影賞、脚色賞の他、ジェフ・ブリッジスが主演男優賞のノミネート。助演女優賞にノミネートされた若きヘイリー・ステインフェルドは、主演女優賞へのノミネートでも良かったぐらいだ。

イギリスの映画ファンにとっての最大のニュースは、明らかに、『英国王のスピーチ』の活躍と、クリスチャン・ベイルのノミネートだろう。加えて、『Another Year』で脚本賞にノミネートされたマイケル・レイも賞賛に値する。ドキュメンタリー部門でノミネートされた『Exit Through the Gift Shop』のバンクシーもイギリス人だ。ダニーボイル監督の『127時間』は作品賞、脚色賞、素晴らしく印象的だったジェームズ・フランコも主演男優賞でノミネートされた。

他の国々に目を向けてみても、イギリス同様に注目すべき話題が多い。オスカーは伝統的に、アメリカ中心的だが、カンヌで受賞したスペイン語のメキシコ映画『ビューティフル』が主演男優賞にノミネートされたのが素晴らしい。外国映画賞には強力な作品が多いようだ。『ドッグトゥース』は我々の批評家の中では評判がよかった。『アウトサイド・ザ・ロウ』と『ビューティフル』も読者の間で評判が良かった作品だ。

負け組に入った作品もあった。マニアックな層には支持されたが、まぶしいビジュアルと入り組んだ話が印象的だった『インセプション』は、多くのノミネートを獲得できなかった。間違いなく取ることはないであろう作品賞と、撮影賞などいくつかの技術寄りの賞へのノミネートに留まった。

全体から見て、とても満足のいく内容と言えるだろう。タイムアウトロンドンチーム内では、『ソーシャルネットワーク』が話題の中心になったことには、皆がほぼ同意している。ここ数年の中でも、巧みで、複雑で大人な作品賞ノミネートと言えるだろう。ただチーム内のある批評家だけは、以前に噛み付いた経緯からこの『英国王のスピーチ』にさらにスポットライトがあたるのを心配しているかも知れないが……。

赤★ タイムアウトロンドン編集部が、受賞してほしいと思う作品
青★ おそらく、受賞するであろう作品
緑★ 受賞した作品

作品賞
『ブラック・スワン』
『ザ・ファイター』
『インセプション』
『キッズ・オールライト』
『英国王のスピーチ』
『127時間』
『ソーシャル・ネットワーク』
『トイ・ストーリー3』
『トゥルー・グリット』
『ウィンターズ・ボーン(原題)/ WINTER'S BONE 』

監督賞
ダーレン・アロノフスキー 『ブラック・スワン』
デヴィッド・O・ラッセル 『ザ・ファイター』
トム・フーパー 『英国王のスピーチ』
デヴィッド・フィンチャー 『ソーシャル・ネットワーク』
ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン 『トゥルー・グリット』

脚色賞
『127時間』
『ソーシャル・ネットワーク』
『トイ・ストーリー3』
『トゥルー・グリット』
『ウィンターズ・ボーン(原題) / Winter’s Bone』

脚本賞
『アナザー・イヤー (原題)/ Another Year』
『ザ・ファイター』
『インセプション』
『キッズ・オールライト』
『英国王のスピーチ』

主演男優賞
ハビエル・バルデム 『Biutiful ビューティフル』
ジェフ・ブリッジス 『トゥルー・グリット』
ジェシー・アイゼンバーグ 『ソーシャル・ネットワーク』
コリン・ファース 『英国王のスピーチ』
ジェームズ・フランコ 『127時間』

助演男優賞
クリスチャン・ベイル 『ザ・ファイター』
ジョン・ホークス 『ウィンターズ・ボーン(原題)/ WINTER'S BONE』
ジェレミー・レナー 『ザ・タウン』
マーク・ラファロ 『キッズ・オールライト』
ジェフリー・ラッシュ 『英国王のスピーチ』

主演女優賞
アネット・ベニング 『キッズ・オールライト』
ニコール・キッドマン 『ラビット・ホール(原題) / Rabbit Hole』
ジェニファー・ローレンス 『ウィンターズ・ボーン(原題) / Winter’s Bone』
ナタリー・ポートマン 『ブラック・スワン』
ミシェル・ウィリアムズ 『ブルーバレンタイン』

助演女優賞
エイミー・アダムス 『ザ・ファイター』
ヘレナ・ボナム=カーター 『英国王のスピーチ』
メリッサ・レオ 『ザ・ファイター』
ヘイリー・スタインフェルド 『トゥルー・グリット 』
ジャッキー・ウィーヴァー 『アニマル・キンダム(原題 ) / Animal Kingdom 』

長編アニメ賞
『ヒックとドラゴン』
『イリュージョニスト』
『トイ・ストーリー3』

撮影賞
『ブラック・スワン』
『インセプション』
『英国王のスピーチ』
『ソーシャル・ネットワーク』
『トゥルー・グリット』

衣装デザイン賞
『アリス・イン・ワンダーランド』
『アイ・アム・ラブ(原題) / I AM LOVE』
『英国王のスピーチ』
『テンペスト(原題) / The Tempest』
『トゥルー・グリット』

ドキュメンタリー長編賞
『イグジット・スルー・ザ・ギフト・ショップ(原題) / Exit Through the Gift Shop』
『ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~』
『インサイド・ジョブ(原題) / Inside Job』
『レストレポ ~アフガニスタンで戦う兵士たちの記録~』
『ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡』

ドキュメンタリー短編賞
『キリング・イン・ザ・ネーム(原題) / Killing in the Name』
『ポスター・ガール(原題) / Poster Girl』
『ストレンジャーズ・ノー・モア(原題) / Strangers No More』
『サン・カム・アップ(原題) / Sun Come Up』
『ザ・ウォーリアーズ・オブ・キウガング(原題) / The Warriors of Qiugang』

編集賞
『ブラック・スワン』
『ザ・ファイター』
『英国王のスピーチ』
『127時間』
『ソーシャル・ネットワーク』

外国語映画賞
『Biutiful ビューティフル』メキシコ
『ドッグトゥース(原題) / Dogtooth』ギリシャ
『イン・ア・ベター・ワールド(原題) / In a Better World』デンマーク
『アンサンディ(原題) / Incendies』カナダ
『アウトサイド・ザ・ロウ(原題) / Outside the Law (Hors-la-loi)』アルジェリア

メイクアップ賞
『バーニーズ・バージョン(原題) / Barney's Version』
『ザ・ウェイ・バック(原題) / The Way Back』
『ウルフマン』

作曲賞
『ヒックとドラゴン』
『インセプション』
『英国王のスピーチ』
『127時間』
『ソーシャル・ネットワーク』

歌曲賞
「カミング・ホーム」 『カントリー・ストロング(原題) / Country Strong』
「アイ・シー・ザ・ライト」 『塔の上のラプンツェル』
「イフ・アイ・ライズ」 『127時間』
「ウィー・ビロング・トゥギャザー」 『トイ・ストーリー3』

短編アニメ賞
『デイ&ナイト』Teddy Newton
『ザ・グラファロ(原題) / The Gruffalo』Jakob Schuh and Max Lang
『レッツ・ポリュート(原題) / Let's Pollute』
『ザ・ロスト・シング(原題) / The Lost Thing』
『マダガスカル,カーネット・デ・ボヤージュ(原題) / Madagascar, carnet de voyage』

短編実写賞
『ザ・コンフェッション(原題)/ The Confession』
『ザ・クラッシュ(原題)/ The Crush』
『ゴッド・オブ・ラブ(原題) / God of Love』
『ナ・ウィウィ(原題) / Na Wewe』
『ウィッシュ143(原題) / Wish 143』

音響編集賞
『インセプション』
『トイ・ストーリー3』
『トロン:レガシー』
『トゥルー・グリット』
『アンストッパブル』

音響賞
『インセプション』
『英国王のスピーチ』
『ソルト』
『ソーシャル・ネットワーク』
『トゥルー・グリット』

視覚効果賞
『アリス・イン・ワンダーランド』
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
『ヒア アフター』
『インセプション』
『アイアンマン2』

美術賞
『アリス・イン・ワンダーランド』
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
『インセプション』
『英国王のスピーチ』
『トゥルー・グリット』


原文はこちら

タイムアウトロンドン原文 トム・ハドルストン
※掲載されている情報は公開当時のものです。

この記事へのつぶやき

コメント

Copyright © 2014 Time Out Tokyo