映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』レビュー

現実と幻想のはざまで追い込まれるさまを描いたブラックコメディー

© 2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
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『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』タイムアウトレビュー

「ハリウッドで成功したほとんどの人々が人間としては落伍者である」と言ったのはマーロン・ブランドだった。セレブ俳優たちは、その名声が消えてしまった後はどうなってしまうのだろうか。この映画は、かつてメガヒットを飛ばしたセレブがスターバックスに行き、自らコーヒーを買うことができるまで謙虚になったということを言いたい訳ではない。ニューヨークを舞台に繰り広げられる、滑稽で、不思議なほど愛らしく、それでいて悲しい物語で、マイケル・キートンに向けた重要な問いなのである。脚本と監督を務めたのは、映画『バベル』、『21グラム』を監督したアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥだ。

キートンは90年代初期のアベンジャーズよりもさらに前の時代遅れのスーパーヒーロー映画『バードマン』で大ヒットし、荒稼ぎしたリーガン・トムソンを演じる。(これはキートンのバットマン時代と重なる)リーガンは、人生の第2幕目をシリアスなアーティストとして生きようと、レイモンド・カーヴァーの短編小説をブロードウェイで上演するために奮闘しているのだが、リーガンの心の中にいるバードマンは彼のそんな計画をゴミ扱いし、リアリティ番組を制作するほうがまだマシだと言う。


シリアスなストーリーに聞こえるが、コメディー映画なのだ。そして、イニャリトゥによって切り取られるカメラワークの小回りがよく利いた舞台制作の映画としてもシンプルに面白い。劇中、エドワード・ノートンがエマ・ストーンに、もし彼女の身体の一部を自分のものにすることができるなら、彼女の目を選ぶと言う。そして、その20歳の目でもう一度ニューヨークの景色を見てみたい、と。このシーンはずば抜けて感動を誘う瞬間であった。そして、夢のようなキャスティングのなかで、キートンは最高の演技を披露していた。彼は恐れ知らずで、不安な表情を作るために平気で顔を痙攣させることができるのだ。この映画のサブタイトルは「無知がもたらす予期せぬ奇跡」だが、善き父になろうとするときですらリーガンは自分のエゴを超越することができないでいるという、残忍な真実がこの映画にはあった。


監督イニャリトゥの作品にはいつもダークな側面がつきまとう。(『アモーレス・ペロス』、『バベル』を観てほしい)今回もそのダークな部分はあり、人生は失望の連続なのだということを教えてくれる。この映画はいつまでも印象に残り、どこまでも脱線していき、どこか親密で、不規則に広がる。即興的なジャズのスコアがそれを聞いている人をリズムのなかにどんどん巻込んでいくように続いていくのだ。この映画が終わると同時に、あなたはもう一度観たくなってしまうだろう。


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『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

2015年4月10日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
ドラム・スコア:アントニオ・サンチェス
製作総指揮:ロベルト・マレルバ、ブルース・バーマン
出演:キャスト:マイケル・キートン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズブロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツほか
配給:20世紀フォックス映画
© 2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.

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テキスト カッス・クラーク
翻訳 Mari Hiratsuka
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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