映画『6才のボクが、大人になるまで。』レビュー

同じ俳優陣で12年間に渡って撮影された、奇跡の名作

(c)2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved.
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『6才のボクが、大人になるまで。』タイムアウトレビュー

映画『恋人までの距離(ディスタンス)』から始まるビフォアシリーズで知られるリチャード・リンクレイター監督による作品。 監督は、テキサスに住む家族の何気ない日常ドラマを制作するため、自分の8歳になる娘、ローレライを含む数人の役者たちと、12年に渡り少しずつ撮影することを決めた。その間に、ティーンエイジャーたちは声変わりし、腰周りは豊かになった。そして、だれも予測できなかったことだが、パトリシア・アークエットとイーサン・ホーク演じる夫婦の子メイソンを演じたエラー・コルトレーンは、すっかりカリスマ的な登場人物に成長していったのだ。

物語は、混乱した家族の登場から始まる。オリビア(パトリシア・アークエット)は大学に入り直そうとするシングルマザーで、ヒューストンへの引越しに向け子どもたちを準備させている。そして、クールな父親メイソン(イーサン・ホーク)は、週末に豪華なスポーツカーで現われては子どもたちをボーリング場へ連れて行くのだった。 この2人がまた一緒になればと思うのだが、オリビアが経験するのは新しい夫たちの登場だ。最も印象的なのは、たちの悪いアルコール中毒になってしまう教授(マルコ・ペレッラ)。一方、父親のメイソンは別人になったかの様に落ち着き、テキサスの信心深い家庭のかわいらしくて保守的な女性と結婚することとなる。

幾年もの歳月を3時間近いこの作品の中で、シンプルかつ自然な流れに任せ描かれており、これまでにない親密さと深みを感じることができた。今までのホームドラマの中で最も印象に残る作品と言えるだろう。リンクレイター監督は、過去に18年の年月をかけて『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』の3部作などを手がけてきたが、今作はさらに徹底された叙事詩的な視点をもって作られている。ウィットに富み、心に深く感じるものがある映画だった。この作品はこれからずっと、永く人々の心を打ち続ける名作となるだろう。

原文へ

『6才のボクが、大人になるまで。』PG12

2014年11月14日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか、全国順次公開
原題:BOYHOOD
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
出演:パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレーター、イーサン・ホークほか
配給:東宝東和
(c)2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved.

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テキスト ジョシュア・ロスコフ
翻訳 平塚 真里
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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