2014年08月12日 (火) 掲載
志の高い思想は大変素晴らしいが、それは馬に乗って『UZI』(イスラエル製の短機関銃)を持って戦う、猿に匹敵するものだろうか?
1960年代に生まれたオリジナルのシリーズをオマージュし、野心に溢れた、科学、社会的に非常に大きなテーマを扱った、前作『猿の惑星:創世記』は現代のSFらしいスマートな作品だった。今作では、前作よりインパクトは薄れたが、銃弾や槍、毛むくじゃらの拳が飛び交うシーンでは『猿の惑星』の世界に引き込まれてしまう。
舞台は、ウイルスによって、人類の90パーセントが死滅した2020年代の地球。そこでは、人間の支配は消えかかり、かろううじて生き残った人々はサンフランシスコの廃墟に寄り添いあって暮らしていた。反対に、救世主シーザー(アンディ・サーキス)率いる猿たちは、驚異的な遺伝子の進化を遂げ、人間たちには脅威となっていく。そして、ある事件をきっかけに猿との対決を避けられなくなった時、人間のリーダである、マルコム(ジェイソン・クラーク)とドレイファス(ゲイリー・オールドマン)は議論を交わすが意見はぶつかり合ってしまうのであった。
驚かされたのは特殊効果の技術。シーザーとその仲間たちの猿は、しわのひとつひとつや背面の毛に至るまで質感を感じるほどの出来なのだ。今作の監督マット・リーヴスは以前、映画『クローバーフィールド/HAKAISHA』(J・J・エイブラムスプロデュースのハンディカムで撮影されたドキュメンタリータッチのパニックムービー)を制作し、ストーリー中盤のアクションシーンが素晴らしく、大成功を収めている。
少々残念だったのは、ストーリーの展開が先に読めてしまい、人間のキャラクターたちは深みに欠けていたところだ。また、女性のキャラクターが全く登場しないため、全体的に男臭い印象が残る。しかし、社会の崩壊と動物の衝動を扱ったこの話においては、適切なのかもしれない。
原文へ(Time Out London)
2014年9月19日(金)よりTOHOシネマズ、日劇ほか全国ロードショー 監督:マット・リーヴス 出演:アンディ・サーキス、ジェイソン・クラーク、ゲイリー・オールドマン、ケリー・ラッセルほか 配給:20世紀FOX (C)2014 Twentieth Century Fox
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