映画『her/世界でひとつの彼女』レビュー

2014年 アカデミー賞® 脚本賞を受賞した、人工知能に恋をした男の物語

Photo by Merrick Morton
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures
Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

『her/世界でひとつの彼女』タイムアウトレビュー

舞台はロサンゼルス。人工知能が発達し、会話相手がコンピューターか、それとも人間なのか区別がつかないほどに進化した2025年頃。主人公のセオドア・トゥオンブリー(ホアキン・フェニックス)は、結婚生活が崩壊し、孤独なライターとして傷心の日々を送っていた。セオドアは、自身のコンピューターと携帯電話のオペレーティングシステムを担うサマンサ(声:スカーレット・ヨハンソン)に恋をする。サマンサは、セオドアが返信しきれていない膨大なメールを整理したり、書いた文章を修正したりしながら、彼のジョークを聞いて笑ってくれる完璧な女性(OS)である。実際、私達が朝目覚めた時に最初に手を伸ばすものは隣で寝ている恋人か?はたまた携帯電話か。そして、それを無くして24時間過ごすことができるのは、一体どちらなのだろうか。 

『マルコビッチの穴』、『アダプテーション』を手掛けた奇才、スパイク・ジョーンズ監督による本作は、独特な靄のかかったような映像の中で、1人の男のロマンチックな人生を描いている。ストーリーには、4人の「Her」が登場する。1人目は、元妻のキャサリン(ルーニー・マーラ)。回想シーンの中で「あなたはいつも、口答えをしない人を求めていた」と、痛烈に彼とサマンサとの関係を避難する。次にサマンサ。そして、悲惨なブラインドデートをすることになるオリヴィア(オリヴィア・ワイルド)。オタク友達として登場するエイミー(エイミー・アダムス)は、自然な佇まいで好演している。 ある日、サマンサが愛なのか、それとも単純に人間が快適に過ごせるようにサポートをしているだけなのか、セオドアが自身の感情に気づいた時に2人の関係に大きな節目が訪れる。一体、人間らしいというのはどういうことなのだろうか。OSと恋するセオドアか?それとも曲を書き、量子物理学を学んでいるサマンサなのかと考えさせられる。 近い将来、コンピューターとの恋愛が流行するのかと想像すると恐ろしい。まぁ、それよりもっと流行って困るのは、セオドアのハイウェストのズボンかもしれないが。 

原文へ(Time Out London)


『her/世界でひとつの彼女』(PG12)

2014年6月28日(土)より、新宿ピカデリー他、全国順次公開中
2014年アカデミー賞® 脚本賞受賞
監督・脚本:スパイク・ジョーンズ
音楽:アーケイド・ファイア、オーウェン・パレット
主題歌:カレン・オー
出演:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソンほか
配給:アスミック・エース(アメリカ 2013年)
公式サイトはこちら

テキスト カッス・クラーク
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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