2010年05月14日 (金) 掲載
[前編]を読む
世間の目を嫌うストリート・アーティストのバンクシーが、タイムアウトの前に姿を現した。その知名度の高さや、グラフィティ戦争が起きている今、ロンドンの高騰する不動産について語る。自身の新作映画については最後まで語らなかったが……。
あなたは本物ですか?ザ・ガーディアン・ガイドのような大手新聞社も、偽物のインタビューでだまされていますからね。
バンクシー: いや、自分が偽物だったらどんなによかったかと思うよ。あまり目立つような性格じゃないから、キャラクターを作り上げるのが大変なんだ。例の映画について宣伝したいけど、ラストを台無しにしたくないから映画自体については話したくない。このページ、白紙にして読者が好きな絵でも描けるようにしたらだめかな。
では、少なくともなぜあなたが自身の作品を史上初のストリートアートの“失敗作”と呼ぶのかを教えてもらえませんか?あなたの最後の映画作品ということですか?
バンクシー:これに関わる全ての経験が、あらゆるレベルで失敗だったと思う。これは僕の映画界初進出の作品で、大コケして、次に続かなかった作品として世に広まるだろう。
始まりはアートでしたね。次にアニメ。そして映画……。未来のウォルト・ディズニーになれると思いますか?
バンクシー:そんな風に考えたことは一度もない。グラフィティをしたりして器物破損をする人たちのための巨大テーマパークを作るのはいいかもしれない。ビースティ・ボーイズの『ライセンスト・トゥ・イル』が発売されたとき、ちょうど夏休みのキャンプ合宿にでかけていた。瞬く間に、子供たちは首からVW(フォルクスワーゲン)のバッジをぶら下げるようになったんだよ。街中の車から盗んできたやつだ。ついに警察がキャンプ場になだれ込んできて、町長には子供用プールの脇でかなり説教されたよ。
ついにある新聞に顔写真が掲載されてしまいましたが、街中で気づかれるようになりましたか?
バンクシー:何年か前に、俺こそがバンクシーだと名乗りでたやつがいただろう。ショアディッチのナイトクラブに無料で入るために。噂が広がって、他のグラフィティライターが彼を止めさせたみたいだけど。世の中に出回っている写真についてコメントするつもりはないよ。
では、グラフィティ界のベテランライターであるロボとドラックスとの抗争を説明してもらえますか。
バンクシー:ロボとはバトルしたかったわけじゃない。あんな大男、敵にまわしたくないだろう?90年代後半、彼とドラックスの悪評はすでにブリストルまで届いていたくらいだ。『Robbo』という文字が描かれた作品に、僕が上から描いたというのはでたらめだ。『nrkjfgrekuh』と描かれていた作品の上に描いたんだ。なんにせよ、壁は誰か個人の、特有のライターの“所有物”だという考え方は好きじゃない。
昔からやっているグラフィティライターたちは自分たちのルールを決めてやっている。それについてどうこう言うつもりはないけど、僕は誰かの指図をうけるためにグラフィティアーティストになったんじゃない。もし自分の作品を塗りつぶされて嘆き悲しむようなら、グラフィティは趣味として向いてないと思うね。
あなたはグラフィティコミュニティからグラフィティを商品化した裏切り者だと言われていますよね。それに関してどう弁解しますか?
バンクシー:“商品化”を定義付けるのは難しいよ。マクドナルドのポスターデザインを受注してデザインするより、マクドナルドを批判したポスターを勝手に作る方が、金になるんだから。
自分にはこう言い聞かせている。自分は、反対意見を唱えるためにアートを利用しているんだと。でももしかしたら自分のアートを宣伝するために反対意見を使っているのかもしれない。その裏切り行為のレッテルには、無罪を主張したい。でもどう弁解するにせよ、僕の家は昔よりずっと大きくなっていることは事実だけど。
ギャラリーなどでストリートアートが展示される日は来ると思いますか?
バンクシー:ストリートアートが室内の展示向けだとは思わない。飼いならされた動物は、野生と自由を失って、太っていつも眠たそうにしているだろう?アートは常に屋外にあった方がいいのかもしれないね。だけど、確かに動物が側にいると老人は落ち着くのだろうね。
路上で壁に落書きをしているときのアドレナリンは、お茶を入れながら静かな光のともるスタジオにいたら得ることはできないよ。壁からグラフィティをはがして盗む人々にも考えがあるのかもしれない。少なくとも緊張感はあるから。でも、おかしいことに彼らは僕に、僕の作品である証明書を作成してくれと頼んでくる。それは犯罪供述書にサインするようなものだろう?
国のためにあなたの作品は保存された方がよいと?
バンクシー:どの作品が残って、どの作品が消されてしまうかは予測不可能だ。ニューオリンズで、廃墟化した店舗に作品を描いたことがあった。捨てられた車だとか腐ったマットレスがそこら中に置かれていたような地域だ。たった2時間後、その作品は何者かによって撤去された。後で知ったことだけど、そこは麻薬の密売所で、経営者は注目が集まるのを嫌っていたんだ。
確かなことは、たとえ自分が途中で放り投げたくだらない作品でも、数ヶ月後には白い手袋をはめた誰かがそれをサザビーのオークションでうやうやしく見せているかもしれないってことだ。
あなたの作品の資産価値はどれほどだと思いますか?人々がそれを資産や高級品として取り扱ったりすることについてどう思いますか?
バンクシー:僕の弁護士に言わせると、警察は僕を器物破損の罪で逮捕できなくなるかもしれないってこと だ。論理的には、 僕 のグラフィティが描かれていることで、その不動産の価値は下がるどころか上がることになっているからね。これは彼の意見だけど、彼は風変わりなアニメキャラのネクタイをつけることが格好良いと思っているような弁護士だからどうだろうね。
最後に、タイムアウトロンドンのカヴァー(表紙)用の作品の作成はいかがでしたか?
バンクシー:カヴァーの意味がよくわからない。カヴァーって大抵、見かけ倒しな方が多いだろう……。
タイムアウトロンドン『バンクシー エディション』(ポスター付):
バンクシーが表紙を担当し、インタビューの原文も掲載されたタイムアウトロンドン『バンクシー エディション』は、以下の店舗で入手可能。ロンドンで完売したポスター(サイズ682mmm x 515mm)がついたヴァージョンは限定なので、お早めに。
・TSUTAYA TOKYO ROPPONGI(住所、地図など詳細はこちら)
・リキッドルームオンラインストア liquidroom.shop-pro.jp/?pid=20023678
原文へ(Time Out London / Mar, 2010 掲載)
Copyright © 2014 Time Out Tokyo
コメント