Courtesy: the Artist, Herald St, London and TARO NASU, Tokyo. / 撮影 木奥恵三
2010年04月16日 (金) 掲載
ここ数年、ロンドンのカルチャー・シーンの中でもっとも勢いがあると言われているイーストエンド。このエリアに位置するギャラリー『Herald St』に所属する作家たちによるグループ展が、東京・馬喰町のTARO NASUで行われている。参加作家は、オリバー・ペインとのユニットでヴェネチア・ビエンナーレ(2003年)や横浜トリエンナーレ(2008年)にも参加したニック・レルフをはじめ、ピーター・コフィン、マシュー・ダービーシャー、ケイリー・クォック、ジョージェ・オズボルト、ドナルド・アーカートの6人。
個々の作品で作風やコンセプトはもちろん異なるが、全体的なトーンとして感じられたのが、同じくTARO NASUで展示をしていたイギリス人作家ライアン・ガンダーのような、コンセプチュアル・アートの新しい潮流である。ドナルド・ジャッドのようなミニマル・アートの要素も残しつつ、色鮮やかなデザインセンスの高さも感じさせ、加えてアイロニカルな笑いの風刺を通じて社会・アート史批判を行っている。背景には資本主義史観、宗教観、ゲイカルチャーやアンダーグラウンド・カルチャーなどを巡る議論へのアンチテーゼといった、現代社会への批判精神があるのだろう。だがそうした難解なアジェンダを経つつも、最終的な仕上がりとして軽やかなウィットや配色の鮮やかさを配置させるのは非常に“現代”的であり、ユース・カルチャーならではの躍動感が伝わってくる。
それぞれの作家が意匠を凝らしたオムニバス的な内容なので、ロンドンの“いま”の空気が感じられる展示となっている。会場周辺のギャラリーもあわせて巡りながら、日本人作家と対比してみるのもおもしろいかもしれない。
グループ展『Herald St』
場所:TARO NASU (ヴェニュー詳細はこちら)
期間:2010年5月8日(土)まで
時間:11時00分から19時00まで
休廊:日・月曜日、祝日
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