トルコと日本をつなぐ現代アート

日本、トルコ、ニューヨークで活躍する 流麻二果インタビュー

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トルコと日本をつなぐ現代アート

文京区にあるギャラリー『YUKA Contemporary』で、2010年5月8日から、4人のアーティストによるグループ展『ANGELICA01』が開催中だ。2010年4月に開催された『第3回 art_icle award』で準グランプリを受賞した松川朋奈、トルコ・アンカラ市で行われた『2010年トルコにおける日本年』のオープニング式典に招かれた流麻二果、そして新田友美、マット・ハンセルによるペインティングやドローイングなど、平面作品を中心に展示している。参加アーティストのひとり、流麻二果(ながれまにか)に、現代アート事情について話を聞いた。

『トルコにおける日本年』の式典に参加されたそうですが、どうでしたか?

:トルコにおける日本年で『さくらプロジェクト』という、桜の苗木を年に1000本、3年連続して計3000本をトルコの各地に植樹するという事業を展開しています。苗木を贈るにあたり、私の『縁引』という水引をベースにした作品を展示しました。

『縁引』はどのように生まれた作品ですか?

:私の作品には、『人に対する興味』という一貫したテーマがあります。それは、私の知っている誰か、というよりも、偶然隣に座った誰か、道ですれ違った誰か、というような、私の知らない人たちが、一体何を考えて生活しているのかを想像するものです。子供のころから、人々の生活を想像するのがとても好きでした。

私は基本的に油絵をやっているのですが、日々断片的に見かけたものを、個人的に咀嚼して描いていきます。だから、人に対する興味、といっても特にモデルがいるわけではありません。『縁引』という作品は、人に対する興味を別の方法で示すもので、人とのコミュニケーションを軸にしたプロジェクトです。ダイレクトにコミュニケーションをとりながら作りあげていきます。

水引にはもともと興味があったのですが、今回は特に桜を贈る、という趣旨にも合っているし、色々調べてみました。今は工芸品みたいになっていますが、昔は良家の子女のたしなみというか、各家庭で紙縒り(こより)を作って、紅で色をつけて結んで、というのが日常だったようです。赤は血で、白は母乳を意味していて、命をつないで、人をつないでいく、という意味もあり、知れば知るほど素敵な習慣だなと思いました。

今回のプロジェクトでは、5、6カ所でワークショップを開催し、再生紙を利用して水引を作ってもらいました。結局200人くらいの方に参加してくださり、それをつないで、『縁引(ユカリヒキ)』という作品を作りました。

『縁引』
流麻二果 / Manika Nagare

トルコでもワークショップを開催したのですか?

:しました。赤と白で結びましょうと説明したのですが、参加してくださったトルコの方々は、ものすごいカラフルな水引を作ってくれました(笑)。赤は血で、白は母乳です、と言うと日本人はわりとショッキングな感じで受け止める方が多いですが、トルコの人たちはあまり反応しなかったので、民族的な違いがあるのだと思います。トルコの方にとっては、作品のテーマより、自分のクリエイションの方が大事だったみたいです。気がついたら、レインボーな仕上がりだったので、これからも色んな場所でワークショップをやって、作品を世界地図のように広げていくという長期的な作品にするのか、それとも一旦区切ってまとめるのか、宿題になっています。

流さんは過去にもトルコでアート活動をしていますよね?

:最初に行ったのは、2002年です。1999年にトルコで起きた地震の被災者支援のために開催した、日本語に訳すと『心のパン』という展覧会です。50人のアーティストが参加しましたが、「日本から寄付金が送られたとしても、実際に被災者たちを満たすパンにはつながっていないから、心の栄養になるような美術を贈ろう」という企画でした。今は、コジャエリ大学という大きな学校の図書館に、その時の作品が収蔵されていて、いずれはそこが美術館を作る予定になっています。

それから3年後の2005年にも、トルコで個展を開催しましたね。

そう考えると、私は定点観察のように3、4年に一度トルコに行っているのですが、今年は景気が悪いと言いながらも勢いを感じました。すごくエネルギーが高まっている印象を受けました。私は文化庁の新進芸術家在外研修員としてニューヨークで活動をしていたこともありますが、アメリカ中心の世界のど真ん中を見て、これからその世界がどうなっていくのか、とてもグレーな時期な気がしています。だからこそ、アメリカにあまりコミットしていないトルコという国の勢いの増し方はすごく面白いと思うし、自分がアートを通してトルコとつながっていることは、アメリカとつながっていることとは全然違う意味があると思っています。色んな国の、色んな立場の人とコミュニケーションをとりながら作品を作るのは、私にとってすごいスパイスになるし、もう少しやっていきたいと思っています。

流さんのように海外での活動を経たアーティストは、今の日本に多いのですか?

:今、たくさんのアーティストが日本に帰ってきています。海外に勉強しに行ったキュレーターやディレクターも帰国する人が増えています。景気の悪いということだけが理由ではなく、ちょうど年代的にも海外で勉強してきた人が日本に戻って仕事をするのに良い年齢になっているのだと思います。日本の美術界って今までとてもドメスティックだったのですが、それが一旦外を見て帰ってきて、アーティストはそれなりに面白い人がいるし、じゃあ、今の日本で何ができるのか、という感じで色々やり始めています。皆で協力して、なんとかなんないかなって前を向いている感じは良いなぁと私は思っています。

日本でのアート環境は、海外と比べてどんな違いがありますか?

:日本ではアーティストという存在自体がとても珍しくて、初めて見た、と言われたこともあります。例えばニューヨークでは、友達の中にひとりはアーティストがいる位、そこらへんにごろごろいます。そういう意味で、日常の細々したことから何もかもが自然に楽に過ごせます。ただ、競争率も当然高いので、本当にタフにサバイブしていく姿勢でいないと生き残れません。

今後はどのように活動の場を広げていきたいと思っていますか?

:もっともっと色んな国を見てみたい、色んな所で作品を通じたコミュニケーションをとりたいと常に思っています。私は、自分ひとりの中で物事を完結させられるほど人生経験が豊富ではないし、外との接点を持って吸収したことを自分なりに咀嚼していくというインプットを続けながら、作品を作っていきたいと思います。

『ANGELICA 01』
場所:YUKA Contemporary(詳細はこちら
住所:東京都文京区関口1-30-9
会期:2010年5月22日まで
展覧会情報ページ:yukacontemp.com/pressrelease/pr007.html
アーティスト公式サイト:www.manikanagare.com/

インタビュー 東谷彰子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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