Sebastião Salgado
2009年10月26日 (月) 掲載
フォト・ドキュメンタリーの先駆者としても知られている写真家セバスチャン・サルガド(Sebastião Salgado)の『アフリカ』展が、東京・恵比寿の東京都写真美術館で幕を開けた。セバスチャン・サルガドはブラジルで法律と農業を学び、アメリカでは経済学の修士号を取得。一旦ブラジルの大蔵省に勤務したものの、軍事政権の弾圧を受けフランスに亡命した。その後、パリ大学で農業経済学の博士号を取得し、国際コーヒー機構に就職してから写真を始めたという希代の写真家だ。彼の名を一躍有名にしたのはサハラ砂漠の南、サヘル地域の干ばつと飢餓の写真。彼はそれから30年以上にわたり、写真家としてのキャリアをアフリカに費やしている。
サルガドはなぜアフリカにこだわるのか、その理由の全てがこの展覧会にある。展示されているのはサルガドの代表作である『WORKERS』『EXODUS』の各シリーズと、現在制作中のシリーズ『GENESIS(起源)』からジャスト100点。つまり彼の33年の写真家人生がダイジェストで見られるのだ。自ずと、彼がアフリカにこだわる理由が浮かび上がってくる。 サルガドは経済学者としてルワンダを訪ねた時、人々が茶園で労働し生計を立てられるようにシステムを作りあげた。そのルワンダの茶畑で生き生きと働く人々をとらえた写真が展示されているその同じ空間に、ルワンダ難民の写真があるのだ。フツ族とツチ族間で起こった大量虐殺により住むところを追われた人々の写真だ。食糧の配給を待つ孤児、うなだれるコレラ患者、殺された人々の遺体。紛争や飢餓、砂漠化などアフリカが抱える問題に世界各国がさまざまな救済プロジェクトを実行しているのにもかかわらず、一進一退を続けるアフリカの現状。この展覧会では、そうしたアフリカの今をストレートに感じることができるのだ。もちろん凄惨な写真ばかりではない。展示作品の中には、戦闘から逃れた難民を包み込む木漏れ日、苛酷な状況にあっても笑顔を浮かべる人々、まだ人間の手が加えられていない密林など、未来への希望を感じる写真も少なくない。だからこそ今、私たちがアフリカの現状を知ることには意味がある…そう思わずにはいられない展覧会だ。是非、サルガドがとらえたアフリカを観て何かを感じて欲しい。
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