ワンタッチ・タイムマシーーン!

『GEISAI#6』で話題を呼んだ松井えり菜、2年半ぶりの個展

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ワンタッチ・タイムマシーーン!

ギャラリー『山本現代』で松井えり菜の個展『ワンタッチ・タイムマシーーン!』が開催されている。松井は美術予備校在席時に制作した作品が『GEISAI#6』などで話題を呼び、カルティエ現代美術財団コレクション展など国の内外を問わず活躍する若手美術作家。今回の個展は国内では約2年半ぶりとなるが、新旧の作品を織り交ぜ、松井の世界観を存分に発揮した非常に濃い内容となっている。

圧巻なのは、東京藝術大学大学院の修了制作展で発表されたという襖絵『MEKARA UROKO de MEDETAI!』だ。宇宙空間に浮かぶ星々に、海からあふれ出るかのような魚介類。そして梅佳代の写真のような“変顔”をした彼女自身の自画像のぽっかり開いた口には舌のかわりに太陽、ほかにもウーパールーパーなど数々のキャラクターが作品内にあしらわれている。

他の作品でも見られる、作家個人が、周囲の環境や生物と、世界と、宇宙と、侵食するように交わる様は、スタン・ブラッケージの『DOG STAR MAN』を連想させた。だがミクロとマクロのコスモスを私視点で往還する高速のスピード感がブラッケージの特徴のひとつだったのに対し、松井のポイントは、自身のパフォーマンスも含めた、キャラの存在だろう。つまり、キャラ=他者との関係が謳われ共存を模索する、あるいはキャラ=つかみどころのないアイコンによって作品の世界観に朗らかな笑いが増している。要するに、松井えり菜は閉塞していない。

80年代の歌謡アイドルを模したような彼女の歌声にせよ、カルチャーショックかもしれないが、悪意はない。作品に時折現れる両生類を見て嫌悪感を催さなくなったとき、あなたは遠い他者と共存を果たしたのかもしれない。

松井えり菜『ワンタッチ・タイムマシーーン!』
場所: 山本現代
期間:2010年5月1日(土)まで
開廊時間:火曜から土曜11時00分から19時00分、日曜・月曜・祝日休廊
住所:東京都港区白金3-1-15
電話:03-6383-0626
ウェブ:www.yamamotogendai.org/

テキスト 岡澤浩太郎
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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