インタビュー:増田セバスチャン

カワイイを生み出すクリエイターの初監督作品『くるみ割り人形』

増田セバスチャン
(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN
(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

原宿Kawaiiカルチャーの第一人者であり、アートディレクター、6%DOKIDOKIのプロデューサーなど様々な活躍をする増田セバスチャンが、チャイコフスキー作曲による世界三大バレエのひとつである『くるみ割り人形』の映画監督を務めた。

本作は、サンリオの社長でありファンタジー作家の辻信太郎が1979年に作り出した作品のリクリエイトとなる。制作当時、人形を少しずつ動かしコマ撮りする手法で撮影されたため、1日に3秒しか撮れず、完成までに5年を費やした奇跡の映像作品だ。リクリエイトとなった今作は、脚本の解体作業から始まり、縦横無尽の映像編集が行われた。また、全編を極彩色に彩るため、ワンカットごとに映像の鮮度、色彩の処理も行い、CGを加え、追加撮影も敢行。新たなアニメーションパートも組み込まれたという。この新しい世界観はどう生み出されたのだろうか。

どのような経緯で監督を務めることになったのですか?また、旧作を鑑賞したことはありましたか?
増田セバスチャン(以下、増田):サンリオの社長の辻さんからお願いされたのがきっかけです。当時地元にサンリオ劇場というサンリオの制作した映画を専門で公開している映画館がありまして、そこで1979年版の『くるみ割り人形』を観た記憶が残っています。そして、この作品は僕が多大な影響を受けた寺山修司さんが脚本を手がけているんですよ。

寺山さんが脚本だったんですね。
増田:はい。脚本とストーリの流れ全般は寺山さんが担当されていて、その脚本を最初に読んだ時に言葉の力強さというものがあったので、現代に置き換えるとなった時に、この言葉をもう1度持ち上げないといけないと思いました。

制作するにあたって、どのような過程があったのですか?
増田:まず、原作を読んでみました。そして、寺山さんの脚本、辻さんが作ったストーリーをからめながら脚本をひっくり返してもう1度作り直しました。そこから旧作を観て、編集に入ったんですけど、やはり旧作にリスペクトがあって、その良さをきちんと出したいと思っていたので、編集にはとても時間がかかりました。その後やっとビジュアルを綺麗にしていく作業に入りました。

こだわった点や好きなシーンはありますか?
増田:主人公クララが、ストーリーを追って行くうちに少女からひとりの女性として大人に成長していく過程を見ることができるのですが、僕は原宿で20年以上活動している中で、10代後半から20歳くらいの女の子と接する機会がとても多いので、その中で女の子たちが傷ついたり、悩んだりしながらどんどん成長していくのを見ていて、現代の女の子たちそれぞれに置き換えられるような作品にできるようにこだわりました。また、オープニング部分でばあやがクララに話しかけているんですけど、物語の導入部分ということで、1番好きなシーンでもあります。

テーマや伝えたかったことは何ですか。
増田:今作で、僕が最初にテーマに掲げたのは、過去の先輩たちが作ったものをちゃんと未来に伝えたいということで、「過去から未来への接続」をテーマにしました。それに、1979年というとちょうどキティちゃんも出てすぐくらいの時期です。今となっては、全世界に日本のカワイイが広まっていますけど、そういうものってやっぱり先人たちが作り上げてきた礎の上に乗っかっていることをみんなに知ってもらいたいし、全世界にこういうアニメーションの下敷きがあって、カワイイの文化に繋がっているということを伝えたかったんです。

増田さんにとってカワイイは大きなテーマですが、カワイイとは何なんでしょう?
増田:欧米の文化が凄いとされていたと思うんですけど、ようやく戦後、時間を経て日本オリジナルの文化が育ってきて、このカワイイという日本独自の文化が世の中をピースフルにするものではないかと思っています。


昔のサンリオ映画のアニメーションはカワイイに溢れていますが、リクリエイトしてみたいですか?
増田:正直怖いですけどね。今作の初号試写の時に辻さんと一緒に観たんですけど、観終わった後に、「あと、2本やってほしいのあるんだよね」と言ってくれたのですが、「あと2本!これ結構大変だったのにな」と思いました。だけどそれが最大の褒め言葉だと感じて、とても嬉しかったです。映画はすごく楽しかったので、機会があればぜひやりたいと思います。

様々なプロジェクトを手がけていらっしゃいますが、映画を作るということはどのようなことだったのでしょう?
増田:最初はどのように作るかを迷ったんですけど、改めて旧作を観た時に演劇の舞台に近いんじゃないかと思ったんです。舞台は手がけたことがあったので、映画かもしれないけど、僕は舞台という捉え方をして。声優さんにも、「舞台をつくるつもりでやりましょう」と伝えて、声だけなんですけど、スタジオでは演技指導もして実際、身振り、手振りしているんですね。だから、声がなめらかに入っているんですよ。なので、みんなで舞台を作ったという感覚でした。

エンディングテーマできゃりーぱみゅぱみゅの『おやすみ』がぴったりでした。きゃりーの曲を選ばれたのはなぜでしょう。
増田:最後きゃりーの音楽が流れてきた時にクララが歌っているように感じませんでしたか。その辺はすごく意識しています。あと、きゃりーを選んだというより、僕は、今までずっときゃりーと一緒にいるのでその中で成長する過程とクララが大人になっていくことがリンクするなと思ったので、僕自身彼女の曲の中でも思い入れのあるこの曲を選びました。

カワイイに溢れた『くるみ割り人形』は11月29日(土)から全国ロードショー される。日本のカルチャーを世界に伝えるアーティストの作品から刺激を受けてほしい。



『くるみ割り人形』
11月29日(土)全国ロードショー
監督:増田セバスチャン 3D監督:三田邦彦
声の出演:有村 架純、松坂 桃李、藤井 隆、大野 拓朗、安蘭 けい、吉田 鋼太郎 ほか
テーマ曲:きゃりーぱみゅぱみゅ「おやすみ-extended mix-」
作詞・作曲・編曲: 中田ヤスタカ(CAPSULE) ワーナーミュージック・ジャパン
企画・制作・配給:アスミック・エース
製作:サンリオ
(C)1979,2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO,JAPAN

『くるみ割り人形』公式サイトはこちら

Interview by 平塚 真里
Photo by morookamanabu
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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