レビュー:カウントダウンZERO

核の脅威をありのままに描いたドキュメンタリー

Read this in English
レビュー:カウントダウンZERO

A scene from COUNTDOWN TO ZERO, a Magnolia Pictures release. Photo courtesy of Magnolia Pictures.

監督: ルーシー・ウォーカー タイムアウトの評価:

2006年の映画『不都合な真実』でアル・ゴアが地球温暖化に取り組む姿を描いたように、同じプロデューサー、ローレンス・ベンダーが製作を手掛けただけあって、この映画もヘビー級のハリウッドの「問題作」ドキュメンタリー映画で、比較的安定した製作費と豪華な出演者は、毎年非公式で開催される世界問題を議論するビルダーバーグ会議よりは、パワーがありそうだ。

この映画がテーマにしているのは核兵器であり、核なき世界を目指す構想をオバマ大統領が2009年のプラハ演説で、刻一刻と身に迫ってくるテロリストが核を用いるという恐ろしい脅威の存在に目を覚まさせられたと語り、そしてそれらの兵器に対しての全面禁止を大統領が呼びかける活動のシーンなどが映画の中で取り上げられている。タイトルに付けられた「ゼロ」とは、核の「完全廃止」のことなのか、それとも『人類に残された時間』がゼロに近づいているのか。それは、あなたが楽観主義なのかどうかで捉え方は変わる。

ルーシー・ウォーカー監督は、ブラジル人アーティストのヴィック・ムニッツが自らのルーツへと帰る姿を描いた映画『Waste Land(原題)』(2010年・未)で第83回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされるなど、高く評価されているイギリスの女性監督。ウォーカーは知性あふれる優秀な監督であり、まだ特徴的なスタイルを確立してはいないが、厳しさと安定感のある作品を生み出し続けている。この作品では、核という幅が広く扱いづらいテーマを明快で活気溢れるやり方で描き出してる。 ゴルバチョフやブレア、カーターなど、信念を持っている政治家たちにインタビューを行うだけでなく、『カウントダウンZERO』にはビジュアルも知性的に組み立てられており、ジョン・F・ケネディのスピーチを解体しイメージへと変換し、それをまるで道しるべのように効果的用いる。

映画の最初の方に登場するテロリストの脅威についてのくだりを見ていると不安にかられてしまうが、映画が進むに従って、冷戦時代には世界的な脅威と背中合わせだったというパッセージが登場することで不安は少し落ち着いてくる。そして、映画の終わりにウォーカーは、ジョン・F・ケネディによる「戦闘兵器によって滅ぼされる前に、戦闘兵器を滅ぼさなくてはならない」という有名な演説を正当化して終わるのだ。

カウントダウンZERO 9月1日より全国順次ロードショー



By デイヴ・カルホン
翻訳 西村大助
※掲載されている情報は公開当時のものです。

この記事へのつぶやき

コメント

Copyright © 2014 Time Out Tokyo