インタビュー:BEADY EYE(ビーディ・アイ)

リアム・ギャラガー「弱者なりの美学があるのさ」

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インタビュー:BEADY EYE(ビーディ・アイ)

雑音まじりの電話回線でも、9000キロ離れていようとも、マンチェスターのひどい訛りだったとしても、やはりそこにいたのは、間違いなくリアム・ギャラガーだった。38歳になるBEADY EYE(ビーディ・アイ)のフロントマンである彼は、20年間ずっと、音楽シーンの中で最も本音で話すミュージシャンだと思われてきた。

オアシスという小さなバンドの創始メンバーの1人として、20世紀が21世紀へと変わるときには、その時代のロックを象徴する音楽のひとつとして、様々な場所で名前を刻むようになっていた。

彼らがリリースした7枚のスタジオアルバムは全てイギリスでナンバーワンを記録し(そのうち1995年の『Morning Glory(モーニング・グローリー)』は今でもイギリスで歴代3番目の売り上げを記録している)、ありとあらゆる賞を次々と受賞していった。

もちろん、リアムについての話は音楽だけでは終わらない。ゴシップ好きのタブロイド誌たちはリアムの最新アルバムを絶賛しているが、新聞や怪しいゴシップコラムで書かれているような、彼の悪名高きオフステージでの振る舞いについても知っておく必要がある。彼は、プレスから逃げ回るシャイなやつではなく、むしろSOHOのストリートでパパラッチと喧嘩をするほどだ。著名なサッカー選手ポール・ガスコインの顔に消火器をかけたこともあれば、ライバルバンドのメンバーとストリートで乱闘を繰り広げたこともあり、常に話題には事欠かなかった。 しかし、その中でもとりわけ大きな争いに発展したのは、バンドメンバーや兄のノエルを巻き込んだ争いで、毎週何かしら喧嘩をしていると思われるほど枚挙に暇がなく、そのためにエンタメ記者たちはネタには困らなかったようである。

いまだ様々な意見があるが、彼が生来持ち合わせた血気盛んな性格が、オアシスが解散したひとつの原因であることは間違いないようだ。

パリで2009年8月28日に開催されたロック・オン・セーヌのバックステージで始まった喧嘩が原因で、兄弟関係は決裂、バンドもそのまま終わりを迎えてしまった。ノエルはその夜のツイッターで「ただこれ以上リアムと一緒に、一日だって続けることはないね」とつぶやいている。

ノエルは彼自身のソロアルバム『Noel Gallagher's High Flying Birds(ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ)』の製作に取りかかっていたが、リアムはもっと早く反応し、元オアシスのメンバーであるゲム・アーチャーとアンディ・ベル、元ザ・ライトニング・シーズのドラマー クリス・シャーロックを迎え、新しく『ビーディー・アイ』を結成していた。そして2011年の2月にリリースした、かなりオアシス色の濃い『Different Gear, Still Speeding(ディファレント・ギア、スティル・スピーディング)』は、多くの評論家から上々の評価を得たようだ。

リアムの尊敬するビートルズの言葉ではないが、それは長くて険しい道のりだったようだ(ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード)。ビーディ・アイ初のワールドツアー、最初の都市となったドイツのボーフムに滞在していたリアムは、熱い口調でインタビューに答えてくれた。その言葉は、ロックンロールの永遠の自信家として、スーパースターとして、今まで以上に自信に満ちあふれていた。

リアム・ギャラガー: ああ、俺は自信があるよ。それは“傲慢”ではなく、“自信”なんだ。こうやって取り上げてくれるのはうれしいね。それは自信がどうのこうのというよりも、情熱についてなんだ。俺はジョン・レノンやエルビス・プレスリーと肩を並べるつもりだよ、俺が知っている最高のミュージシャンたちと。分かるだろ?過去の偉大なミュージシャンたちと同じぐらい俺らも情熱に溢れている。燃え上がっていたら、だれも触れることはできないだろ?

日本で発生した東日本大震災の為に、ロンドンで演奏したビートルズのカバーを演奏しましたよね。日本とは特別な繋がりを感じますか?

リアム: ああ、日本を愛しているよ。わかるだろ、日本に行くときはいつも最高だし、間違いなく日本人は最高さ、間違いない。オアシスやビーディ・アイが日本で人気があるからだけじゃなくて、ただ、本当に日本の人たちは最高なんだ、わかるだろ。だから、あの大震災が起こったと知った時には、すぐにでも助けにいく準備はできていたよ。ただ募金でお金を集めるだけではなく、本当に彼らのことを心配しているという姿を見せたかった。だけど、それだけでなく、あの夜の演奏は、僕にとっては“かつてないほど”素晴らしかった。本当に悲しい出来事が起こったとは思うけど、そのライブは本当に凄かった。ただただ凄くて、その場所にいて、そこで起こった出来事を目撃できたのは嬉しかったんだ。それは今までで“最高”の経験だよ。

ツアーに出ることは体力を消耗しそうですが?

ゲム・アーチャー: まさか。爽快だね。

リアム: ビーディー・アイを見て分かることは、リアリズムなんだよ。それは見て分かると思うよ。俺らはステージが終わっても、そのままなのさ。別の人間にはならないし、そのままの俺たちなんだよ。無駄なものを入れたりしないし、そのまんま、ど真ん中のロックンロール。ビッチみたいにステージを走り回ることもないし。俺の言ってる意味は分かるだろ?そこにあるがまま、なのさ。

オアシス時代と比べて、何かステージでのやり方に違いはありますか?

リアム: ヴァイブには違いがあるさ、だけどどこがどう違うなんて指摘するのはやりたくない。そんなことは、やりたいやつが勝手にやればいいのさ。だけど、オアシス時代と同じぐらい、ビーディ・アイにはのめり込んでいる。まあ、大きな違いといえば、弱者のような気持ちでいるのさ、それが好きなんだよ。分かるだろ?オアシスの時はいつもメインアクトだったんだけど、今やそういう感じじゃない。そういう負け犬っぽい感じがクールだね。

つまり、何か実感があって、それを楽しんでいると?

リアム: ああ、ああそうさ。間違いない。間違いなく、それを“愛している”。これからの人生、ずっとそんな感じで暮らせるなら、ラリーと同じぐらい幸せなんだと思う。だろ?だけど、俺たちは先に進まなくちゃいけない。違うかい?新しいアルバムはさらに良くなるだろうし、そうでなくちゃいけないし、そうやって先に進んでいって、メインアクトになっていかないと。それも最高だろうけど、今度はそうなるとそれまで応援してくれたファンは別の所に行っちゃう、わかるだろ?他に行くところはないんだよ。

つまり、成功のために前進するわけではないと?

ゲム: まあ、それに越したことはないけど、つまりさ、オアシスの時には、小さなギグだってやっていたから。いつもスタジアムじゃなきゃダメだ、ってことじゃないよ、わかる?ほとんどのバンドは、どうしてもスタジアムとかアリーナでやりたいって熱望してるけど。俺らは全てを経験したし、それでもまだここにいるし、そうでないことだって出来るんだ。

リアム: それがメインアクトの場合には、もう俺らが誰かなんて関係ない。俺ら自身が話の中心なわけだから。だけど、今まで見てきた沢山のサポートアクトの中には、メインアクトを食っちゃうような奴らもいるわけで、俺らはそういうのをやりたいんだよね。

そして、今年の終わりには新しいアルバムがリリースされているんですか?

リアム: 間違いないね。俺らがこのバンドを結成したのはさ、音楽を作り続けられるからさ。絶対間違いねえ。間違いない。それが、“美しさ”になるのさ。

何か新しく受けた影響などはありますか?

ゲム: 俺らはいつも一緒にその場でアイデアを考えて出すんだ。それをスタジオで演奏したらどうなるか試すんだけど、その辺に転がっているような曲には興味がない。それはレゲエでもないし、ダンスでもない。正真正銘、気持ちを込めて作り上げたロックンロールの最高のアルバムなんだ。また新しいロックの名盤になるはずだよ。

最近のバンドでインスピレーションを感じる人はいますか?

リアム: いや、正直にいってあんまりいないね。マイルズ・ケインは好きだね、彼は若いけど絶対ビッグになるだろう。だけど、ちょっと残酷な言い方かもしれないけど、本当にピンとくるやつはいないんだ。もしいたら、まわりのみんなに言いふらしているはずだしね。そんなことないだろ?

ゲム: 世界を熱中させるようなやつはいないし、個性的なやつもいない。バンドという形になった途端、それぞれの生々しい個性は変わってしまう。分かるだろ?それは本質じゃないんだ。ただ、みんな早すぎるんだよ、先に進むのが。

解散後数年間でまた再結成するバンドもありますよね?

ゲム: まず思うのは、人それぞれ、ってことかな。音楽とは関係ないんだったら、絶妙なタイミングがあれば、そうなるバンドもあると思うよ。まるで窓ガラスを割ってモノを盗むみたいな俊敏さで。

リアム: まあ、そういうのはビジネスと関係しているし、そういうものの為に関わるのは、音楽の持っている魔法を消してしまう。そもそも、解散する必要なんてないわけだろ、再結成を本当にするんなら。俺の知ってるバンドは、全然メンバーなんて仲良くなかったけど、メンバーが一文無しだったりDJだったりで、しょうがなく再結成したりしている。ひどい音楽を昔のひどい名前でやっているような感じさ。お金の為に再結成するなんてことは、あり得ないし、俺のやりたいことをみんな台無しにしちゃうのさ。

ゲム: すげーマキャヴェリアンだよね(目的のためには手段を選ばない)。

では、ノエルについては?彼が作った新しいシングル『The Death of You and Me(ザ・デス・オブ・ユー・アンド・ミー)』は聴きました?

リアム: 聴いたかって?あの曲は俺が歌ってたんだぜ。その録音には入ってないけど、ほとんどは俺。ノエル・ギャラガーは偉大なソングライターだし、彼がきっと良いアルバムを作って、みんながそれを好きになるのは間違いないと思うね。好きじゃない奴らもいると思うけど。それは俺らに対しても同じことさ。だけどさ、どっちかというと、彼が音楽に関わらなくなっちゃうよりは、関わっていてもらった方が良いよね。

兄弟で同じような内容のアルバムをリリースする心配はありませんか?

リアム: なあ、良く聞けよ。ビートルズが明日再結成したとしても、俺は何にも怖くなんてない。それがレッド・ツェッペリンでも。ビーディ・アイがすごい可能性を持っていることは、俺が分かってるんだ。話すと安っぽく聞こえるし馬鹿げてると思うけど、分かるだろ。俺らは、別に本気で誰かに立ち向かうとか思わない限り、そんなアルバムは出さないよ。だから、今はノエル・ギャラガーは好きにさせておくよ。だからさ、俺はこれからはだれとでも真剣に向き合っていきたいね。音楽的にも、肉体的にも、精神的にも…。わかるかい、なんでも。そうさ間違いないんだ。

確かにそれはフェアかもしれません。音楽以外の余談ですが、あなたはファッションデザイナーとしても最近は知られています。先日のマンチェスターで起こった暴動、略奪があなたのブランド『プリティ・グリーン』も狙っていたことについては、どのように思いますか?あなた個人への攻撃だと思いますか?

リアム: それは個人的なものではないよ。だってさ、あのときは誰もが攻撃の対象になっていただろ。大事なことは、誰も傷つかなかったってことで、だから『プリティ・グリーン』は問題ないんだ。ブランドの旗印は倒されはしなかった。略奪されたものも、洋服だけなんだよ、分かるだろ言ってる意味が。あれが毎週起こると確かに困るけど、何もかもがちゃんと元通りさ。

*あの場所が暴徒に教われないように対策をするとか、考えなかったんですか?

リアム: え?例えば野球のバットを持って構えてれば良かったのかい?そんなことは賢いとは思えないだろ?奴らはとにかくささやかな攻撃を加えて逃げていくだけだからさ!


ビーディ・アイ 来日ライブツアー ZEPP東京(青海)
9月5日(月)9月11日(日)9月12日(月)

By デヴィッド・クラック
翻訳 西村大助
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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