2011年08月25日 (木) 掲載
フラワー・トラベリン・バンドや、裸のラリーズなど、“日本人長髪野郎”達による脳波破壊的バンドは後を絶たない。そんな中でも“From UK”という看板を掲げているのは、BO NINGENぐらいだろう。ロンドンで出会ったメンバー4人が、バンドを結成したのが2007年。以降、ロンドンのライブシーンでは馴染みの顔になり、ライブハウスでのギグはもちろんの事、パーティや美術館等での生演奏までこなすようになった。そういうと、洒落たミーハーバンドであるかのように聞こえるかもしれないが、全くそんな事はない。BO NINGENのライブは破滅的サウンドと、鋭利なセンスあふれる野獣的ステージアクション(ベース/ボーカルのTaigenがプロレス好きであることが影響しているのだろうか)の融合である。
ツアー(サイケ音楽の大御所の灰野敬二もラインナップにフィーチャー)及びStyle Band Tokyoの4周年ライブの為に来日していたBO NINGEN。ツアー初日のライブ直前に、メンバーのTaigen(Ba./Vo.)、Yuki (G.)、Kohhei(G.)、Mo-Chan (Dr.)に突撃取材を試みた。
-- 4人の出会いについて聞かせて下さい。
Taigen: 4人が出会ったのはロンドンです。Koheiとは、ロンドンでやってた日本の音楽ナイトみたいなイベントで会いました。当時それぞれ違うバンドをやってて、共通の友達から紹介されたんです。話してみたら、音楽の趣味が結構、似てるなと感じました。
-- 当時はどんな音楽を聴いていたんですか?
Taigen: ノイズですね。実験的なヤツとか、コンテンポラリー音楽みたいなの。
-- ロンドンの日本人コミュニティはどんな感じですか?皆が皆を知っているという感じの小さな社会ですか?
Taigen: ええ、しかも音楽をやってたら特にそうです。俺とKoheiとYukiは芸大を出たんですけど、クリエイティブ関係の人達はたいがい繋がってますね。
-- バンドを結成して、いつぐらいから“注目を浴び始めたな”と感じるようになりましたか?
Taigen: Vice誌のパーティーがきっかけだったような気がします。イーストロンドンにあるThe Old Blue Lastという所であったラウンジパーティでやらせてもらったんですけど、そこで初めてイーストロンドン系の人達の前で演奏しました。若くてオシャレな感じの…(笑)。
Yuki: パーティ常連のファッショニスタみたいな人達。それ以前は全く無名でした。ライブも人がいないパブとか普通のパブとか、色々な所でしてましたけど、ちゃんとした音楽ヴェニューでしたことはなかったし。
-- イギリスのバンドにとって、そういう下積み時代は普通ですよね。東京でバンド始める場合は初期費用がたくさんかかって大変そうですが。
Taigen: そうですね、だから俺達にとってそれは良かったです。無名だったけど、色々な所でライブをすることが出来ました。チケットノルマとかそういうのも無かったし。
-- 私は来日する前から海外でAcid Mothers Templeとか灰野敬二とかボアダムスとかの事は聞いて知ってたんですが、日本よりもUKやヨーロッパの方が、そういった音楽の需要はあると思いますか?
Taigen: 断然そうですね。私はフィンランドで初めて灰野敬二と(ベテランノイズアーティストの)Merzbowを聴いたんですけど、イギリスや日本国外の方が、そういう異色な音楽に触れる機会が多いですね。そういう音楽って日本ではアンダーグラウンドってわけでもないけど、そこまで有名というわけではない。面白いです。
-- BO NINGENが人気になったのも、そういう音楽的風土があるからだと思いますか?
Taigen: そう思います。
-- BO NINGENのライブを初めて見た時、すごいスペクタクルなステージだったのでびっくりしました。印象的なライブをするよう、心がけているんですか?
Taigen: 自然体であることを心がけています。昨日と同じアクションを今日やったら、その時点でもうフェイクですよね。だから事前に「ロックアウトしてやるぜ!」みたいな心意気は持たないです。ステージで何するかは、あまり決めてないかな。
-- ステージ前の儀式みたいな事はしますか?
Taigen: たまにアホみたいな事はします。円陣を組んだり、汚い言葉を叫んだり。儀式って感じじゃなく、たまにですけど。
-- バンドを始めた時、他のバンドを観て「ヤベェ、俺達もステップアップしなきゃな」と思った事はありますか?
Taigen: 2007年か2008年に初めて日本でライブした時、日本のバンドのテクニックのレベル高さに結構驚きました。俺達もうちょっと練習しなきゃいけないなと。文化の違いもあるんですけどね。日本でライブする時、日本のミュージシャンは「最低でもこのレベルで演奏しなきゃいけないな」と考えてしまうんです。でもロンドンではただ、今の自分が持っている物を見せるって感じ。それはパブでも他のヴェニューでもね。それはすごく良いことだと思います。他人の前で演奏するって良い経験だし、練習になるから。
-- どうやって曲作りをされているかお聞きしていいですか?ヘヴィーなサイケバンドって、スタジオで集まってジャムしながら曲を作ってるイメージがあるんですけど、BO NINGENの曲には複雑な物も多いから、きちんと座って細かく曲を書いてるんじゃないかと思っているんですが。
Taigen: 普通はおっしゃるように、ジャムセッションから始めます。座りこんで曲の構造なんかについて話し合う事はないです。そんな事して譜面に曲を書いちゃったら、頭でしか演奏ができなくなるんです。だけどスタジオだとまず演ってみれるじゃないですか。何が良いか話し合ってると、時間だけが無駄に過ぎていく。色んなパターンを演ってみて、どれが一番良いかを決めたほうが良い。
Yuki: Taigenはいつもレコーダーを持ってきて、リハを録音するんです。それで家に帰って、「このパート良いじゃん」「こっちも良い」「よし、これとこれをくっつけよう」みたいな感じ。
-- ジャム中にすごく良い音が出来て、その後もう一度やってみようとして出来なかった事はありますか?
Yuki: それいつもあります。「俺あの音どうやって出したんだろう!?」って。ペダルとか、セッティングの違いで…。
-- Style Band Tokyoコンピレーションアルバムに入ってる他のバンドとの共通点を感じてますか?
Yuki: 私が思うにBO NINGENは奇特な生物みたいなものなんです。あまり注意深くコンピレーションを聴いてはないけれども、他のバンドと比べてBO NINGENは際立っている。良い意味でも悪い意味でも。BO NINGENはただ異質なんです。
-- Tokyo Flashback(日本のサイケロックのコンピレーションシリーズ)の新盤にフィーチャーされたとしても、BO NINGENは際立つと思いますか?
(一同爆笑)
Yuki: 多分際立つと思います。Tokyo Flashbackともちょっと系統が違うかもしれないです。最初にあなたが言ったように、私たちは日本人だけど、UKのバンドですから。
Taigen: 音楽性の観点から言ってもBO NINGENは違うと思います。我々はひとつのジャンルにカテゴリー別けされたくないんです。「君たちはポストパンク?サイケデリック?メタル?」って色々訊かれるけど、答えるのが難しい。一方、コンピレーションの他バンドを聴くと、このバンドはポストパンクだな、このバンドはインディー色強いな…。
Yuki: このバンドはニューウェーブだな…。
Taigen: とか、分かりやすいんです。
-- もうロンドンに住まれて長いですが、ロンドンで日本人にお勧めなスポットを教えてください。
Taigen: 音楽ヴェニューでのお薦めが2軒あります。一つ目はダルストンにあるCafe Oto。日本人の即興アーティストとか、ローカルの実験インプロヴィゼーションアーティストとかをたくさん聴けます。英国人の男性と日本人女性でやってらっしゃるんですけど、雰囲気が最高です。観客も最高。
もう1軒はCorsia Studiosっていうヴェニューです。マネージャーがイベントをオーガナイズするんですけど、アメリカとかヨーロッパとか色々な所からサイケバンドを呼ぶんです。音が凄く良い。
Cafe OtoやCorsia Studioで何をやってるか知らなくて行ったとしても、楽しい時間を過ごせる事は間違いないですよ。
-- 最後に。プロレスファンと聞きましたが、本当ですか?
Taigen: ええ。2月に帰国した時、5、6年ぶりにプロレスを生で観ました。観れて良かった。プロレスってヤラセだっていうけど、レスラー達が感じる痛みは本物なんですよ。デスマッチみたいな試合を観たんですけど、レスラーはものすごく流血してても、試合後必ず観客相手にマイクパフォーマンスをしてくれるんですね。彼らの…なんて言ったらいいんだろう…情熱やプライドは感動的です。それと比べてミュージシャン達って怠惰になってると思いますね。特にイギリスでは。皆100%出そうと思っていない。そいういう意味ではプロレスの方が好きですね。
-- Taigenさんはクレイジーですね。
Kohhei: …うん。
Yuki: 私たちの中で一番クレイジーですよ。
Taigen: 自分の音楽性もプロレスから来てるんですよ。中学の時音楽にはあまり興味は無かったけど、プロレスは観てて、そこでレスラーの入場曲を聴いたんです。Black SabbathとかMetallicaとか、色々なジャンルの曲が使われてて。私がテクノやメタルやハードコアなど、色々な音楽を聴くのが好きなのは、ここから来てるのかもしれない。俺の音楽的インフルエンスはプロレスなのかもしれません。
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