インタビュー:エイミー・ワインハウス

3枚目のアルバムは2011年まで出ないようだが、それでも私たちは魅了されている

インタビュー:エイミー・ワインハウス

※急死したエイミー・ワインハウスの功績を偲び、哀悼の意を表します。
このインタビューは、2010年11月24日にタイムアウトバーレーンに掲載されたものです。


エイミー・ワインハウスからとても秘密な場所へ招待を受けた時、どう理解していいのか分からなかった。最終的に、この“機会”はただのシークレットギグとは訳が違うことが分かった。マネージメントサイドでさえ、実際にどうなるか把握していなかった。イベントが「新作リリースに向けたウォーミングアップ」と表現されているにもかかわらず、レーベル側では、2011年まで何もないということになっている。そもそも、彼女が、ちゃんと現れて、ライブをするかどうかも怪しかったが、直感的に“インタビューするチャンスになる”と感じた。

ロンドンのファリンドンにあるシティー・バーレスクの階段を、小さなメインスペースに向かって降りていくと、歌声が聞こえてきた。期待していたのよりもいかつい、男の声だ。なんだか分からないまま、サウンドチェックをしていたエイミーの父親であるミッチに会った。話を聞くと、彼はこの日のイベントで、トップバッターとしてステージに立つようだ。近くにいたスタッフに、エイミーは本当にライブをするのかと尋ねてみた。すると、彼が返答をする間もなく、スペースの反対側から「そのジャケット素敵だわ。可愛らしいわね!」と、聞き覚えのある女性の喋り声が聞こえてきた。

エイミーはそこにいた。彼女は少しレトロな格好をしていて、髪型は、“ワインハウス型”といえる、いつものものだった。写真などでみるほど、メイクは濃くなかった。そして彼女は、ずっと落ち着いているようにみえた。この時点でも、まだ彼女がライブをするかどうか不安はあったが、彼女が現れたのは事実だった。彼女はすぐに会話の口火を切って、名前を聞いてきた。こちらもただ礼儀のつもりで、彼女の名前を聞いたのだが、すると、不機嫌を装って「オー、ゴッド…。みんな、聞くのよ。私の名前は、エイミーよ」と、答えた。

彼女は私と手をつないで、一緒に歩いてくれた。そこには正真正銘のぬくもりがあり、“プレス嫌いでお騒がせ者”という彼女のイメージはなかった。新しい人に会う上で、彼女は上品で気さく、そしてよく気がつく資質がある。例えば、会ってから、数分で相手のニックネームを考えられるポップスターがどれだけいるだろうか?「Tows(トゥーズ)って呼んでいい?だって、名前の中に、2つも“Two”があるんだもん」と、いった感じである。


昔から学校のやんちゃな女子達がしているように、タバコを吸いに、非常口から外へと出た。コンクリートの階段に、エイミーと並んで座ると、彼女は10代の頃よく聴いていたというジャズへの思いを話してくれた。彼女は、自身の祖母と繰り広げた“友好的な戦い”について「私とおばあちゃん、いつもトニー・ベネットとフランク・シナトラについて言い争いになっていたの」と語り始めた。「私は、ベネットが好きなのよ。彼はベストだわ。でも、おばあちゃんは、シナトラ派なの。おばあちゃんが居るキッチンに座って、私が“大変、今夜、トニー・ベネットのライブがあったのをみのがした”なんてを騒ぐと、おばあちゃんは、肩をすくめて“だからどうしたの?ただのトニーよ”と返されたの」。

この頃までにエイミーは数杯のお酒を飲んでいた。目に見えて酔っているというわけではなかったが、彼女はライブで歌う予定だったので、いくらか心配だった。そしてライブがスタートし、彼女の父親がまずラットパックのスタンダードカバーでステージをあたためた。見れないほどの出来ではなかった。そしてエイミーが、ステージを奪うべく登場した。こういった演出はありがちだが、まさに“奪う”ようだった。彼女は父親からマイクを奪い取り、父と娘は少しだけ一緒に歌ったが、そのあとは彼女だけのステージとなった。“打ちのめされるほど”良くはなかったが、ドラムの角に腰掛けて優しく歌う姿は、彼女がなポップスターになった所以を思い起こさせる。

有名なトラブルと、激しいライブ動画がYouTubeで流行って以降、彼女の自信は進化し、アウトプットされるものは、間違いなく向上しただろう。不思議な体験だが、これが、ショービズを賑わすエイミー・ワインハウスというより、“シンガー”のエイミー・ワインハウスを見た瞬間だった。最後の曲は、『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』をエイミー流に唄ったもので、筆者に捧げてくれたものだったので、多少バイアスが掛かったかもしれない。

彼女がステージを終えたとき、私たちは、長きに渡り期待されている彼女の3枚目のアルバムについて話した。エイミーは、制作がうまくいっており自信がある様子だった。「また曲を書いているの。量より質で勝負するわ。今度もジャズの影響が強いものになると思う。多分、最高でも10曲か、12曲ね。この前なんて、4曲つくったのに、全部気に入らなかったから、結局ボツにしたわ」と語った。

最後に、エイミーはこちらに歩み寄って、ハグをして、会場をあとにした。エイミー・ワインハウスの新作はいつリリースされるのか分からない。ただひとつはっきりしているのは、彼女は、万全だということだ。


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テキスト エディー・ローレンス
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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