インタビュー:レディー・ガガ

どれだけのNo.1ヒット曲を世に送り出しても、翌朝にはものすごく惨めな気持ちで目覚めることもある

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インタビュー:レディー・ガガ

Photo by Mariano Vivanco

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「他のアーティストと比べようとする人には興味がないわ」。レコーディングスタジオでタイムアウトのインタビューに答えながら彼女は言った。「自分の音楽をつくりたいだけ」。セサミ・ストリートのキャラクターであるカーミット人形に身を包んだり、ガスマスクや、ジャイロスコープ、巨大なランプシェードや巨大な卵、生肉だけで作られたドレスといった、奇抜なファッションで公共の場に姿を表してきた人物からは意外な発言だ。過去3年にわたり、これらの衣装は、見るのを避ける方が難しいぐらい目立っていた。なぜなら、ガガと同じような売り上げがある他のアーティストたちが到達しえなかった、“ポップ界における視線の先”を彼女が独占していたからだ。

ガガはインターネット時代におけるポップ界でおきた現象の先駆けとなった。彼女のツイッターのフォロワー数は1000万人を超えたが、同時に問題も増加した。歴史上の超セレブポップスターで、彼女ほど観客と簡単につながれた人はそういない。そして観客にとって、野次や横やりをいれやすい超セレブなスターもそういない。2月にリリースされたシングル『ボーン・ディス・ウエイ』はマドンナの真似だとバッシングされ、その後リリースされた『ジューダス』は、不可思議なことに、レディー・ガガすぎると避難された。

「インターネット文化の特徴よ」と彼女は言い放った。「誰もが、他人の失敗を望んでいる。みんな私を引き下ろしてボロボロにしたいのよ。でも、彼らは後で振り返って、私がどれだけ勇敢だったかに気づくと思う。それは良いことよ。“自分自身であり続けることを歌っていたのに、僕らは彼女を磔付けにした。でも彼女はそれらをはね付けて、チャートで6週連続1位を保持し、皆に対してファックオフ(あっちて行って)!って言い放ったんだ”ってね」。

ファックオフと彼女が言い放ったのは『ボーン・ディス・ウェイ』の時ではない。新アルバムのリリースが迫っていた5月のはじめ、『ジューダス』は売り上げチャートから転がり落ちていた。アルバムのアートワークは笑いものになり、小規模ではあったものの、ゆるやかな反感の波が広がりつつあった。そんな中で『エッジ・オブ・グローリー』がひっそりとiTunesに登場した。いつものような仰々しいファンファーレや話題になるPVの公開もなく、ガガのレコード会社はラジオでの公開すらしなかったのだ。

だが、曲は瞬く間に世界中のiTunesでナンバーワンヒットになった。いくらファッションが奇抜で注目を集めても、デビューシングル『ジャスト・ダンス』がヒットしたり、続いてリリースされた『バッド・ロマンス』が聴いて楽しい曲だったように、音楽的な成功がなければ、彼女にとって意味がないことを証明している。今、目の前に座って、iPodをいじりながらアルバム曲を爆音で流しているガガが上機嫌なのも、きっとそのことを知っているからだろう。素晴らしいアルバムをつくった手応えが彼女にはあるのだ。

「ちょっと頭がおかしいと思われるかもしれないけど、このアルバムの売り上げはきっとクレイジーなことになると思うの」と『ガバメント・フッカー』をかけながら彼女は言った。この曲はボーカルが中心だが、これでもかというくらい重いテクノの曲で、“政府に騙され続けてさえいれば”幸せな日常を送れる有権者と、プラスチックのようなポップスターを歌った曲だ。次に彼女は『ヘアー』をかけた。ブルース・スプリングスティーンがユーロビジョンに出たようなサウンドで、この曲のPVは、ガガが今まで着用したありとあらゆるウィッグが画面上を飛び交うものにしたいのだという。「一種類のサンドイッチしか売らないサンドイッチ屋じゃなくて、わたしの店には他にもたくさん商品があるの」と、ガガは続けた。

作曲中に、自分についての新発見はありましたか?
「いじめられた経験は、人生にずっと残るということ。どれだけのファンが自分の名前を叫んでくれても、ナンバーワンのヒット曲を世に送り出しても、翌朝にはものすごく惨めな気持ちで目覚めることもあるということ」

成功を手に入れたことで、いじめっ子たちを見返してやれたと思いませんか?
「私にとっての成功は…。ミュージシャン、俳優や画家など、なんでもそうだけど偉大な表現者になるためには、公共の場でもプライベートを保つことができるようにならないといけないの。それが私たちのやっていることなの」

なるほど…。
「つまり、もっとちゃんと説明すると…(やや間をおいて、説明したくないそぶりをしながら)毎回、曲を書くたびに、自分の傷を開く意思がなければ、私が自分の内面をさらけ出すことができなければ、アーティストと呼ばれるのにはふさわしくないということよ」

学校での一番のいじめっ子はどんな人でしたか?
「(目を不安定に泳がせながら)彼女の顔が…頭に…浮かぶんだけど…(視線を戻して)いじめっ子はたくさんいたわ。自分の傷を開いて、塩、ヒ素、毒を注ぎ込んで、針で何度も突き刺して、もう一度縫い直すの。素晴らしいビートが降りてきたら、そのビートを鋏にして、私は縫ったばかりの傷をもう一度切り開いて、その記憶に戻っていくの。戻ったら、自分に今まで何度も繰り返してきた質問を自分にまた問い直すの。“なぜ私はここにいるの?”って」

答えはみつかりましたか?
「その答えは、私がここにいなければいけないから。アーティストになるのは私の存在意義だとわかっているけれど、自分の傷に何度も立ち戻らなければならない。いじめられたこと、自尊心をずたずたにされたこと、子供時代に起きた全てのことは、大人になってからの私のキャリアでも起こっている。誰も“私が彼らと同じだ”と言うことはできない。私がそれを認めない。私が彼らと同じになることは絶対にない」

彼らとは誰のことですか?
「自分たちの事をクールだと思っていて、他人をけなすような駄目な人たちよ。そうでしょう?私は彼らと同じになりたくない。でも(いじめが)私に残した影響はとても深くて、音楽をつくるために、その経験に何度も何度も何度も立ち戻らなければならないの」

ツアーメンバーはとても結束力が高そうですね。自分の周りに、駄目な人たちを固めないために何かされていますか?
「高校でのいじめを経験していない人にとって、私達を理解することは少し難しいかもしれない。私たち、団結しているし。だからといって差別するつもりもないわ。学校でも、クールキッズが、全員受け入れられないというわけではないから。さらに争いの種をつくるのではなくて、学校でいじめられている人や、オタクに胸を張ってもらいたいの。これ以上、彼らがクールキッズのことを嫌うことは望んでいない。お互いのすき間を埋めて、みんなが仲良くなって欲しい。それがポップミュージックを通じて送り出す、私の音楽の全てよ」

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By ピーター・ロビンソン
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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