2011年に観るべき映画15

タイムアウトのエディターがどうしても観たい2011年公開予定の映画をピックアップ

Read this in English
デュー・デート~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~
ザ・ランナウェイズ
Red/レッド
ツーリスト
英国王のスピーチ
ブラックスワン

2011年は、どのような映画が公開されるのだろうか。世界のタイムアウトに掲載されたレビューから、タイムアウトの選ぶ注目の新作15作品をピックアップした。

ブラックスワン

日本公開:2011年5月13日(金)


2008年に公開された『ザ・レスラー』で高い評価を得た監督、ダレン・アロンフスキーが、今度はバレエダンサーの心の闇を描いた作品で帰ってきた。控えめに言ってとしても、主演のナタリー・ポートマンの演技が本作品でオスカーにノミネートされないなんてことがあれば、私たちは驚かざるを得ないだろう。

『ブラックスワン』クロスレビューはこちら


デュー・デート~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~

日本公開:2011年1月21日(金)


映画『大災難P.T.A.』(PLANES, TRAINS & AUTOMOBILES)のリメイク作品を手掛けたトッド・フィリップスの『ハングオーバー!』に対する評論家の意見は賛否両論だったが、最新作『デュー・デート~出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断~』の評価は上々だ。ロバート・ダウニーJr. の演技には思わずほくそ笑んでしまうし、共演のザック・ガリフィアナキスも存在感ある演技を披露している。


グリーン・ホーネット

日本公開:2010年1月22日(土)


セス・ローゲン(やせ過ぎたので、映画の中で彼に気がつかないかもしれない)、ジェイ・チョウ、そしてクリストフ・ワルツが、ミシェル・ゴンドリー監督と手を組み、『グリーン・ホーネット』を完成させた。ファンであれば既に知っているかもしれないが、劇場版に先立つ元のテレビシリーズには、ブルース・リーが出演しており、彼の出世作ともなった作品でもある。ローゲンの破天荒な演技スタイルはあまり拝めない作品となった。


Red/レッド

日本公開:2010年1月29日(土)


ジョン・マルコビッチ、ヘレン・ミレン、そしてメアリー・ルイーズ・パーカーなど、初老に差し掛かった大物スターが豪華共演を果たしている。彼らが今まで出演し、大きなヒットを飛ばしてきた作品と比べれば、決して敵う仕上がりとなり得ているわけではない。ただ、アメリカ全土を揺るがす巨大な陰謀に、現役復帰した4人の“RED”が決死の戦いを挑む姿からは、目が離せなくなるだろう。

『Red/レッド』クロスレビューはこちら


英国王のスピーチ

日本公開:2010年2月26日(土)


ジョージ6世を演じるコリン・ファースは、正に俳優キャリアの絶頂期に達していると言っても過言ではない。本作品のテーマはよくある見え透いたおきまりのものではないかもしれないが、ファースと共演のジェフリー・ラッシュの演技の掛けあいがあまりにも素晴らしい。その2人の素晴らしさゆえに、製作にゴーサインが出たのだろう。


ツーリスト

日本公開:2011年3月5日(土)


少し落ち着いて考えてみよう。もちろん、タイムアウトロンドンでは星ひとつ、タイムアウトNYでは星ふたつと、酷評されたことは知っているが、“あの”ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーが共演する映画が面白くないわけがない、むしろ素晴らしくないはずがないと思うのだが、果たして……どうだろうか。


ザ・ランナウェイズ

日本公開:2011年3月12日(土)


1970年代、ティーンにグラムロックブームを巻き起こした、映画と同名のガールズバンドの物語。
内容を簡単に説明すると、2人の少女がとあるバーで知り合い、瞬く間に悪趣味なキャンピングカーに詰め込まれ、目の回るような毎日を送ることになる。そしてその後、否応なしにドラッグ、ソフトコアなレズビアンセックス、日本での予期せぬ成功などが彼女達を待ち構える。それはバスルームでのドラッグ遊びよりも間抜けな笑いを誘うし、レコードコレクターに限っては当時のロックが貶められてしまったとさえ感じるだろう。本作品のプロットは、このガールズバンド自身がそうであるように作為的に描かれている。


マイティ・ソー(Thor)

日本公開:7月1日(金)


ここまで紹介してきたこのリストの中に、日本の作品が全く登場していないことに気が付いた方がいるかもしれない。しかし、今夏公開される“あの”作品に興味がないとは、決して言いきれない。次なる『タイタンの戦い』的な作品を待ちわびているからではなく、ハリウッドへと進出した浅野忠信に興味があるからだ。私たちが知る限り、彼はあまりハズレ役がない。もちろん、今回、浅野が演じるHogunは重要な役だ。それに、ナタリーポートマン、アンソニー・ホプキンズ、そしてトム・ヒドルストンとの共演が大役と言えない理由がない。私たちは、今回のHogunの役に浅野が選ばれたことを非常に喜んでいる。渡辺謙の例があるように、今後映画界は、広い視野をもって、日本の素晴らしい俳優陣を発掘していくべきだ。


嵐が丘

日本公開:未定
今年はブロント姉妹にとって最高の年となることだろう。映画『ジェーン・エア/Jane Eyre』で監督をつとめたキャリー・フクナガは、映画『フィッシュ・タンク』の監督もつとめたアンドレア・アーノルドの最新作であり、競合作品になるであろうA級クラシック作品を目の当たりにする。嵐が丘を知らないそんな貴方のために説明すると、まず舞台は風吹き荒れるムーアの地。そして孤児の(新人役者のジェームズ・ホウソンが演じる)ヒースクリフが、(同じく無名のカヤ・スコデラーリオ演じる)キャサリン・アーンシャウとの強烈で気難しい恋をする、そんな2人の関係を描いた物語である。アーノルド監督作品に馴染みある者にとって、彼の創り上げる作品はただのBBC的なお堅い物で終わらないとの予測はつくはずだ。自然主義ドラマを、そして映像からたっぷりの重い天気と空気を感じながら作品を楽しんでもらいたい。


The Skin that I Live In

日本公開:未定
別にこれは誤植ではない。スペインのペドロ・アルモドバルによる本タイトルの最新作は不可解なリズムを刻んでいる。アルモドバルほどの人物がそのような失敗を犯すなど信じられない読者も多いだろう。主演のアントニオ・バンデラス(1990年の映画『Tie Me Up! Tie Me Down!』以来の共演)は、彼の城でもある地下の手術室で働く残忍な形成外科医を演じる。そこでは、彼の恋人であるエヴァ(エレナ・アナヤ)が、人体実験の実験台となっている。文章にしてみると、ジョージ・フランジュの1960年の人体ホラー作品、『Eyes Without a Face』が思い起こされるが、アルモドバル監督がインタビューで言及するに、本作品はホラーではなく、テラー(テロ、恐怖)ジャンルに属しており、“怖さ”ではなく“心をかき乱す”内容になっているという。本作品の公開はスペインでは3月を予定、そして(このまま順調に事が進めば)5月のカンヌで鑑賞できるだろう。


The Tree of Life

日本公開:未定
もし、2011年公開の映画の中で、ひとつ頭が抜きん出る作品があるとしたら、それは確実にテレンス・マリックの『The Tree of Life』だ。現存する最高の監督賞(The greatest living film director)にも6年前に選ばれ、カンヌ国際映画祭への出品を土壇場でキャンセルしたことによって、当時の作品『The New World』には様々な噂と風説がついて回ったのも記憶に新しい。しかし、今回は予告編に、キャストのリストまで公開されている。そこにはブラット・ピット、ショーン・ペンの名前があるが、その他は聞いたことのない役者ばかり。噂では、ヨーロッパでの公開は5月とされている。

若さと無垢の喪失、老化と後悔の物語である本作は、1950年代のアメリカ中西部を舞台にしている。間違いなく、マリック監督の原点である1973年の『Badlands』を意識しているとも感じ取れる。予告編では夢のようなナレーターの声音で(正に私たちがマリックに予想していた通り)、少々重くも感じられるが、映像は素晴らしい。パフォーマンスの重厚感もうかがい知れる。まだ、彼は私たちを落胆させてはいない。


W.E

日本公開:未定
マドンナも映画製作に進出した。世界中の批評家に酷評されたコメディ作品『Filth and Wisdom』では災難にあったわけだが、まるでそれに続くことになるかもしれない作品を前に、我々は恐怖を覚えている。『W.E』は、エドワード7世とウォリス・シンプソンとの同世代カップルの恋愛模様を描いている。内容は確かに興味を抱けるものであるし、映画『英国王のスピーチ』が事前に公開されていることもあって、予備知識を得て当時の社会的環境を理解するのにそれほど難しさを感じないかもしれない。しかしひとつ疑問なのは、マッジ(マドンナのあだ名)はしっかりと監督職を全うできるのだろうかということと、主演のアンドレア・ライズブローは『Brighton Rock』のリメイク作品への出演に集中しているのではないだろうか、ということ。撮影は2010年7月5日に始まっているが、未だいつプレミア上映されるのか、噂さえも聞こえてこない状態だ。


The Rum Diary

日本公開:未定
ここにまたひとつ楽しみな映画作品がある。脚本・監督にブルース・ロビンソン(Withnail and I)、そして主演は世界が認めるスター、ジョニー・デップがつとめ、ハンター・S・トンプソンとの親交を元にしたベストセラー小説を原作に映画化する。デップはポール・ケンプという原作者自身を投影した人物、ラム酒を煽りながらカリビアン・ニュース(地元新聞)の記者としての日々を演じる。デップに初めて話が持ちかけられたのは2000年のことで(当初の映画化計画は失敗、トンプソンに「waterhead fuckaround」と酷評された。……それがどういう意味かは定かではないが)、 実際に今の映画化計画に着手したのは1992年の『ジェニファー 8』を製作して以来、長期の休み (ブランク) をとっていたロビンソン監督が突如脚本を書き始めてからで、今ではこの映画作品を描いていく中でこれ以上適したのトリオ (作者、デップ、監督) は想像できない。もしケンプがウィズネイルよりほんの少しでも賢く、ラウル男爵の激情、そしてジャック・スパロウの身のこなしが備わっていれば、敵う者などいないだろう。


Tintin and the Secret of the Unicorn

日本公開:未定
あと3年も待てば、最新のスティーブン・スピルバーグ作品を楽しめる、それも2作品いっぺんに。正に一石二鳥な感覚を私たちに与えてくれる、彼の本領発揮ともいえる(『シンドラーのリスト』と『ジュラシックパーク』のように、ひとつはシリアスな内容で、もう一方はコメディ)。スピルバーグは久しぶりに子供映画を手掛ける。それが『Titin and the Secret Unicorn』で、多少暗めだがどちらかというとこちらの作品の方がオスカーを狙いやすい内容といえるのが『War Horse』だ。話題になっていた通り、TitinはCGアニメのHerge’s pre-war ティーン冒険シリーズでも有名で、スピルバーグの右腕ともいえるオーストラリア人のピーター・ジャクソンとの初のコラボレーション作品でもある。もちろん、本作においてそのCG技術やスタイルを活かす機会はないに等しいが、この大物キャストたち(脚本:エドガー・ライト、ジョー・コーニッシュ、そして声優のアンディー・サーキス、ダニエル・クレイグ、ジェミー・ベル、そしてサイモン・ペグ)の共演に胸が躍らずにいられない。


War Horse

日本公開:未定
映画『War Horse』は、『Tintin and the Secret of the Unicorn 』とは対照的に、陰鬱な雰囲気をまとっている。マイケル・モーパーゴのベストセラー小説を原作にした本作は、ある少年が1915年に、軍馬として売られていった愛馬を探し求めフランドル塹壕へ向かうという物語だ。デイビット・シューリス、エミリー・ワトソン、ピーター・ミュラン、そしてトム・ヒロルトンなど、豪華英国人役者を向かえた本作は、1980年代の評価を総なめにしたスピルバーグにとって、いとも簡単に賞を取る作品となっているのかもしれない。しかし、本作品の内容は限りなく『太陽の帝国』に類似しているもので、かのクラシック映画の半分でも面白ければ、満足できるだろう。

テキスト タイムアウト東京編集部
翻訳 大関直子
※掲載されている情報は公開当時のものです。

この記事へのつぶやき

コメント

Copyright © 2014 Time Out Tokyo