リトル・バーリーが語る

「プレイ中に2人がシリアスになりすぎている時は、笑わせてやろうと思うんだ」

リトル・バーリーが語る

最新作『キング・オブ・ザ・ウェーヴス』で、久しぶりに骨にしみるロックンロールを鳴らしてくれたリトル・バーリーが、日本先行発売日にあわせて来日。完売ライブと特別企画のインストアライブを行い、長い間待っていた日本のファンを喜ばせた。UNIT公演の前日、別の取材を受けていたルイス・ワートン(B)を除く、バーリー・カドガン(Vo、G)と新メンバーのヴァージル・ハウ(Dr)に会うことができた。インタビューの最中に気になったのは、これまで名立たるミュージシャンをギターで支えてきたバーリーが、新ドラマーのヴァージルにリードされる場面があったこと。大柄でいい笑顔をもった、このヴァージルという男。実はイギリスのプログレッシブ・ロックバンド、イエスのギタリストであるスティーヴ・ハウの息子なのだが、まったく気取ったところがない。それどころか、かつてのルイスがそうであったように、“リトル・バーリーが好きだから、一緒にやることにした”という純粋なバンド愛を強烈に放っていた。セカンドアルバムから、約4年。彼らは、どんな時間を過ごしてきたのだろうか。


昨日のインストアライブでは、新譜からの曲をたくさんプレイしたみたいですね。オーディエンスの反応はどうでしたか?

バーリー:すごくクールだった。前にライブをやった時に会ったファンの顔を見られたのがうれしかったな。

ヴァージル:全員と握手をしたんだ。1人1人とだよ。

バーリー:そうなんだ。時間がかかるから、サインはできなくて。だから、みんなと握手をしたんだけど、あまりにすごいスピードで来ては去っていくからさ、まだ時差ボケしてるのかと思ったよ。

ヴァージル:(握手をする仕草をして)ドモー、ドモー、ドモー。

バーリー:そうそう。でもクールだった。6曲だけの短いセットでしかできなかったけど。

ヴァージル:楽しい場所でプレイするのはいいものだね。取材なんかで音楽についてずっと話してきたんだけど、音楽はプレイする方がずっと楽しい。

セカンドアルバムの後、活動が見えない時間が4年程ありましたけど、いったい何をしていたんですか?

ヴァージル:たくさんギグをしていたんだ。大きなギグじゃないよ。ギグで新曲をテストして、レコーディングの準備をしていたんだ。新曲ができたら、レコーディングをする前にライブでプレイする。そのおかげで、このアルバムには本当に自信をもってるんだ。だって、ライブをして、準備万全の状態でレコーディングに入ったんだからね。いいやり方だと思うよ。

バーリー:うん、本当にそう。ヴァージルがノースロンドンにあるスタジオにコネを持っていたから、そこでたくさんのデモを作ったんだ。ヴァージルは、エンジニアとプロデューサーとしての経験や知識があったから、すごくちゃんとしたものにしてくれたんだ。アルバムに入っている『Twisted Little Blades(ツイステッド・リトル・ブレイズ)』(ボーナストラック)はヴァージルの家でミックスしたんだよね。

ヴァージル:そう。俺のフラットでね。音楽で食べていこうと思っているんだから、ずっと曲を書いて、レコードディングしていたよ。本当にあっと言う間だった。

バーリー:時間がかかった他の理由としては、(デビューアルバムのプロデューサー)エドウィン・コリンズと一緒に、彼のスタジオでレコーディングをしたいというのがあったんだ。彼のスタジオは本当にいつも混んでてさ、空くのを待つのは辛かった。だけど、その甲斐はあったよ。俺たちが欲しかったサウンドを得られたからね。

新しくバンドに入ったヴァージルがかなり貢献した、ということですね?

バーリー:うん。いろいろな意味でね。最初に一緒にギグをした時に、すぐにぴったりきた感じがあったんだ。リハーサルですらね。それからはパフォーマーとしてもっと自信を持てるようになったし、バンドとしての焦点がピタっと定まった感じがあった。ヴァージルのエンジニアとしての経験も、バンドの安定感につながったんだ。

ヴァージル:楽しんでやってるよ。

バーリー:そうそう!

ヴァージル:最初から楽しかったけど、もっと楽しくなった。ドラムをプレイするのは好きだから、自分のエネルギーをリトル・バーリーにつぎ込みたいと思ってる。アグレッシブな感じにではないよ。笑うのが好きだし、少しジョークを言うのも好きなんだ。真面目にやってる時はそんなに言わないよ。だけど、たまにプレイ中に2人がシリアスになりすぎている時には、笑わせてやろうと思うんだ。バンドに新しい要素を運ぶのはいいことだと思ってる。新入りがいることもね。俺たちは、みんなリラックスしてやってるよ。

バーリー:本当に楽しいね。ハードに仕事をしているけど、バンドにいるのが楽しい。

ヴァージル:バンドとしての基盤が整理されて固まったことで、プロとして機能できるようになったんだ。そうすると、もっとリラックスして、もっと笑えるようになる。ロックバンドっていうと、騒いでばかりの悪夢の中にいる人たちみたいに思うかもしれないけど、実際はいかに演奏をしっかりできるかなんだ。そして楽しむこと、プロとしてね。それと、一緒に過ごして、一緒に楽しむことで、バンドとして自信がもてるようになったね。もしステージで何かが起こっても、笑ってカバーすることができる。何かハプニングが、例えばドラムスティックを落としたりしても、「あー、信じられない!」って感じに笑い合って、フォローし合ってるよ。楽しむっていいことだよ。

バーリー:レーベルからすごくプレッシャーがあったり、アルバム制作をコントロールされたりして、何で音楽を始めたのか忘れてしまうバンドも多いと思うよ。音楽が楽しいから始めたはずなのにさ。今回、俺たちはレーベルから指図されることもなく、本当に好きなようにできたんだ。このアルバムがいい理由はそれ。すごくいい気分だよ。本当に大切なことだからね。

昨日のライブを見られなかったのが本当に残念です。

バーリー:明日(UNIT公演)は来るの?

はい、もちろん。

ヴァージル:だったら大丈夫。今度はもっと長い、ビッグショーになるから。

ありがとうございます。では、バーリーに聞きます。これまでにたくさんの優れたミュージシャンとプレイしてきましたけど、もう自分のバンドの方がいいですか?

バーリー:自分のバンドより、プライマル・スクリームとやってる時間の方が長い時もあったからね。プラマイル・スクリームのみんなもすごく好きだし、一緒にプレイするのも楽しいし、クールなことだっていうのもわかってる。だけど、今は自分の音楽を作ることと、このバンドが本当に大事なんだ。

そうなんですね。久しぶりにアーティスト写真でリトル・バーリーを観た時も、今回の写真はやたらといいなと思っていました。

バーリー:この写真の背景にはストーリーがあるんだよ。

どんな話ですか?


バーリー:この写真を撮る前日、エドウィン・コリンズのラジオセッションに参加するために、ロンドンから250マイルくらいの所にあるエックスマウスという街に行ったんだ。ラジオが終わって、撮影のために俺だけロンドンに帰らなくちゃならなかったんだけど、ホテルのバーで飲み始めちゃって……。気がついたら朝の4時で、バーを出て寝て、5時に起きて、2本電車を乗り継いで、ロンドンに帰って来た。で、撮影に行ったものだから、俺、ひどい見た目をしてるんだ。

ヴァージル:雨も降ってたな。

バーリー:雨で寒くて、俺はひどい顔をしてる。本当にひどい。ほとんどの写真が使えなかったんだ。

ヴァージル:そんなことないよ。

バーリー:2人はクールに写ってるけど、俺だけ80歳のおじいちゃんみたいだ。

クールに写ってますよ。今夜には写真展に行こうと思っています。お気に入りの写真はありますか?

バーリー:わからない……。だって、たくさん撮ったし。

ヴァージル:自分の写真で悪いんだけど、窓越しの写真で、隙間に見える自分が笑ってるやつが好きだな。ははは。

バーリー:うん。たくさんいい写真があるよ。俺は、リーが日本で初めての個展を開けたことがすごくうれしい。そんな風に、バンドの中のすべてがまとまってきているんだ。リーに知り合ってからは5年くらいが経ったし、他にもリハーサルにはヴァージルがやってる他のバンドのギタリストのスタジオを使っているんだけど、そうすることで彼をサポートすることにもつながってる。ツアーマネージャーにしても、レコードをリリースしてくれる会社にしても、友達のクリスもそうだよ。僕たちのFacebookやウェブサイトを管理してくれてるんだけど、彼がポール・スミスと仕事しているおかげで、ポールともつながることができた。バンドの中で家族みたいなコミュニティを感じられるのが、本当にうれしいんだ。


『King of The Waves(キング・オブ・ザ・ウェーヴス)』
LITTLE BARRIE(リトル・バーリー)
発売日:2010年12月8日
価格:2490円
レーベル:HOSTESS
レーベルオフィシャルサイト:hostess.co.jp/littlebarrie/

テキスト / 撮影 道辻麻依
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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