フジロック2010 インタビュー3

青空のフィールド・オブ・ヘブンに美しいハーモニー、キセルが語る

フジロック2010 インタビュー3

フジロックには、良質な海外アーティストがたくさん出演しているが、素晴らしい日本人アーティストもグッドミュージックを奏でている。そこで3組の日本人ユニット、キセル、ナボワ、ライトに注目し、インタビューを行った。まずはフジロックに5回出演している辻村兄弟のユニットによるキセルの登場。汗がにじむライブの直後、フジロックについて、そしてライブについて聞いた。

今日のライブの率直な感想を教えてください。

豪文:40分だったので、あっという間でしたね。2001年に初めてフジロックに出演したときが、今回と同じフィールド・オブ・ヘブンで、同じ時間帯。そのときのことを色々思い出しました。お客さんの数もそのときに比べたら5倍くらいに増えた気がします。

友晴:5倍は言い過ぎ(笑)。でも3倍くらいはいましたね。

この10年で、キセルの知名度がグンと上がったんですね。普段のライブハウスなどと比べると、お客さんの反応やノリはどうでしたか?

友晴:イントロから騒いでくれたりして、すごく良かったです。たとえ曲を知らなくても、フジロックの雰囲気がそうさせてくれるんでしょうね。

豪文:僕たちのことを知らない人たちや、曲は知ってるけど普段のライブには来たことがない人たちもいると思いますが、とにかくみんな開放的ですよね。

確かにフェスだと、キセルのことを知らなくて、たまたま観たという人もいますよね。そういう人たちに向ける意識はありますか?

友晴:通りすがりの人たちの足を止めたいという気持ちはありますね。曲順を決めるときも、他のステージに行かないで最後まで見ていってほしいと思って、考えています。

豪文:昼間だから、お客さんの表情まで全部見えますからね。ちょっと奥で、「どんなもんやろ」って冷静に見ている人たちがノリだすとうれしいですね。

今回のセットリストは、ニューアルバムの『凪』からは3曲でした。凪ツアーで全国を回ってきて、熟成された頃だと思うんですが、『凪』からの曲が少なかった理由はあるんですか?

豪文:その熟成された感じも出しつつ、夏やし、野外やし、フェスやしと思って、自分たち的によくやっている曲も入れました。めっちゃ楽しかったです。でも、いつも終わってからもっと楽しめれば良かったなあと思うんです。

40分だと、時間が足りない?

豪文:時間っていうより性格です(笑)。キセルの場合、40分だと7曲くらいやります。通常のライブだと、途中で弾き語りというか、音を抜いたような静かな曲をやることが多いんですが、そういう全体のメリハリについて、今回は結構考えました。

フジロックも今回で5回目の出演ですが、思い入れはありますか?

豪文:今年はあそこに出られた、ここに出られたという、いろいろな場所に出られる楽しさがありますね。ただ、ぼくたちは最初にフィールド・オブ・ヘブンに出たあと、アバロン、苗場食堂とちょっとずつ小さくなって(笑)。一昨年はオレンジコートやったんですが、今年振り出しに戻った、と。

友晴:いままで出てきたステージは、どこも面白かった。そのステージ自体を好きな人もいるし、それぞれの場所ならではの面白さがありますよね。苗場食堂が良かった、といってくれる人が結構多いんですよ。

豪文:苗場食堂は、後ろが飲み屋だから、飲んで騒いで。あそこは楽しいですね。“楽しんでやろう感”がすごくある。

ところで、レーベルを移ってから特にライブ活動が増えましたよね?

豪文:昔はたまにしかライブをやっていなくて、むしろ苦手な部分もあったんですが、レーべルをカクバリズムに移す少し前からだんだん増えていって。いろいろな場所でやりましたよ、成人式とか(笑)。ふたりやから、機動力もあるし。

そういったここ数年で、キセルにとってのライブ感は変わりましたか?

豪文:もともとキセルはお客さんがガーッて盛り上がるタイプの音楽じゃないけど、数をこなす中で、キセルなりの盛り上がりというか、いい雰囲気が作れてきてる気がします。角張くん(レーベル担当)含め、みんなでちょっとずつ積み重ねてってる感じがうまくいってるんだと思います。あとはうまく言えないけど、「自分のいいたい感じが伝わっているな」という瞬間がたまにあって、そのときはすごく楽しいですね。

友晴:レコーディングはレコーディングで、音楽って面白いなって思うんです。でも、ライブはライブで、レコーディングとはまた違った音楽のすごさを感じてしまいます。ライブは一本一本はずせない。それを意識するかしないかで、全然違ってくると思います。

7月に発売されたアルバム『凪』では、ライブを意識して作った曲などはあるんですか?

友晴:僕はバンドやライブを意識したところはありますね。

豪文:僕はそれほど直接的には考えていないですが、ライブでやっている風景を思い描きながら、歌詞を書いたりします。特に弟の作曲だったりすると、弟がステージに立って歌っている姿を想像しておいたほうが、あとで「アレ、違ったな」と思うことがない。今回も演奏した“ひみつ”は、弟の作曲ですが、フジロックに出演が決まっていたので、フジロックで歌っている姿なんかも想像して書いてました。

曲調や歌詞がライブ向けになるというわけではなく、ライブを想定すると、いろいろ浮かんでくるということですね。最後に、最近行った面白かった場所を教えてください。

友晴:三鷹に住んでいるので、ジブリ美術館にはよく行きますね。あと井の頭公園の空気が好き。

豪文:僕は、広島に行って時間がある時は、よく平和記念公園に行きますね。平和やなぁって。なんかわかんないすけど、行ってしまう。

公園好き兄弟ってことでよろしいですね(笑)。ありがとうございました。

『凪』
2010年6月2日発売
2800円(税込み)
amazon.co.jpで購入

Nagi

テキスト 大草朋宏
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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