世界が認めるグリーンな音楽フェス

タイムアウトロンドンが紹介した世界に誇れるフジロックフェスティバルの魅力

世界が認めるグリーンな音楽フェス

宇宙大使☆スター

その昔、ヒッピーたちが自然の恵みを祝うために始めた野外音楽フェスティバル。だが、そのフェスティバルが自然のエコシステムそのものを危急の危機にさらすことになるとは、彼らでさえ予測していなかっただろう。イギリスではフェスティバルの施工や基礎構造工事、さらにはバックステージに設置されたミニ冷蔵庫に至るまで、できる限り省エネに押さえようと努力している。だが、最も自然にネガティブなインパクトを与えるのは参加者の出すゴミだ。例えば大規模野外ロック・フェスティバルのグラストンベリー・フェスティバルでは清掃員500人を動員し、1600トンにもなるゴミを回収している。

日本の有名なフジロックフェスティバルは、“シロクマにも優しい未来”を先導している。基本的には、国内外から様々な、そして優れたアーティストを集めることを長年続けているのが、このフェスの大きな魅力である。加えて、新潟県の山間の中腹に位置する、エキゾチックで素晴らしいロケーションも人気の理由のひとつだ。苗場スキーリゾートの山々を覆う、まるで映画『スター・ウォーズエピソード6』に登場するエンドアのような森の切れ目には、いくつかのステージが連なっている。美しい自然の中、大物バンドの演奏を堪能できる素晴らしいフェスだ。昨年のヘッドライナーは、オアシス、リリー・アレン、フランツ・フェルディナンドといったそうそうたるメンバーだったが、森の奥の奥にある小さいステージで行われたフアナ・モリーナの魅力的なライブなど、様々な、そして充実したラインアップが用意されていた。フジロックが世界一“グリーン”なフェスと言われる理由には、このように会場自体が森の中にあるということもあるが、素晴らしい環境を破壊しないよう努力している、フェス主催者のアクティブな活動も挙げられる。

会場に入ると、リストバンドと共にリサイクルバッグが手渡される。リサイクル担当スタッフは観客たちに環境に配慮するよう声をかけ、場内を見回っている。それぞれのステージの間は距離があるため、木々の周りにちょっとした高さの歩道が意図的に設置されている。こうすることで土の上を直接を歩く必要がなくなるので、“20万もの足”がどたばたと歩き回っても土砂崩れが起きないよう配慮されているのだ。さらに特筆すべきことは、歩道にはこの森で人工植林された木を使用しているということだろう。フェスでのお祭り騒ぎが終わった後、これらの木材は現地で堆肥化される。

フジロックの“観客のコントロール方法”がイギリスでも使えるかどうかには、別の問題もある。フジロックではマナーやルールを守れないのなら、チケットを買わなくていい、としている。フェスのルールは、飲酒目的、商業目的、はたまた環境に配慮しない人の参加をきつく禁じている。これは近年、増加傾向にある“西洋化”(または悪化)する観客へのマナー対応として作られたという。そして、これが効いているのだ。フジロックは、退屈にならずに、礼儀正しく、安全なフェスティバルとして成功している。

しかし、いかにフジロックが環境に優しいからといって、海外から日本まで飛行機で移動することは『地球の友』のような環境保護団体が難色を示すかもしれない。だが、あなたが乗っているいないに関わらず、その飛行機は日本へ飛んでいる。化石燃料が、ちゃんとした目的のために燃やされていると思えば、少しは気が楽になるのではないだろうか?

原文 Time Out London Festivals Guide 2010 P.8に掲載

テキスト エディー・ローレンス
翻訳 佐藤環
※掲載されている情報は公開当時のものです。

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